先日も記事にしましたが大津で起きた園児の列に車が突っ込み園児二人が死亡し、14人がけがをしたという事故で、大津地裁が被告人に4年6月の禁固刑を言い渡したというニュースがありました。

 

この事故は、直進者と右折車の事故で、右折車の運転者が訴追されています。

 

先日の記事では、園の記者会見において、記者たちが、園の散歩ルート選択等について園の過失を問うような質問を繰り返していたことに対して、おかしなことをするものだとの話をしました。

 

今回の禁固4年6月の判決は、一般の方の感覚からしたら、軽すぎると感じるのではないでしょうか。なにせ、2人亡くなり14人がけがで、中には重傷者もいるわけですから。

 

ところが、弁護士の感覚でいえば、少し重いと感じなくもないです。

交通事故の場合、人を一人死亡させても、執行猶予判決がわりと普通です。今回は、さすがに執行猶予はないなと思いますが、それにしても4年6月は長いなと思ってしまうものです。なぜなら、直進右折の事故はよくある事故類型で、特段、危険な運転をしたというわけではなさそうだからです。

 

それで、少し調べてみると、この被告人は、ストーカ規制法でも起訴されているのですね。どうも、この事故を起こした後、保釈中に出会い系サイトで知り合った男性に対してストーカー行為を行ったということのようです。そういった事情も加味されているのでしょう。

 

ところで、私が何に裁判官の怒りを感じるかというと、量刑の重さではありません。なぜなら、量刑の重さについては、前科、前歴の有無なども影響しますし、個々の被害者のお怪我の程度や後遺障害の有無なども重視されますから、記録も見ず、傍聴もしていない立場では、わかりようがなく、せいぜい、前述のような簡単な批評しかできないからです。

 

では、私が何に裁判官の怒りを感じたかというと、このような大きな事案にもかかわらず、即日判決を言い渡しているからです。

 

通常、証拠調べをして検察の論告、弁護人の弁論を聞き、結審をしたあと、判決言い渡し期日を後日に指定するのが通常ですが、この裁判では、結審後、直ちに判決を言い渡したというのです。簡単な事件では、即日判決もありますが、このような実刑を言い渡すような重大事件において、即日判決は、極めて異例ではないかと思うのです。

 

そこで、さらに深く報道を過去にさかのぼってみると、もともと判決が予定されていた日に、被告人が追加の主張をしたいといい始め、判決言い渡しが延期されたということのようです。具体的には、右折車の被告人が直進車の過失を主張したいと言い出したということのようです。

 

そして、改めて開かれた本日の公判で、被告人の追加の言い分を聞いたうえで、即日判決を言い渡したということのようです。

 

まるで、被告人の追加の言い分は、一応聞いてあげるけれども、取るに足らないといわんがばかりですよね。刑事裁判においては、被告人の主張を尽くさせて、そのすべての主張を踏まえて、熟考して判決を下すものです。ましてや、このような実刑を言い渡すような事件では、裁判官はより慎重になるのが通常です。

 

しかし、今回は、即日判決ということで、裁判官の怒りを感じるわけです。

 

この事故類型の場合、直進車が無過失というわけではありません。しかし、過失の大半は、右折車にありますから、刑事事件において、直進車の過失を取り上げることはまずありません。いわば、主張しなくても、裁判官も検察官も織り込み済みだからです。

 

直進車がスピード違反であったとか、酩酊状態で蛇行運転していたとか、特殊な事情があれば、主張する価値がありますが、警察がしっかりと捜査しているはずですから、刑事記録にそのような事情がなければ、弁護人の立場からすれば、直進車の過失を取り立てて主張することは、まずありません。

 

そういうわけで、実際問題、この被告人の新たな主張は、新たな事情として考慮に値しないと事前に当たりをつけていて、実際に主張を聞いても、新たに斟酌する必要はないと即座に判断できたということではないでしょうか。

 

ただ、被告人の立場に目を向けると、自分の主張を軽く扱われたと感じるでしょうし、まったく斟酌してもらえなかったと不満を抱くことでしょう。

 

今回、即日判決という形で、被告人の態度に報いたわけですけれど、裁判官もいろいろだなあと思う次第です。わたしは、こういう裁判官には、とても好感を持てます。

 

しかし、もし、私がこの被告人の弁護人だったとしたら、つらいですね。裁判官に即座に意味がないと判断できるような主張をしなくてはいけなくなると考えると、とても微妙な気持ちになります。

 

ただ、それが弁護人という立場でもあります。法廷の場で孤立する被告人のために、弁護する人間が必要だというのは、長い人類の歴史からもたらされた英知ですから。