男はつらいよ 寅次郎夢枕 | 芸術浪漫

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今回は“寅さんシリーズ”の第10作、『男はつらいよ 寅次郎夢枕』(山田洋次監督、松竹、1972年)です。

 

記念すべき第10作。今回はこれまでにない、意外性の高い展開を見せます。ここまでフラれ続けてきた(一部作品を除く)寅さん(渥美清)が、幼なじみのマドンナのお千代坊(八千草薫)をフッてしまいます。しかも、プロポーズを受けながらです。

 

とらやの二階に居候し、お千代に惚れていた東大の助教授(米倉斉加年)との間を取り持ってやろうとしたところに、「寅ちゃんとなら、一緒に暮らしてもいい」と言われてしまい…。この亀戸天神でのクライマックスシーンでは、寅さんの弱さ(女性からの求愛を受け止められない)が浮き彫りになります。

 

こうしたシーンが映し出されることで、見る側は寅さんの人間味を実感し、シンパシーを感じでさらにこの作品のファンとなっていくわけですね。その意味では、寅さんシリーズ初期の傑作と言っていいかもしれません。

 

お千代坊は寅のことが諦めきれないのか、寅が不在の正月に訪れたとらやでも「寅ちゃんとならいいわ」と言い切ってしまいます。もちろん、冗談だと思ってみんな笑うのですが、さくら(倍賞千恵子)だけはその本気度を感じ取るような表情。こういう何気ない一シーンにも、こだわりが見られます。

 

いつもの寅さんの役回りは居候の東大助教授が演じることになるのですが、寅さんの“インテリいじり”は今回も健在。善良で奥手な助教授という難しい役を、名優・米倉斉加年が見事に演じています。

 

また、名女優・田中絹代が旅の途中で出会う老婦人役で登場する場面も見ものです。かつての仲間だったテキヤの最期をみとったことを聞かされるシーン。時間はわずかですが、味わい深くグッときます。

 

そして、なんといってもマドンナの八千草薫。実にかわいらしいですね。何よりも気品があります。このころ、40手前といったところでしょうが、純情可憐な雰囲気が何ともいえません。寅でなくても惚れますね。「寅、なんでプロポーズを受けないんだ!」と言ってしまいたくなります。

 

寅さんシリーズも10作目を迎え、さらに乗ってきた感がありますね。

 


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