南半球からこんばんはー
ブリッジングコース、実習後半編です。
そろそろ最終アセスメントを控えていた頃です。
ある日、ちょうどお昼の12時に利用者さんが転倒しました。
リクライニングの椅子にいつも座っている方なのですが、自分で歩こうとしたようで、かなり大きな音と共に転倒されました。
あまりの痛みで動けないのを見て、すぐに救急車を呼んで移送の準備をしました。
救急車が来るまでの間、家族がちょうど面会に来たのでみんなで話をしながら待ちました。
この利用者さんはいつも笑顔の絶えない方で、毎日わたしの癒しでした。
「たまに顔を見せに来てくれるだけでハッピーになるよ。いつもありがとうもっと来てほしいなぁ。」
と言ってくれました。
5週間ほど、ストレスフルな実習の中で、彼の顔を見にいくのが日々の楽しみでした
救急車を待ちながら、普段の彼の話を家族としたり。
お孫さんに手を振って、「おじいちゃん転んじゃったよ。せっかく来てくれたのにごめんなぁ」と頭をかいていました。
毎日手料理をもって面会に来ている奥さんも、
「天気がいいからみんなでごはんを食べようと思っていたのに残念だわ。もう少し早く来ればよかった。どうして一人で歩こうとしたのかしら!」
そんな話をしながら、彼もニコニコと家族を眺めていました。
救急車を送って2日後、彼が病院で亡くなったと連絡を受けました。
詳細は伏せますが、連絡を受けて、とてもショックでした。
「防げた事故」だったからです。
ちょうど12時ころはAINが休憩やランチの準備なのか、ほぼ病棟におらず。その利用者さんを見るはずの人は誰もいなかった。
椅子の種類やバンドなど、転倒予防をしっかりしていれば防げました。
わたしの担当フロアではなかったので、その日にできることはなかったのですが、それでも。
介護施設のレベルはまちまちですが、ここの施設の転倒予防はとても軽視されていると感じました。
防げたのに、悔しい。
そう思ったのはAINひとりとわたしだけでした。
ほかのスタッフは「Unfortunate accident」と言ったり。
あるRNは「もう歳で、ほぼ動けなかったし、痛みもあったし、楽になれてよかったよね。」なんて言いました。
毎日しあわせだった彼、まだまだ長生きしたかったのに、家族も望んでいたのに、こんな終わり方ってないです。
毎日会いに来ていた元気な奥さんは、憔悴しきっていました。
オーストラリアの介護施設にはたくさんの問題があります。
「防げるはずの死」が急激に増えているというABCの記事です。1位はやはり転倒です。
The number of premature deaths in nursing homes in this time increased from 1.2 per 1,000 aged care facility submissions in 2001-02, to 5.3 per 1,000 admissions in 2011-12.
数字だけがすべてではないですが、スタッフ不足によるケア度の低下、それに伴う転倒や窒息、虐待など、よくニュースになっています。
記事にもありますが、脆弱な立場にいる高齢者が、彼らの状況や満足度について話す場がないんですね。
認知症のある方も多く、なおさら問題は大きいです。
日本にも同様の問題はあると思いますが、わたしが目の当たりにしたのはこれが初めてでした。
We owe older people better life.
そのとおりだと思います。
自分がどんなRNになりたいか、悪い例を見たおかげで しっかり考えることができました。
周りに流されて、ルーチンの仕事をこなすだけではなく、患者さんのことを第一に考えたい。
そのために、強くなろう。
そう決心した実習でした。
Fumi
庭に芽を出した、なにかしらのお花です🌱
冬だけど、寒さに負けずにムクムク育っています。