日本の国民病ともいわれる認知症ですが、認知症の方を相手に訴訟をしようとする場合、どうすればよいのかというご質問がちらほらあります。

 

認知症の方を相手に訴訟をしようとする場合には、その方に成年後見人をつける必要がありますが、申立権の範囲が限られています。配偶者と四親等内の親族であれば、申立ができますが、親族同士の争いであるとか、親族が協力してくれるとかの事情がないと難しくなります。

 

ちなみに四親等というのは、かなり広いです。子、親が一親等、兄弟、祖父母が二親等、叔父などが三親等、従兄弟が四親等という感じです。というわけで従兄弟もできます。

 

では、そういう方を相手に裁判をできないのか、というとそういうわけでもなくて、特別代理人の選任を申し立てることによって、訴訟をすることができます。特別代理人というのは、裁判所が、当事者の代わりに訴訟をするために、特別に選任した弁護士のことです。そのため、特別代理人の弁護士のために、裁判所に別途お金を納付する必要があります。この費用は、事案の軽重によりますが、簡易な事件で10万、20万円といった感じです。

 

ただ、実際問題、裁判所が被告となる人物が認知症で訴訟をする能力がないということを調査するわけではありません。そして、民事裁判は、期日に出頭せず、主張の書面も提出しない場合には、擬制自白といって、原告の勝訴判決を言い渡すことができます。そのため、認知症の高齢者が裁判を起こされても、何も対応することができず、相手の言い分どおりの判決が出て、確定してしまうことが往々としてあります。ということで、被告が認知症であることなどお構いなしに裁判をするという人もいます。

 

他方、訴訟を起こされたことを親族が気付いて、裁判所に被告となった高齢者の診断書などを提出すれば、裁判所は、その親族に成年後見制度を利用するようにアドバイスをすると思いますが、親族が拒否した場合には、上記の特別代理人の選任という運びになるかと思います。

 

なお、身寄りない高齢者であっても、訴訟を起こされたことを介護事業所等が気付き、包括支援センターなどに相談するというケースも増えています。大阪弁護士会のひまわり(高齢者障がい者委員会)は、包括支援センターに対して、定期的な法律相談会を実施しており、私も、その事業の一員として活動していますので、包括からそういったご相談はしょっちゅうあります。結局、支援者が協力して、何とかするのですが、高齢化社会では、身寄りのない高齢者が急増しており、これは社会問題といってよいと思っています。