どうしよう?


悠馬が肉体を手放した日

8/26


悠馬が追突された時間に


あの場所に

行きたい

行ってあげたい

行って悠馬を

迎えに行ってあげたい


してあげたい?


してあげたいって?

なんだか

違和感が


自分で

言っていて

自分に違和感が


調べてみたら


あげたい

は、

敬意を示す言葉が

もともとの語源みたい


でも

なんとなく

頼まれてもないのに

自分本位で

やってあげたい

みたいな 

感じが

自分の中で発生


悠馬は

自由に

バイクで

駆け回ってるんだよ


何にも縛られずに

気持ち良く

好きなバイクで

此方も

彼方も関係なく

大空を

駆け回ってるんじゃん


追突された場所は

みちのく路のツーリングの

帰り道


別に

そこに

じーっと

留まっているわけがないじゃん


帰り道の高速だよ


そう


そうなんだよ


そうなんだけれど


やはり私の中に


追突されたんだ

気の毒だ

辛かったろう

母さんが

迎えに行ってあげなきゃ

っていう

思いが

あるんだよ


あるよね

ソリャ



まだまだ

沢山いろんなこと

やりたかっただろうに


なのに

いきなり追突されて

生命

奪われてしまったっていう

気持ちが

私の中にあるの


だから

あの日あの時間に

悠馬を私が

迎えに行ってあげなきゃって

思いが

拭えないの


夫も

チビの知陽(トモアキ)も


兄ちゃんは

好きなバイクで

逝けたから

何も悔いはないよって


だから

あそこに

縛られて無いよって言う


兄ちゃんは

可哀想なんかじゃあない


兄ちゃんは

生ききったよって

2人は言う


現実


知陽は受験生で

塾が夏期講習で

模試が28日だから

今週は

追い込みで


知陽を1人置いて

花巻まで片道8時間

かけて行けない


「僕が知陽の食事や

弁当作って世話するから

君は花巻に行っておいで」と

神さま夫は

言ってくれてる


夫だって

毎日

太田胃酸を

こっそり飲んでるけど


僕は平気さ

装っている


けど

マルっと

お見通しだよ



知陽に

PTSDが出ないように


知陽の前では

絶対に

明るく元気にしている

母さんを演じようと

この一年

心掛けてきた


夫は教師だから


子どもへの

必要な配慮は

やはり

すごいなと思う


まあ、


「こんな汚い字を書いて

どうするんだぁ」って

短気で

すぐにカッカして

知陽に怒鳴ってるけれど


丁寧に色々な事を

して欲しいって

父さんはね

思ってるんだよ

知陽


生徒へ接するように

自分の子どもに冷静に

接するなんて無理!って

いつも父さん

私に言ってるけどね

下町育ちだから父さん




悠馬が危篤で


でも


どうしても

留守番をしている知陽と

逢わせたくて


片道8時間かけて

悠馬を置いて

東北道、

車で自宅に向かっていた時


もうすぐ自宅という

アクアラインの上になった時に

夫が私に


「一つ君に頼みがある。

今から僕たちは

悠馬の危篤を頭から離して

知陽の事を考えて、

帰宅したら

知陽に悟られないように

普段どおり

明るく楽しい

夕飯の時間を過ごす


知陽にPTSDを作らない為に

悠馬も、

それを望んでいるはずだから


厳しい注文だとわかっている

だけど頼む


悠馬の危篤を頭から離して

知陽の為に

手作りの温かい夕飯を作り

3人でワイワイしながら食べるぞ」


夫は、私に

命令など一度もした事がない


その夫が私に言った言葉だった


私は涙をふいて

ミラーで笑顔の練習をした


帰宅して


兄ちゃんは骨折だけど

顎も怪我したから

電話に出られないと

知陽に説明した


夕飯の時

知陽が

「なんか父さん母さん

ハイテンションじゃない?

