東京では出かけたことがあるが、名古屋で初めて「午前十時の映画祭」
に出かけた。現在は第3回目のセレクト50本ということだが、公開劇場
がミッドランドスクエアの名古屋空港。正直、車で行かないと不便な場所
なのだが、私はJR勝川駅からの運行バスで、料金は往復で600円也。

鑑賞した映画はジョン・スタージェス監督の1960年の西部劇『荒野の
七人』。黒澤明監督の名作『七人の侍』(1954年)を、西部開拓時代の
メキシコに置きかえ、リメイクした作品だ。すでにテレビやDVDで2度は
見ているが、あらためて劇場スクリーンでの映画鑑賞ということに。

午前十時の映画祭

荒野の七人 

舞台になるのはメキシコの山間の村イスカトラン。毎年収穫の時季には
カルベラ(イーライ・ウォラック)が率いる盗賊の一団が、その収穫を掠奪
にやって来る。我慢の限界を越えた村人は、盗賊と戦うことを決意し、代
表ともいうべき3人の農夫が銃を買い付けに、国境のアメリカの町へ。

そこで偶然に見かけるのが、全身黒ずくめのガンマン、クリス(ユル・ブリ
ンナー)。そして、鮮やかな腕前を見せるヴィン(スティーブ・マックィーン)。
農夫たちはクリスに村の窮状を話し、盗賊との戦いに力を貸してくれるよう
頼み込む。その申し出を受けたクリスは、腕の立つガンマンを集めるのだ。

荒野の七人 

やがて「7人」そろったガンマンは、イスカトランの村へやって来る。クリス
とヴィンの他は、クリスの旧友ハリー・ラック(ブラッド・デクスター)、ナイ
フ使いの名人ブリット(ジェームズ・コバーン)、早打ちのリー(ロバート・
ヴォーン)、村の子供から慕われるオライリー(チャールズ・ブロンソン)。
そして、経験の浅い農民出身のガンマン、チコ(ホルスト・ブッフホルツ)。

この7人のガンマンと村人たちは戦いの準備をする中で、友情めいた交
流もあればチコのラブ・ロマンスもある。しかし、村人の裏切りという手ひ
どい「しっぺ返し」もあり、最後はこの村を舞台にしての壮絶な銃撃戦だ。

荒野の七人 
 
40名の盗賊を相手にして生き残ったガンマンは、クリスとヴィン、そして
チコの3人。「本当に勝ったのは農民たちだ」、ストーリーもラストのセリフ
も、実によく黒澤監督の『七人の侍』を追随(模倣?)していると感心する。

で、あえて今回スクリーンで見直して思うのは、この『荒野の七人』は西部
劇の名作とは思いますが(特に音楽は最高!)、映画史に残るほどの作品
とは思えない。やはり真に映画史に残る名作といえるのは、黒澤明監督の
『七人の侍』ということ、です。もちろん尺(時間)の違いはありますが、黒澤
作品の面白さは、前半の侍集めとそのキャラクターの造形に優れている点。

リメイクの名のもとに模倣を許された映画作品の作り手は、少なくともキャ
ラクターの造形には何の苦労もなかったはず。あと、農民も巻き込んでの
戦いは、西部劇の「ガン」よりも時代劇の「刀」や槍を道具にしていた方が似
合うかな。ガンファイトの西部劇は、死の訪れもいきなりだったりするから。

七人の侍七人の侍  『七人の侍』(1954年)


                     

そして、これは今回初めて出かけたミッドランドスクエアシネマの名古屋空港。
名古屋駅前の本家・ミッドランドスクエアよりも多い、12のスクリーン数。でも、
この「映画祭」をNo.12の75席の劇場での上映とは、いかがなものか。

席数の少なさに呆れるというより、スクリーンの小ささに正直ガッカリした。そも
そも「午前十時」からの1回上映で過去の名作を見る、その趣旨ならば、心ある
映画館主であれば、もう少し大きなスクリーンと劇場を用意するはず。年末から
正月には『風と共に去りぬ』『ドクトル・ジバゴ』と、スクリーン未見の上映がある。
何とか見に行こうかなと思っていたが、正直どうでも良くなりました。残念です。