自賠責保険は、

治療費、通院交通費、休業損害などの

傷害部分に関する支払いの上限を、

120万円と定めています。

 

そして、120万円を超える損害が発生してはじめて、

任意保険会社が負担をするということになります。

そのため、任意保険は、自賠責保険を補完する役割があります。

 

ただし、現実的には、治療費等は全て任意保険会社が支払い、

任意保険会社は、事後的に自賠責から、

上限120万円の範囲内で支払った額を回収します。

 

逆に言えば、治療費等が120万円の範囲内で納まれば、

全額自賠責から回収できる可能性が高く、

任意保険会社は、全く自腹を切ることはない、

というのが実務上の真実ということになります。

 

と、ここまでお話しすると、

何がいいたいか透けて見える方もいるかもしれません。

 

任意保険会社は、120万円までの範囲内であれば、

自賠責から回収できるので、

比較的緩やかに治療費等の支払いに応じます。

しかし、120万円を超過してくると、

それ以上は自腹なので、厳しい対応をしてくることがあります。

 

たとえば、むち打ち症で3ヶ月から6ヶ月くらい通っていくと、

通院頻度や休業損害の額にもよりますが、

120万円に近づいてきますので、

支払いの打ち切りを通告してくることが多いのです。

 

ここまで書けば、あたかも保険会社が、

お金のことだけを考えて運営されていると

思い込まれる方もいるかもしれません。

しかし、あながち、そうだといいきることもできません。

 

むち打ち症の場合、

6ヶ月程度症状が継続する方は、

その後も症状が数年単位(2年から5年くらい)で

継続する可能性が高くなってきます。

 

多くの方の症状を弁護士の立場で見てきましたが、

そうなってくると、あとは、症状があることに慣れていくか、

筋肉で補っていくしかないと思います。

 

このような状態は後遺障害だと考えられますので、

6ヶ月以上の通院期間を経ても症状が残存している方は、

後遺障害の申請をすべきでしょう。

 

いつまで通院するかは、基本的に医師のご判断ですが、

私は、6ヶ月から1年が目安かと思っています。

なぜなら、多くのむち打ち症の患者の方は、

6ヶ月以上の通院を経ても症状が治らない場合、

その後は、大きな治療効果が見込めなくなっている可能性が高いからです。

そのため、6ヶ月経過後は、

数ヶ月程度、治療効果の推移を見つつ、症状固定するのが、

妥当であると思っています。

 

症状が改善される見込みもない通院は、

交通事故の賠償の範囲外になることに留意しなければなりません。

 

つまり、保険会社は自賠責の上限120万円という側面はあれど、

こういったむち打ち症の傾向を踏まえて、

症状の軽重にもよりますが、

概ね3~6ヶ月程度で治療費を打ち切ってきます。

 

私の観点では、数ヶ月早いとは思いますが、

不当とまでは言い切れないと思っています。

 

仮に6ヶ月程度で治療費を打ち切られてしまった場合、

私は、依頼者と協議します。

そのときの症状の程度や

医師が診察時にどのような意見を言っておられるか、

などの状況を確認します。

 

そして、症状はまだあるが、それほど気にならないというのであれば、

後遺障害の申請をせず、治療を終了してもらいます。

まだ、つらい症状があると言う場合には、

健康保険を使った治療をするようにアドバイスをしています。

そして、さらに数ヶ月通院の後、

症状固定の判断を医師に仰ぎます。

 

さて、このような経過を経て症状固定をして、

後遺障害の申請をします。

 

後遺障害の判断においては、

当然ですが、症状の程度が重視されます。

たとえば、手足にしびれの症状が出ているとか、

首が回らないとか、

ジャクソンスパークリングテストが陽性であるとか、

握力が著しく低下しているとか、

が判断に影響を与えているように思います。

 

そして、これ以外に重要な要素となっているのは、

通院期間と頻度です。

しんどいから通院をする、

逆に言えば、通院をしていたからしんどかったのだろう、

と判断するわけです。

 

ここまで述べると、また透けてくるかもしれませんが、

保険会社の立場からすれば、

長い通院は後遺障害認定につながり、

賠償額が高くなるということになります。

 

そういうわけで、

保険会社は、症状が比較的軽微だと思う人には、

3ヶ月程度から治療の終了を打診してきますし、

症状が比較的重いと思っても、

6ヶ月経過したころには、

もう後遺障害の申請をしてくださいと打診してきます。

 

ただし、昨今の後遺障害の認定状況を見てみますと、

6ヶ月程度通院の方でも14級が出ているケースもあれば、

1年通院しても後遺障害なしというケースもあります。

通院の長さが決定的要素と言うわけではありません。

通院期間、頻度、症状の重さ等の総合判断になっていると思います。

 

交通事故の被害がそんなに再三再四起こるわけではありません。

このような知識は、被害にあってから初めて調べることだと思います。

もし、お役に立つ内容であれば、うれしく思います。