運転で疲れてるから?」

と私達に聴いてきた


テンションを

無理やり上げたから

不自然な明るさだったのだろうね


仮眠したら

兄ちゃんの所に行くよと

知陽に伝えた


私が洗面所で

私達の下着を

カバンに入れていると

後ろから知陽が

「母さん。

もし母さん父さんが老後で

運転出来なくなった時に

兄ちゃんが事故ったら、

僕が何日も有給取れるような

職業につくから、

兄ちゃんの世話は

僕がするから安心してよ」

と言ってくれた


生きづらさを抱えながら

だから、あまり、

逢いにも来てくれないけど

バイクに乗る事が

大好きな悠馬を心

から尊重している知陽だから



私は

嗚咽をこらえるのが大変だった



そして

それから

すぐに

悠馬が私の脳内に

話してきた

「母さん、

もうそろそろ

行ってもいいかな?俺」


私は夫にすぐ、

そのメッセージを伝えた


夫は即答で

「もちろんさ。

悠馬が一番したい通りに

すれば良いと返事してやってよ」

と私に夫は言った


私が

「もちろんだよ。

悠馬が一番したいように

して良いよ」と

念?言葉?みたいなのを

悠馬を思って送ったら、

その瞬間に

病院から電話がかかって

すぐ来てください

言われた


悠馬に通じたんだ


その時

私は


スマホが鳴った時

怖くなってしまい

スマホを無意識に床に投げてしまった



悠馬は自分で

肉体を手放す事を

決めたんだった


弟に逢いたいって

強く私の手を握って

反応してくれたけど

でも、

もう逝って良いかな?と

聴いてきたんだ

本当に悠馬らしいなと思う



そして、

私の返事に安堵して

肉体を手放したんだ


そうだよ


悠馬は

可哀想そうなんかじゃあ無い


追突されたけれど


自分の意思で

逝く事を決めたんだ


ちゃんと私に

聴いてくれたんだ


だから

その私が

悠馬を窮屈にさせては

いけないよ


どれくらい

生きたかじゃあない


どう生きたかだよ


正義の味方クゥガの

ステッカーを貼ってた悠馬だよ


なんで、みんな

誰が嫌だとか

そんな

人の事ばかり言って

大切な時間を使うのか


この世で

もっと楽しくなる話しをしようよ

って

いつも言ってた悠馬だよ


俺を生んだ母さんだろ?

俺は可哀想なんかじゃないぞ

そうだろ?母さん


そうだよね


あそこに

あの場所に

あなたは

居ないよね


高速の真ん中に

ずっと暑い中

じっとなんか

してないよね




じゃあ

どこにいけば

逢えるの?

集合場所を教えてよ


CB650Rに母さんを乗せてよ


悠馬の広い背中に

抱きついて走らせてよ



美味しいね悠馬

好きでしょう?

チーズケーキもガトーショコラも



昨日ね

送っていただいたんだよ

悠馬にって


悠馬の大好物ばかりだもんね



とっても丁寧な作り方の

スイーツなのだよ


作る方のお人柄が

そのまま形になった

美味しい

あたたかな作品だよ


悠馬が昨日食べた後で

母さん父さん知陽で

奪い合いで

食べているよ


知陽なんて

「マロ美味い

メロ美味い😋」って

食べているよ


沢山の人の

優しい気持ちに包まれて

母さんは

今日も生きてるよ


コロナ禍なのに

わざわざ遠方まで

来なくて良い



悠馬は

そう言っているよね


今日も

テーブルの上は

ティシュの山だ


悠馬が困るような事は

しないように

しなきゃだよね?

母さん

泣きすぎて

頭と肩がバキバキだよ


今日は父さんも知陽も

夜まで居ないから

ここで

泣きわめくことにするよ


追突された場所に

悠馬は居ない


そうだよね?悠馬

みんなに

ここで支えられて

私の今日があります


同志のみんな

本当にありがとう