醜状痕に関する価値観の変遷

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そもそも、

「醜状痕」という言葉は読めますか?

 

これは、

「しゅうじょうこん」と読みます。

「しゅうじょうこん」とタイプして変換キーを押しても、

出てきません。

いつも、「みにくい」「じょうたい」「こんせき」と書いて

適宜変換していきます。

まさに、「醜い」「状態」の「痕跡」が残ってしまったという意味です。

 

 

交通事故の結果、顔や体に消えきらない痕跡が残ってしまったという場合、

その残った痕跡の程度に応じて、

賠償を受け取ることができます。

 

程度に応じて、後遺障害の等級が決められ、

一番ひどくて7級、ついで9級、12級、14級という具合です。

 

基本的には、慰謝料がメインとなるのですが、

場合によっては、将来にわたる減収に対する賠償として、

逸失利益の賠償を受けることができる場合があります。

 

具体的には、顔面に醜状痕が残り、

職業上の影響が出ると判断される場合には、

逸失利益の賠償を受けることも可能です。

 

たとえば、営業職の人や接客業の人の場合には、

認められやすい傾向があります。

他方で、主婦は、大きく労働能力に影響するとは考えられないとして、

認められない傾向にあります。

たとえ認められなくても慰謝料の増額事由として斟酌されることもあります。

 

醜状痕は、かつて、男性と女性との間に区別がありました。

同じような醜状痕であっても、

男性より女性のほうが賠償額が高くなっていたのです。

しかし、性による区別はおかしいという議論がなされ、

現在は、男性も女性も同等に評価されます。

 

過去の裁判例を見ていくと、

年齢によって評価を変えている事例を見つけました。

 

とある交通事故の被害者の女性に対し、

逸失利益を認めている事例なのですが、

醜状痕による労働能力の喪失の程度は、

加齢によって低下するとして、

27歳からの20年間については認め、

その後の20年間はほとんど認めていないという事例です

(名古屋地裁平成13年3月30日)。

 

つまり、誤解を恐れずに分かりやすくいうと、

この裁判官は、

27歳からの20年間は、醜状痕はすごく影響があるけれど、

47歳にもなると、醜状痕があっても影響はほとんどなくなるよね、

といっているのです。

 

この裁判例を見たとき、

小野小町を思い出しました。

小野小町は、

 

 花の色は うつりにけりな いたづらに
   わが身世にふる ながめせしまに


と詠みました。

簡単に解説すれば、

年をとって美貌が衰えていくことを悲しんで詠んだ歌です。

 

醜状痕が労働能力に与える影響が、

職業によって変わるというのは、一定程度、うなずけるところですが、

果たして年齢でも労働能力への影響も変わるのでしょうか。

 

この判断の根底には、

女性は「若さ」と「見た目」が大事だという

小野小町的な価値観が紛れ込んでいるような気がしてなりません。

 

おそらく、このような裁判例が今後に出るとは思えませんが、

交通事故で有名ないわゆる「赤い本」で紹介されている裁判例なので、

「赤い本」の編集者の方は

影響力を自覚していただいて、

速やかに当該裁判例を削除していただきたいと思います。