所属している全国社外取締役ネットワークに寄稿した文章を3回にわたってご紹介してきました。今回が最後です。ご関心があれば(1)から読んでいただきたいと思います。


上場企業のガバナンス強化の視点から、上場企業に独立した社外取締役の任命が議論されています。


この点について私なりの意見をまとめたものを記載します。今回は自然資本と人的資本に関する論点と、社外取締役に必要な資質について議論します。


③自然資本について


★企業が支払う対価は何か?

環境保全やCO2問題で議論されていること、つまり使った自然資本はもとに戻すこと、現状維持することが、利用したことの対価と考えることができると思っております。


★社外取締役以外のモニタリング制度はあるか?


この分野では環境問題規制やCO2削減目標などで今後モニタリング制度が強化されていくといえます。従って、この分野は社外取締役の役割はある程度あるものの、相対的に見れば役割としての重要性はさほど大きくないと考えることができます。


④人的資本について


★企業が支払う対価は何か?

給与や労働環境などの直接的なことと、社会全体の人材育成や子育て支援などの国民全体に関わることの二つを考察する必要があります。給与はモニタリングすることは容易であり、労働環境は労働法制でもモニタリングされているといえます。


問題は、社会全体の人材育成や子育て支援などの国民全体に関わることであります。これは対価は、人材育成や間接的な家族支援などが相当すると思われます。派遣ぎりのように人をもののように扱うようでは、国民経済は疲弊していきます。



★社外取締役以外のモニタリング制度はあるか?


人的資本が他の財と比べて非常に難しいのは、2面性があることです。


つまり労働者として労働を企業に提供すると同時に、それらの人たちは社会の構成員であり、企業のお客様でもある点です。


労働の対価を支払えばよいというものではなく、社会の安定性、国民生活の維持という点から考えると、ある意味自然資本とともに国民経済の根幹を成す根本的資本だという視点で分析が必要です。


企業は国民経済に根ざして活動するものであり、その根幹である人的資本の維持育成を図ることがCSR上求められるといえます。


これらの点を総合するとモニタリング制度は現状では十分とはいえず、社外取締役によって補強できるのであれば社会にとって望ましいといえます。


◆結論:


社外取締役として求められる資質として特に重要なのは、金融資本のうち市場性デット、エクイティに関することと(詳細は社外取締役に求められる資質とは?(2)企業は何を与えるものか? を参照)、人的資本にうち国民生活に関わることであり、具体的には以下があげれるといえます。また、さらに実際に会社に影響を与えるために、コミュニケーション能力が高いことが大前提となることは言うまでもありません。


A:市場性デット、エクイティ:

・幅広い会社経営経験=>会社経営経験者
・ビジネスモデルに対する深い造詣=>学者、コンサンルタント、証券アナリスト経験者
・企業価値理論に対する深い理解=>学者、コンサルタント、証券アナリスト経験者


B:人的資本
・社会学的な見識の深さ:学者、コンサンルタント
・人材育成の理論的・実務的見識の深さ:学者、コンサルタント


上記の分野で考えるとあえて1人を社外取締役としなければならないのであれば、Aとなるのではないかと思います。なお、法令順守に関しては、社外取締役というよりも弁護士等の外部制度に頼ればある程度目的は達成できるので、あえて社外取締役として強化する必要性はAやBに比較すれば低いのではないかと思います。


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