福島旅行記10 土湯こけしと相馬焼京月窯を訪ねる | 晴れのち曇り時々Ameブロ

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東北の伝統こけし

福島の「花」も好きですが、福島の「人」が好きです。
近頃、東北の伝統こけしが若い女性の間でブームになっているということなので、今回は土湯こけしの工人さん達と女性陶工が営む窯元を訪ねてみたいと思います。
東北伝統の郷土玩具、こけしの系統は主に11に分類されていて、その中でも発祥とされているのは土湯系・鳴子系・遠刈田系の3箇所。
そこから他の産地に、工人さんたちを介して伝えられていったということのようです。
なぜ温泉地に多いのかというと、東北には昔から湯治という習慣があり、家族で長期に渡り滞在していた際の子供の玩具として地元木地師さん達により作られました。
因みに木地師というのは、地元の木材を使い日用食器を作られていた方々。
轆轤を使って精巧に木を削る技術を、子供たちの郷土玩具に転用したというのが始まりだそうです。

土湯温泉

今回のテーマは「ふれあいの旅」、向かったのは土湯系こけしの工人さんがいる福島県土湯温泉。温泉
市街地から50分ほど離れた、山間にあるのんびりとした静かな温泉地。
街中には、工人さん達の直営店があるようなので、さっそく観光協会で情報を得ながら幾つか訪ねてみましょう。

味工房「ひさご」

着いたのがちょうど昼前ということもあり、先ずは腹ごしらえをと伺ったのが「味工房ひさご」、地元産そば粉を100%使った手打ちそばが自慢のお店です。
店構えは、なかなか良い感じ。
中に入ると、20席ほどの家族で営む小さなお店でした。
カウンター席もあるので、わたくしのようなお一人様には嬉しい限りです。

ひさごの欲張りそば

注文したのは、写真のよくばりそば。
自家製の手打ちそばに、山菜の天ぷらや温泉玉子、たたきとろろなど郷土料理が5品付いたセットメニュー。
こちらのお蕎麦、水が良いのでしょうか?
みずみずしいというか、雑味が無いというか、さっぱりといけてとても美味しかったです。
手打ちのお蕎麦に地元の郷土料理って、なんかイイですよね!

ところで、こちらのご主人なのですが・・・
そば屋の店主というのは表向きの顔で、実は東北でもその名を馳せる工人の一人、陳野原幸紀さんだったりします。
土湯温泉って、こういう人たちが多いんですよ。
まるで忍者の隠れ里のような、表向きはこうなのだけれども、実はこうでしたみたいな感じの人たち。(笑
工人の渡邉隆さんも、普段はお団子屋さんとかやってませんでしたっけ?
食べましたよ!>お団子お茶お団子
因みに、陳野原さんは土湯こけし組合の理事長もやられております。
こけしを見せてもらいたかったのですが、昼時でかなり忙しそうだったので、近くにある娘さんのお店を訪ねてみることにしました。

ひさごCAFEと見聞録館

それがこちらの「ひさごCAFE」というお店。
娘さんの作るそば粉のガレットが好きで、土湯温泉に来た時はいつも食べていたのですが、今はメニューを限定して喫茶と自家製クッキー、可愛らしいこけし雑貨の販売がおこなわれています。

女性向けのこけしグッツ

陳列されていたのは、こんな感じのもの。
どちらかというと、女性向けの小物類が多かったかな?
奥に見える帽子をかぶった創作こけしは、娘さんショップの限定品。
帽子が取れるようになっているみたいです。
悪くはないのですが、見た目がちょっとシンプルすぎるようなので、羽織る感じのモダンな洋服を着せてあげても、可愛いかもしれないですね。(^_^)
チャップリンとか、シャーロックホームズ風みたいな感じで。
子供の頃、近所の女の子たちが着せ替えの人形で遊んでいた記憶があるのですが、あの発想の大人バージョンということです。

それと、カフェなのでこけし柄のオリジナルマグカップが置いてあっても良いかも?
この記事で一緒に紹介している京月窯さんでしたら、相談に乗ってくれるかもしれませんよ。

陳野原幸紀作5寸こけし

創作こけしも良かったのですが、今回はこちらの小さな伝統こけしを購入しました。
やっぱり良いですね~
陳野原工人のこけしは、物産店や福島駅のギャラリーとかで見ても、必ず1番最初に目に留まります。
ただ、料理の腕前は、娘さんのほうが上かも?
こけしと一緒に買って帰ったごまクッキー、街の洋菓子屋さんというよりかは、ホテルのパテシエさんが作るような上品な味がしました。
メニューにあった焼チーズカレー、今度伺った時に是非食べてみたいです。

