A-14 新問

A フェージング伝送路で生じる伝送誤りの原因となるのは

①振幅変動 C/N比の低下によって生じる伝送誤りで、複数の伝播パスから良好なものを選択、あるいは合成する「ダイバーシティ(diversity)」が有効である。

②ランダムFM雑音 位相変動による伝送誤りで早い周期の早いフェージングにある。短時間のバースト通信ではBCH符号のようなブロック符号で対応できるが、長時間に渡って通信する携帯電話などではブロック符号より訂正効果の高い畳み込み符号やターボ符号が使われる。

③波形ひずみ 広帯域通信の場合に見られる周波数選択制フェージングによる伝送誤りで、等化器の導入やMIMOを採用することなどで対策する。

 

CQ出版 「RFワールド No.9」 p.44より転載

http://www.rf-world.jp/bn/RFW09/samples/p044-045.pdf

 

上図は伝播状態を4つの状態に分けて伝送誤りの発生原因を分類したものである。[A]の穴埋めにはフェージングの周期が短く早い変動の場合に影響が大きい「ランダムFM雑音」 が入ることが分かる。振幅変動はすべての状態に共通であり、波形ひずみは広帯域通信において影響が大きい。

 

B 複数の相関の低い受信波が得られた後、これらの受信波を合成する基本的な方法として選択合成法、等利得合成法、最大比合成法がある。

選択合成法は、複数の受信波のうち最大の信号対雑音比(SNR: Signal to Noise Ratio)を有する受信波を選択する方法である。しかしながら、すべての受信波を用いて合成すればSNRをより改善することができる。等利得合成法と最大比合成法はこの種の合成を行う。等利得合成法はすべての受信波の位相が同位相になるよう位相調整して合成する。このように合成すれば、受信波は互いに打ち消し合うことなくSNRを選択合成法よりも増加させることができる。最大比合成法は、すべての受信波の位相が同位相になるよう位相調整した後に合成波のSNR が最大となるように、各受信波にその包絡線を乗算して合成する。このとき合成波のSNRは各受信波のSNRの和となることが知られている。このように、最大比合成法はSNRを最大にする合成法であり,等利得合成法よりも SNR を改善できる。3種の合成法の中で信号処理が一番複雑となるが、近年の LSI 技術の進歩によりハードウェアでの実現が容易となっている。

 

C CDMA(code division multiple access)では元のベースバンド信号を抽出するため受信信号と拡散符号の相関を求めるが、このとき遅延時間の異なる複数の経路(パス)を経由した信号波はパスの遅延時間に対応した複数のピークを持った相関出力となる。

このピーク値を同一の位相になるように位相調整し重み付け加算する(最大比合成に相当する)ことで熊手(英語でRake)で集めるように信号処理を行うことで一定の受信レベルを確保し通信品質の向上を図っている(Rake受信)。このマルチパスによる遅延波の位相を揃えて合成する技術をパスダイバーシティという。

 

【筆者注】B・Cの解説は「電子情報通信学会「知識ベース」4群-1編-6章」より引用・転載しました

https://www.ieice-hbkb.org/files/04/04gun_01hen_06.pdf