高気密を強く意識している施主の方ならば、C値だけでなく隙間特性値(n値)についても聞いたことがあるのではないかと思います。


1に近いと多数の小さい穴が開いており、2に近いと少数の大きな穴が開いているという、あれです。
2に近いと大きな穴が開いているのですから、n値は中間気密測定時の手直しの目安となり、逆に1に近いと手直しの必要性が少なく喜ばしいということなのですが、この意味がやや誤解されている気がするので、少し解説したいと思います。


代表的な誤解は、「n値が低いと漏気が少なくなる」というものです。


実際の測定結果をグラフにして見てみましょう。

グラフでは、n値が大きいほうが逆に気流量Qは小さくなっています。
実は、C値と床面積が等しい高気密の家屋を比較すると、同じ気圧差をかけてもn値が大きいほうが通常気流量が少なくなります。(気圧差が十分にある場合)

 

 

では、

なぜn値が大きいほうが気流量が少なくなるのでしょう?
そもそもn値とはいったい何でしょう?

簡単に解説したいと思います。

水でも空気でも、流れには整然と列をなして流れる「層流」と、入り乱れ渦を巻いて流れる「乱流」があります。流れの速さがゆっくり、また通路が狭いと層流になりやすく、その逆だと乱流になりやすくなります。
層流はゆっくり整然と周囲との軋轢なく進んでいくのに対し、乱流は急いでお互いや壁にぶつかりながら流れていくイメージで、隙間を通る際の抵抗は、乱流のほうが大きくなります。

より正確に言えば、層流の場合は、気流量Qは気圧差Δpに比例し、乱流の場合は気流量Qは気圧差Δpの平方根に比例することがわかっています。式で表すと以下のとおりで、これが隙間特性値nが1や2であるということの意味です。

n値が2のとき、漏気を発生させる気圧差Δpが室内外に生じると、気流量Qは√Δpに比例しますので、n値が小さいときに比べ、それほど気流量は増えません。




つまり、よく隙間特性値nは1に近い方がいいといわれますが、それは前述のように修正可能な大きな隙間がもうあまりないから、あるいは生物が侵入したり気流が集中して一カ所に多量の結露を発生させるような隙間があまりないだろうからいいのであって、すき間風の量という面では別に喜ばしくはない数値であります。

ということで、n値が低いから常に喜ばしいとは限らないし、C値(やαA値)だけで実際の漏気量が決まるのでもないというお話でした。

 

 

【参考資料】