土湯こけし見聞録館

さて、工人のお店を訪ねる前に、ひさごCAFEの隣が町営の土湯こけし見聞録館になっているので、ちょっと覗いてみることに・・・
無料の休憩所兼資料館になっていて、主に地元収集家の故阿部荘作氏の貴重なコレクションが展示されていました。
ちょっと歩き疲れた時に、勝手に入って勝手に休憩するには、良い場所かもしれません。
ベンチに腰かけて、ふと窓の外を眺めていると、子供が大勢で何かを探し回っている様子。
温泉街を散策する例の宝探しゲーム、今年もやっているんですね。
こういう宝探しができるような町並み、すごく好きです。

高定商店

しばらく休憩した後、次に伺ったのがこちらの「高定商店」、一輪差しや手提げバッグ等の雑貨が売られているお店なのですが・・・
実はこちらのご主人、名工で知られる阿部広史氏の数少ないお弟子さんの一人で、高橋賢三さんという方でした。
阿部広史工人の技は、ご子息の計英さんも受け継いだのですが、現在は病床に伏して制作ができなくなってしまったことから、もう一人のお弟子さんでもあるこちらのご主人がその技法を後世に伝えているということのようです。

高定商店に陳列されていた伝統こけし

店内の一角には、ご自身で作られたこけしの他に、師匠でもある阿部広史さんやご子息の計英さんの貴重なこけしも非売品として展示されていました。
こけしの話、色々してくださいました。
制作にあたっての裏話、墨のすり具合や顔の表情、人形師のところで修行をした経験などなど。
「次回来た時には、もっと良いものを作っておきますよ」という言葉が、とても印象に残っています。

高橋賢三作8寸こけし

師匠の阿部広史さんと比べて、顔立ちが少しふくよかで優しい印象。
とくに、他の工人さんたちとの違いは、最後の仕上げ(蝋挽き)が丁寧にされているところ。
仕事だけには留まらない、自ら作ったこけしに対しての愛情をこんなところにも見て取ることができました。
わたくしが購入した8寸のこけし、その中でも一番出来の良いものだと思うのですが、他のこけし同様に時折眺めては大切にしますね。
工人組合には登録していないので、賢三さんが手掛けたこけしは、ここでしか手に入りません。
土湯に行かれた際には、ぜひ気軽に覗いてみてください。

土湯こけし伝承館

次の工人さんのお店に向かう前に立ち寄ったのが、こちらの土湯こけし伝承館。
ちょっとノスタルジックな佇まいなので、すぐに目に付きます。
建物の雰囲気と、この道の傾斜具合が土湯らしくて良い感じです。
入口横のショーケースに展示されていたのは、毎年開催される絵付けコンクールの受賞作品。
子供から大人までどれも力作揃いで、わたくしにはちょっと真似のできないレベル。(^_^;)

土湯こけし伝承館

中に入ると、東北各県から集められたこけしたちが、所狭しと並べてありました。
こちらの施設も、無料休憩所兼資料館という感じでした。
土日祝日には、工人さんによる実演が行われているはずなのですが・・・最近は忙しいらしく放置状態のよう。((爆))
ここのところ、都会の若い女性の間でこけしがブームになっていることから、主力の工人さんたちはあちらこちらに遠征しているみたいで。
忍者の隠れ里が手薄状態とは、これでは敵に攻め込まれたら一巻の終わりですね。(笑

土湯こけし伝承館

因みに異彩を放っていたのはこの2体、先ずは手前の大きなこけし。
「たこぼうず」という愛称で呼ばれている土湯系のこけしで、産地は土湯温泉ではなく猪苗代のほう。

土湯こけし伝承館

もう1体は、木目と顔立ちに特徴があるこの黒柄のこけし。
どこの子だろう?
ちょっと不思議な雰囲気を漂わせていました。

山根会津屋

次に紹介するのは、伝承館の斜向かいにある「山根会津屋」という民芸店。
土湯を代表する工人、渡邉忠雄さんのお店です。
店頭の工房では、工人自ら轆轤を回している姿も時折みられるのですが、残念ながら伺った時には不在だったようで奥様が対応してくださいました。

