配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(いわゆるDV法)において、保護命令という制度が設けられています。
裁判所によって別居している配偶者に一定期間近寄ってはだめだとか、今いる家から一定期間退去を命じられる制度です。
相手方からの申立書を読むと、身に覚えのないことや大げさな記載があり、特段証拠ないことから、「こんなもので、自分の行動が制限されるような命令を裁判所が出すはずがない。」、「これなら自分ひとりでもなんと中あるだろう。」
と考えて自分で対応をして、ふたを開けたら保護命令が認められた等ということが多くあります。
<ポイント1>
保護命令は、万全の対策を立てて対応しなければ、真実がどうであろうと、決定が出てしまう危険があるということを頭に入れておいてください。
<ポイント2>
保護命令に対応するためには、保護命令手続きに精通している(勉強している)弁護士を依頼することが鉄則です。
保護命令の書類が裁判所からきてもなかなか弁護士に依頼しようとしないことには理由があります。
① 自分のプライベートな不徳を他人に知られたくない
② 裁判所から求められた対応をするまでの期間が短くて弁護士を探すことが難しいと考えてしまう。
③ 先に述べた、こんなことでこんな無茶な決定は出ないだろうと考えてしまう。
しかし、私が実際担当した事件で、一度出た保護命令が6カ月間の接近禁止命令だったので、妻側が6カ月後に再度の保護命令を出してもらうために申し立てた事件でした。1度目と2度目で、申立書や妻の陳述書の内容はほとんど変わっていませんでした。私が付かなかった1度目は、保護命令が出ました。万全の対応で臨んだ2度目は、保護命令は出さずに、同じ裁判官が今度は申立人に対して申し立ての取り下げを促して、申立の取り下げがなされました。裁判官は私が代理人に選任されたことに感謝をしていました。
つまり、本来ならば保護命令が出されない事案でも、弁護士が付かなければ保護命令が出てしまうことが現実的に存在するのだということを頭に入れてください。
弁護士が付いただけというよりは、きちんとルールに従って反論したということなのでしょうが、私の印象では言わずもがなの反論に終始していたので、やはり法律家が付くかつかないかこそが最大のポイントだったという印象を受けました。ちなみに、現状のところ、私が最初から相手方代理人として活動した場合に、保護命令が出されたことはありません。担当する事案が要件を満たさなかっただけですが、誰も担当をしなければ、それでも保護命令が出されてかもしれないということがポイントです。
<ポイント3>
万全の対策を立てる。
先ほども述べましたが、裁判所から書類が行われてからてつ卯木が開始されるまでの期間はとても短いです。
例えば、金曜日に書類が郵送され、翌週火曜日までに反論書を提出、翌水曜日に裁判所に出頭して事情を聞かれるというような短さです。
私はこの実務運用には、防御権を十分考慮していない不当な側面があるように感じています。
それでも文句を言っていても命令は出てしまいますから、万全の対策をするに越したことはありません。
短期間に、仕事を初めとしてなにかも投げ捨ててでも、弁護士の指示の通りにたっぷりと準備をすることです。最初の審尋の時までに反論の主張立証をそろえるということが必要だと思います。最初の審尋で薄い準備だけだと危険です。東京高等裁判所平成14年3月29日決定(判例タイムズ1141号267頁)の決定を引用することも必須だと思います。また、保全係で担当する事案なので、疎明ではなく証明が必要だということのダメ押しもしておいた方が良いと思います。
保護命令の要件を満たしていないことの十分な反論と証拠の準備です。特に、「身体生命に対する重大な危険」が存在していることの証明されていないことを馬鹿丁寧に、愚直に主張立証する必要があります。本当は身体生命に対する重大な危険の存在が必要なのに、裁判所がこれを軽視する傾向にあるというのが実感です。
日ごろから仲良く生活していることを証明することも必要です。旅行をしたり、外食をしたり、もろもろの家族行事をできれば写真入りで陳述書を作成するのは必須だと思います。
できる限りの資料を集めるので、先延ばしできることはすべて先延ばしして保護命令への対応にすべての時間を使うべきです。いざ保護命令が出てしまうと、ご自分のメンタルにも強烈な悪影響が出るし、お子さんがいる場合、お子さんと交流ができにくくなる致命的な原因にもなります。その後に待っている離婚手続きでも圧倒的に不利になってしまいます。嘘の内容で保護命令が出てしまうと必ず後悔します。
<ポイント4>
「申立人に申し立てを取り下げる口実を作ってあげる。」
ということです。
先ず相手方陳述書でタネをまいておきます。相手方の取り下げ口実なるようなことを陳述書に書いておくのです。
当面別居を承認することを前提として
・申立人が同居していた家から自分や子どもの荷物を引き上げることについて
同意して、自分がいない日を教えて家に立ち寄らないことを約束する。
・子どもを連れ去ることをしないと約束する。
・当事者同士で連絡をしようとしない
冷静に考えれば、してもしなくてもその通りになってしまう現状追認にすぎず、こちらが新たな負担をすることは何もないので、こちらはいくらでも約束できるわけです。
保護命令申立てをされてからの復縁は多くはありませんがあります。
少なくとも、家族再生を目指す場合は取り下げを誘引するということは必須だと思います。逆に言えば、保護命令は戦わなければなりません。保護命令手続きの中で戦わないというのは、この申立取り下げを承認するくらいかもしれません。