有名な『自由党史』(板垣退助監修)の一節に、「米国桑港に於ける日本人愛国同盟会」と題して、サンフランシスコに於ける在米日本人の自由民権運動を紹介した記述がある。その一文を改めて、本ブログで抜粋紹介することにする。そこでは次のように述べられている。

 「昨(明治)二十年十一月の交、三大事件建白の運動大に地を惓いて起こるや、其波響遠く西半球の海岸に震ひ、米国桑港に在て志を自由主義に向ふせる我邦の青年有志は、復(ま)た故国の安危を座視するに忍びずとなし、中野権六(佐賀)、広田善郎(広島)、石坂公歴(神奈川)、菅原伝(宮城)、松岡達三郎(同左)、中島半三郎(群馬)、中村政通(石川)、粕谷義三(埼玉)、海老原弥三(栃木)、山口熊野(和歌山)、片庭趙作(未詳)、池田政次郎(長野)、福田友作(栃木)、敷津林傑(東京)等25名相会し、茲に在米日本人愛国同盟有志同盟会なる者を組織せり。而して其機関として「新日本」と題する新聞を刊行し、盛んに本国政府の失体を攻撃し、文辞の激烈なる、悉(ことごと)く肝胆を直露して忌む所なく、為めに当路者を悚(しょう)動せしめしこと少からず。政府しばしば其輸入を禁ずるも功を奏せず、益々秘密の底を潜りて四方に伝播し、同志内外相応じて互に気脈を通ぜり」(岩波文庫版347頁)。