みどり・オルトナーがロベルト・ホルを語る【前編】 | 住友生命いずみホールのブログ

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桜が満開ですねさくらさくら
いずみホールの事務所からは大阪城の桜が綺麗に見えます。
仕事の合間に窓の外を眺めてフッと一息、ひそかな花見を楽しんでいる企画担当です桜


さて、来月にはウィーンから「リートの巨人」と言われるバスバリトンのロベルト・ホルが来日し、いずみホールに初めて登場します。
ゲーテの詩にシューベルトやシューマンが曲を付けた歌曲を前半に、ブラームス最後の歌曲集である《四つの厳粛な歌》を後半のメインにお贈りします。





公演に先立ちまして、共演のピアニストのみどり・オルトナーにインタビューしてきましたマイク
ホル氏の歌声の魅力や演奏活動、今回のプログラムや、ちょっぴりプライベートなことまで、フランクにお答えくださいました。
(オルトナーさんのチャーミングなお人柄もご覧いただきたいので、お話いただいたそのままで掲載します♪)
長いインタビューになってしまったので、前後編でお届けします。





スタッフ(以降桜):今回はおふたりでは初となる大阪でのリサイタルです。まずは今のお気持ちをお聞かせください。

オルトナー(以降mum1):ホルさんの芸術を東京と大阪でご紹介できること、大変嬉しく思います。ホルさんは、90年代に一度大阪で歌ってらっしゃいますが、それはワーグナーのオペラのアリア抜粋のコンサートだったそうで、リートの演奏は初めてです。
私にとっては実は、大阪はけっこう懐かしい街なのです。小学校4年生から6年生の秋まで芦屋市に住んでおりました。その時期に野球に夢中になったので、今でも忠実な阪神タイガースのファンなのです(笑)
ですので、今回はいろいろな意味で楽しみです。


桜オルトナーさんは、ホルさんと日本のみならず、ヨーロッパでも幾度となく共演されていますが、初共演はどのようなものだったのでしょうか?

mum1:ホルさんとの共演ですか?信じられないこと、夢のようなことが実現したのも、実は亡き主人ロマン・オルトナーの手引きによるものなんです。ロマンは、1990年に52歳で亡くなりましたが、その10年忌のメモリアル・コンサートがウィーンのシューベルト教会で企画された時、ホルさんも出演を承諾してくれ、伴奏を私に、とおっしゃって下さったのです。
ホルさんと、シューベルトと難解な現代曲の2つの歌曲を美しいシューベルト教会で演奏したことをよく覚えています。


桜世界最高のハンス・ザックス歌いとも称せられ、バイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場をはじめとする歌劇場でオペラ歌手としても活躍されるホルさんですが、活動の中心はリート・リサイタルといえるのですね?

mum1:ホルさんはオペラへの多くの出演依頼があったにも関わらず、オペラ出演をほぼ拒否して、リート演奏にその音楽人生を捧げてきた、真の芸術家です。
リートのリサイタル、つまり何か思想的、詩的なテーマに貫かれた、歌曲だけのプログラムを一晩歌う、というのは、たいていのオペラの主役を歌うよりずっと責任が高いものです。ホルさんは、そのようなプログラムを何十種類も持っていて、そのレパートリーの豊富さと内容の濃さ、深さだけでも、他に例を見ないほどです。「リートの巨人」と称されるのは、彼のゆったりとした大きな体のためだけでなく、そのレパートリーの大きさと深さ、驚くべき知識の量、フレーズの超人的な大きさ、そしてもちろん、豊かな声量、これら全てが彼を一種の超人的な存在としているのですね。
私だけでなく、彼を共演者として好む世界の重要音楽家たち、指揮者のティーレマンやピアニストのA.シフ、D.バレンボイムなども、きっと同じことを言うと思います。
2013年はワーグナーの記念の年でしたから、けっこう沢山オペラを歌っていましたが、今後はできる限りオペラ出演をやめて、オラトリオと、何より歌曲演奏に集中していく意向のようですよ。


桜リート歌手としてのホルさんの魅力は何だと思われますか?

mum1:これはなかなかパッとわかる、というものではないかと思いますが・・・一度彼の作るリートの芸術の深さを理解すると、ほとんど衝撃的な感動を覚えます。
私は、25歳のときにウィーンに渡り、リートの聖地ウィーンで大絶賛されていたホルさんの演奏は、たびたび聴く機会がありました。
そしてある時、シューベルトの小さな歌曲「愛と美がここにいたことを・・・」D775(F.リュッケルト)を聴いていた時、たった2分強の短い歌ですが、この間に私の人生が変わってしまったのです。ホルさんは全く技術を感じさせることなく、幾重にも変化するピアニシモと、あらゆる可能なレガートで、この短い歌を永遠の世界にひきのばしてくれました。
まさに時間が止まり、私の心臓も鼓動を忘れ、詩と音楽の定義はとり外され、音楽からは小節線が消え「詩」というものが音楽を通じて絵になることをホルさんの演奏で初めて体験したのでした。
ホルさんの演奏は、図抜けてゆっくりしたテンポなのが、まず誰にでもわかる特徴ですが、この「ひきのばされた世界」はのんびりしたものでは全くなく、驚くべき緻密さで、百分の一秒すら長く感じるほどです。これが、私の聴衆として感銘を受けた最初の体験で、まさかこのような大演奏家と共演を許されるなど、当時は夢にも想像していませんでした。



実際に心が震えたご様子が存分に伝わったお話ですね音譜
さて、インタビュー後編では、今回のプログラムについてお話をしていただきます。


公演詳細についてはこちら
ロベルト・ホル
2015年5月21日(木)19:00開演
出演:ロベルト・ホル(バス・バリトン)
    みどり・オルトナー(ピアノ)
料金:一般=¥5,000  学生=¥2,500
    いずみホールフレンズ会員特別価格=¥3,000
※インターネットからもご購入いただけます→インターネット申し込み