山根会津屋

店内は、民芸品店らしく賑やかな雰囲気。
こけしの他に、ちりめん細工の縫いぐるみも置いてあったりして。
飾られていた枝垂桜の写真、とても綺麗に撮れていました。

渡邉忠雄作こけし各種

そして、こちらが渡邉忠雄工人の作るこけしたち。
土湯こけしの目の特徴には、二重瞼と鯨目というのがあり、こちらのこけしは顔立ちがキュッ!とした鯨目が特徴。
この鯨目が、いいんですよー
今回購入したのは、一番右側の1尺のこけし。
底の部分に作者名と作成した日付、年齢が記されていたのですが、並べられていた中では一番出来が良かったのではないでしょうか?
わたくしも、見た目そう感じてこれに決めたのですが、普通は作者名しか記されていないので、何か特別な思い入れがあったのかもしれませんね。
もしくは、コンクール用に作ったとか。
こんな些細な部分にも注目して、色々と見て歩くのも面白いと思います。

手作りこんにゃく工房「金蒟館」

ちょっと小腹が空いたので、観光協会の隣にある手作りこんにゃく工房「金蒟館」に寄ってみることにしました。
こちらのお店は、無添加の天然素材だけで作るこだわりのこんにゃく専門店。
散策用にお薦めなのは、店頭のデッキで食べられるあつあつの串こんにゃく。

土湯名物の串こんにゃく

田楽味噌と醤油味があるのですが、見た目は田楽味噌のほうが美味しそうだったのですが、食べると醤油味のほうが味がしみてて美味しかった!
ヘルシーなので、両方食べ比べてみるのが良いと思います。
土湯温泉の旅館では、女性向けのヘルシーメニューも提案しているみたいですよ。

まつや物産店

そして、今回最後に伺ったお店がこちらの「まつや物産店」、わたくしにとっては毎年訪れる実家のような場所。
工人は、わたくしの絵付けの先生でもある阿部敏道さんとご子息の国敏さん。
人気のこけしは、国敏さんの作る“ほほえみがえし”という創作こけし。
さっそく中に入ってみると、と、と、・・・そろそろこの固くなった入口の扉、なおしません?(笑

まつやの看板犬

でもまあ、いつもこの子(ティム君)が迎えてくれるので。
甘えん坊で、とっても可愛いんですよ♪
毎回訪れる度に癒されています。

まつや物産店

店内に敏道先生が居たので、国敏さんのこけしがあるか聞いてみると、「それがひとつもねぇーんだよ」との返答。
とりあえず、写真だけでもと思い去年来た時にあった見本のほほえみがえしはないか聞いてみると、どうやらそれも売れてしまったよう・・・
それどころか、非売品の巨大な微笑み返しや絵付けの時に見本で使った伝統こけしも全部売れてしまったとのこと。
他の工人のこけしが沢山置いてあって、自分のところのこけしが1本もないとは、普通はあり得ないでしょう。しょぼん
今回の企画は、工人さんのお店に行って、その工人が作ったこけしを買うということだったのですが、最後の最後でまさかの事態に。

まつやの看板犬

困ったね。
どうしたものかと悩んでいると、あるご夫婦が偶然店内に入って来ました。
どうやらご主人のほうは、その道では名の知れたこけし収集家とのこと。
色々と雑談をしている中で、お店の中に阿部勝英さんのこけしがあるということを教えていただきました。
阿部勝英という人物は、敏道先生の父、国俊さんの祖父にあたる人物で、平成元年に他界されています。
敏道先生も、国俊さんも、勝英さんから絵付けの技術を伝授されたそうです。

陳列されていた貴重な伝統こけし

それが上の写真、前列左から2番目と一番右のこけし。
素晴らしい!さすが、わたくしの絵付けの先生の先生。(謎
国俊さんの描く伝統こけしの表情も、祖父である勝英さん譲りで、とてもよく似ています。
そういえば、先ほど寄った高定商店のご主人も、「国俊君には、ほほえみがえしよりも、勝英さんのようなこけしをどんどん作ってもらいたいんだよ!」と言っていましたが、確かに私も国俊さんの描く伝統こけしの表情が好きで、今回も微笑み返しではなくそちらを買いに来たのですが、きっと若い人には若い人なりの考えがあるのでしょう。
殆ど村の寄り合いのような話になっていますが、工人さんたちは皆喜作な方ばかりで喋っていて本当に楽しいです。
そして、今回大変なサプライズが!!
なんと、非売品の勝英さんのこけしを特別に1本譲っていただけることに。

阿部勝英作5寸こけし

それが、こちらの5寸の小さなこけし。
真新しく見えますが、実は30年以上前のもので、つい最近まで蔵の中でひっそりと眠っていたとのことでした。
まさに蔵出し、まつやのお母さんありがとう~♪
これだから土湯の人たちって、好きなんですよ。
収集家の方の薦めもあり、右側の一番出来の良いやつを連れて帰ることにしました。
それと、店内にあった遠刈田系のこけしで気になるのがあったので、お礼を兼ねてそちらも一緒に。

