最高裁判所は、昨日、

元妻の不貞相手に対する慰謝料請求を認めない判決を下しました。

昨日は、大きく報道されていましたが、

正確な報道がなかなか見当たりませんでした。

 

不貞相手への慰謝料請求は、

不貞行為そのものに対する請求とする場合と、

②不貞行為によって夫婦関係が悪化して離婚したことを理由とする場合が考えられます。

 

通常は①で請求します。

その上で、離婚まで至っている場合には、

結果が重大だということで、慰謝料の増額事由であると考えます。

相場的には、

離婚に至らなかった場合は100万円以内、

離婚に至った場合には、200万円程度ではないでしょうか。

 

ところで、

今回の裁判では、②の形でなされた裁判です。

実は隠れた争点があり、

それは「時効」です。

 

不法行為の時効は、

被害者が、損害と加害者を知ったときから3年です。

①の不貞行為慰謝料請求でいえば、

不貞行為の事実と相手方を知ったときから3年です。

 

今回は、平成22年5月ころ、不貞の事実と相手方を知ったようですので、

ここから時効が進行し、平成25年5月ころに時効が完成してしまいました。

 

他方、このご夫婦は、調停の結果、平成27年2月25日に離婚が成立したようです。

つまり、今回の請求は、②の請求、つまり、「離婚したこと」を損害と捉え、

平成27年2月25日から時効が進行するから、

まだ慰謝料が請求可能であるとの理屈でなされた請求です。

 

この議論は、しばしば、問題となっていました。

不貞相手への請求は、不貞の事実と相手方を知ったときから3年ですが、

離婚した場合には、離婚自体を損害と捉えて②の形で請求できるから、

離婚時から3年は請求ができると考える弁護士が多数いました。

今回の地裁と高裁は、このような請求を認容していますので、

あながち間違った考えではありませんでした。

 

しかし、最高裁は、

不貞相手には特段の事情のない限り、離婚に伴う慰謝料請求はできない

と判断しました。

その理由として、最高裁は、離婚は夫婦で決められるべき問題なので、

離婚したことの責任までを直ちに不貞相手に負わせることはできない、

としています。

 

責任を問われるような特段の事情について、

最高裁は、離婚への不当な働きかけがあったかという点を重視しています。

おそらく、「夫と別れて私と一緒になろう。」と言ったぐらいでは、

この特段の事情にはあたらないと思います。

なぜなら、不貞関係には、このような言動などよくあることで、

このようなことぐらいで特段の事情を認めているならば、

最高裁があえて「特段」といった意味がないからです。

 

ところで、なぜ私は、きちんとした報道がされていないといっているかというと、

この判断は、あくまで、

離婚したことまでは不貞相手には責任は問えない、

との判断であって、

不貞行為自体の慰謝料請求権を否定するものではないからです。

 

そうであるにもかかわらず、

「不貞相手への慰謝料請求を認めず(最高裁)」

などとミスリードしたタイトルで掲載されています。

このタイトルだけを読むと、

不貞相手には全く慰謝料が認められなくなった

との印象を受けるでしょう。

 

本来、本件も時効でなければ、

不貞行為に対する慰謝料請求できていたと考えられます。

最高裁も、判決理由中に、

「不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合がある」と述べており、

不貞行為を理由とする上記①の請求を否定していません。

ですから、今後も、不貞行為を知ってから3年以内であれば、

不貞行為を理由とする慰謝料請求は可能と考えられます。

 

ただし、この判決は、不貞行為に対する慰謝料請求にも

影響を与える可能性があると私は思います。

 

私は、最初に、

不貞行為に対する慰謝料請求は、

離婚まで至った場合には慰謝料額が高いと述べました。

 

しかし、今回の最高裁の理屈を突き詰めていくと、

離婚するかどうかは、夫婦の問題ということですので、

離婚したから慰謝料が高くなるという理屈も

一蹴されているように思うからです。

 

本判決の影響として、

離婚している場合に、

従来認められていた慰謝料相場の200万円が、

離婚していないときと同じくらいの相場(100万円以内)に減るのではないか、

と思っています。

今後注目が必要です。