囲碁の日本棋院が、依田九段に対して、対局停止の処分を下したというニュースがありました。報道によれば、依田九段が、「執行部は嘘もつくし事実を歪める」「権力に媚びる茶坊主の集まり」などと繰り返し批判したこと、それがために日本棋院のマスターズカップのスポンサーが撤退したということを根拠にしているとのことです。

 

実際、詳しい事実関係はわかりませんが、執行部に対する批判的言動を懲戒事由にするのは、私の感覚としては、かなり難しいと思うのです。団体において、会員が自由に執行部を批判できないというのは、組織の腐敗の原因になりかねません。そのため、執行部は、会員からの批判を受けとめるべきであるという価値判断が強く働きます。執行部批判が懲戒事由にはなかなかなりえないのではないかと私は思います。

 

また、スポンサーが撤退したということですが、依田九段の発言とスポンサーの撤退が直ちに結びつくのかといわれれば、かなり立証は難しいのではないでしょうか。

 

ただし、依田九段もツイッターを用いて発言をしたということですので、その点は、依田九段にとってあまりよい事情ではありません。「嘘つき」「茶坊主」という侮辱的発言を不特定多数人に対して発信したわけですから。

 

将棋で少し前に物議をかもした三浦弘行九段が将棋ソフトを対局に用いたとして出場停止処分を下してしまった事件がありましたが、この事件は、のちに日本将棋連盟が処分を撤回し、三浦九段に謝罪するという結末に至りました。

この顛末となったとき、処分の前に弁護士に相談しなかったのかな、と思いました。なぜなら、ソフトを用いたということを立証するのはかなり難しいことから、私であれば、そのような処分にはかなり躊躇を覚えるからです。

 

というわけで、この依田九段の件も報道から推察する範囲では、執行部の勇み足なのではないかと思える部分もありますので、事の顛末がとても気になっています。

 

こういったケースに限らず、大小ある様々な団体において、その会員に懲戒処分を科すには、相応の慎重さが必要です。処分を下す前に、弁護士に相談していただくのは必須ではないかと思いました。