今回購入した土湯系こけし他

ということで、今回の土湯めぐりでの戦利品を一挙紹介!
後列左から土湯系渡邉忠雄作(1尺)・土湯系高橋賢三作(8寸)・遠刈田系斉藤良輔作(8寸)
前列左から土湯系阿部勝英作(5寸)・土湯系陳野原幸紀作(5寸)
因みに、斉藤良輔という人物は、大正14年生まれの方で現在もご健在のようです。
写真のこけしは60才の時の作品、今から30年位前のものですね。

日本一大きなこけし

こけしというのは、人の心を和ませるだけでなく、人と人とを繋ぐもの。
こけしの故郷土湯温泉、工人さんたちに会いに是非いらしてください。
まつやのティム君も、皆さんが来るのを待っています。
それともうひとつ、これからまちづくりを少しずつ始めると聞きましたが、色の無い町には人は集まりませんので、土湯の色・土湯らしさを忘れずに!
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土湯温泉観光協会
福島駅観光案内所
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福島交通飯坂線

翌日は、福島市内にある女性陶工が営む窯元を訪ねてみることにしました。
福島駅から飯坂電車に乗って、平野という無人駅まで向かいます。
そこから徒歩で15分位の場所に、古民家を利用した窯元兼ギャラリー大堀相馬焼「近徳京月窯」があります。

大堀相馬焼京月窯

赤い屋根の日本建築で、向かって左側が近藤京子さんが営む京月窯。
元々は浪江町で窯元を営んでいましたが、原発事故により避難を余儀なくされ、2011年秋に私財を投じてこの地に窯を再開しました。
当初は家族の反対もあったようなのですが、女性ならではの機転の良さで乗り越えたようです。
とても前向きで明るい方、逆にこちらがホッとさせられるような、そんなサバサバとした性格の持ち主。
コーヒーを入れてくださったのですが、会話の内容といえば、どちらかというと雑談の方が多かったかも?(笑
話をしていて、とても楽しかったです。

大堀相馬焼京月窯

それでは、せっかくなのでギャラリー内を少し紹介させてもらいます。
引き戸を開いて玄関に入ると、まず目に飛び込んでくるのが沢山の器たち。
玄関からして、かなり広いです。
一般的な窯元兼ギャラリーだと、このスペースで終わりのところも多いのですが、この隣にメインの部屋があったりします。

大堀相馬焼京月窯

それがこちらの部屋、20畳ぐらいはありそうな感じ。
写真に収まりきれなかったのですが、全体の半分しか写っていません。
右の棚と同じものが、反対側にもあります。
浪江の店舗から持って来た、かなり大きな棚なのですが、部屋自体大きいので余裕を持って入っていました。
古民家って、天井が高くて居心地が良いですね。
さすがに大型バスで来るような団体の受け入れは難しいかもしれませんが、婦人会のような小型バスで移動している団体なら問題はなさそう。
県道(フルーツライン)から入ってすぐですし、大型バスが迂回できるぐらい駐車場は広かった気がします。
果物狩りと一緒に立ち寄るのも、良いかもしれませんね!

大堀相馬焼京月窯(湯呑み)

さて、大堀相馬焼といえば、勇壮な走り駒の絵柄に青ひびと二重構造が定番ですが、それに加えて女性らしさがある作風が京月窯の特徴。
先ずは、定番の湯呑みですが、他の窯元に比べて遊び心があるように見受けられます。
全体の絵柄がふわっとした雰囲気で、これなら若い女性でも違和感なく使えそう。
ただ、本人はあまり定番ものを作るのは好きじゃないみたいですよ。

大堀相馬焼京月窯(コーヒーカップ)

どちらかというと、こんな感じのものが好きらしい・・・
「伝統とアートの融合」、ちょっとセレブな雰囲気の器。
写真だとあまり色が良く出ていませんが、実物は本当に綺麗です。
他には、ピンクがかった色合いのものもありました。
ともかく釉薬の色や器の種類が豊富で、何時間見ていても飽きません。

大堀相馬焼京月窯コーヒーカップ

人気はこちらのコーヒーカップのセット。
合わせという手法を使っているようですが、ちょっと花を連想させるような、女性にはとくにお薦めの一品です☆
同じタイプのもので、フリーカップや湯呑みも用意してありました。
陶製のランプシェードも、灯りが柔らかく反射して、とても雰囲気が良かったですよ。
伝統を守りながら、その技術を新しい発想に転換するやり方も、女性陶工ならではのものですよね。
「普段使い」というのが、こちらの窯元のモットーなのですが、普段使いするにはもったいなぐらい素敵な器が沢山置いてありました。
彼女の頭の中というのは、きっとアイデアの引き出しが多いのかもしれません。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀各種)

わたくし、窯元を訪れた際には、抹茶椀を旅の思い出に買って帰るのですが、こちらにも沢山置いてありました。
というか、思った以上に茶道の道具が色々と・・・
実は京子さん、表千家か裏千家か聞くのを忘れましたが、お茶をやられているそうです。
本人がやられているということもあり、こちらで作られている抹茶椀は、すべて専用の土を使っているとのこと。
以前、お茶の先生から「京子さん、このお茶碗ちょっと土が硬いね」と言われたのがきっかけだそう。
そのレベルになると、抹茶を点てている時に、それが使いやすい茶碗なのか、使いづらい茶碗なのか、すぐに分かるらしいですよ。

よく陶芸家の方々は、土に拘る、釉薬に拘るといいますが、世の名品と呼ばれている茶碗の多くは、茶人からすると使いづらい部類に入るよう。
使う側のことを考えて、あえて内向きな拘りは捨てる。
抹茶椀専用の土を使っている窯元は、おそらく他には無いと思います。
自身でお茶をやられているからこそできる技、必ず茶筅通しをして使い心地に納得しなければ、いくら焼き上がりが良くても抹茶椀としては出さない。
こちらの抹茶椀は、本当の意味での名品と呼べるのではないでしょうか?

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

お茶をやられていて、なおかつ女性が手掛けているということもあり、軽くて自然と手に収まりやすい。
ぜひ、茶道をされている方々にも一度お越しいただいて、手にとって確かめてもらいたいです。
隣に広めの和室がありそうなので、もしかしたら簡単なお茶会ぐらいならできるかもしれませんね。
因みに、飯坂温泉にある旧堀切邸や福島市内の御倉邸では、時折お茶会なども開かれているようです。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

ということで、今回は二つ気になった茶碗があり、どちらにするか正直すごく迷いました。
まず一つ目は、大堀相馬焼の伝統を受け継ぐ典型的なスタイルのもの。
釉薬の深さや貫入の具合、焼き上がりがとても良かった!
それと、寄り添うように描かれた二頭の走り駒の姿。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

走り駒というのは、大堀相馬焼の代名詞でもあるのですが、京子さんの描く走り駒は、女性ならではの繊細で優しいタッチ。
例えると、春風の中を走る夫婦馬のようにも見えます。
まるで今にも動き出しそうな・・・そんな錯覚さえ覚えてしまうほど空気感のある素晴らしいものでした。
ほら、見てください。馬が笑顔でしょ!
これにしようかな?と、ほぼ決まりかけていたその矢先、さらに凄いものを見つけてしまいました。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

それがこちらの抹茶椀、絶妙な釉薬の流れ具合、まさに窯が織り成す芸術、何よりも風景がすばらしい♪
軽くて、手に収まりが良く、それでいて鑑賞用としても味わいがある。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

細かいひびの入り方も、また茶碗としての深みが増して良いですよね。
土もかなり厳選して、適度に調合したものを使っているみたいです。
こちらの器は、京子さんらしい、逸品と言えましょう。

大堀相馬焼京月窯(抹茶椀)

せっかくの名品、会津産の桐箱を一緒に購入して帰ることにしました。
会津といえば、桐細工が有名ですからね。

満開のソメイヨシノ

玄関先にある桜並木も春爛漫、見事に満開の花を咲かせていました。
あの原発事故から避難を余儀なくされ、新たな地で見事に花を咲かせた京子さん。
今日は、本当に来て良かったです。
また来年、この桜が満開になる頃に必ず伺わせてもらいますね。(^_^)
それまで、どうかお元気で!

PS:
そういえば、雑談の中で浪江町の自宅に置いて来てしまったおろし金と同じものを探しているということでしたが、あの後こちらでも色々調べてみました。
京子さんが探していたおろし金というのは、埼玉県和光市にある「大矢製作所」という会社で作られているものではないでしょうか?
その会社の銅製おろし金は、職人さんが一つ一つ手作業で刃を起こしているので、おろしがスムーズで水気が出ずに美味しく仕上がるということでした。
会社名で検索すれば、すぐに見つかると思います。



■ 大堀相馬焼「近徳京月窯」
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住所:福島市飯坂町平野字道南4
電話:024-542-2818
営業時間:9時~18時
定休日:不定休
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※マイカーの場合はナビの住所入力、スマホの場合は地図案内等を利用すると便利



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