2月20日(火)晴 「ひ」=『ピートのスケートレース』
小平菜緒選手はオランダでスケートの修業をした。国中にめぐらされた運河が凍る冬、オランダの人々はスケートに興じるそうだ。平昌オリンピックの獲得メダル数では日本は10個(金2・銀5・銅3=2/19現在)だが、オランダは13個(6・5・2)の3位だ。まあ、こういう国別獲得数の表は好きではないが…。
1941年12月。オランダはナチス・ドイツに占領されて厳しい統制下に置かれていた。10歳になるぼく・ピートはスケートに夢中だった。父の仕事はスケートづくりだが、連合軍の兵士となって戦っていた。ぼくのあこがれは、北部のフリースランド州の11の町を結んで200㎞を1日で走るレース「エルフステーデントホト」に参加することだ(この「夢」が成功に導いてくれる)。
1942年1月親しい隣人のウィンケルマン家がドイツ兵に襲われ、父親が連行されていった。秘かにイギリスと無線で連絡を取っていたことが分かったのだ。そこで、ぼくの一つ年下のヨハンナと弟のヨープをベルギーのブリュッヘにいるおばさんに預けることにした。その危険で重要な役をぼくがすることになった。
「じいちゃんは、両手をぼくの肩にのせ、ぼくの瞳をのぞきこんだ。」
「ピートは今日、最高のスケーターになる。父さんのように、どこにいても勇気をもて! ……。おまえはこれから、ブリュッヘへまっしぐらにすべる。暗くなる前につけるよう、今から太陽と競争だ。ありったけの速さですべるんだ。ただし、遊んでいるふりをすること…」
母さんもはげましてくれた。ぼくは二人を迎えに行き、兄弟として「楽しく」すべっていった。しかし、途中、ドイツ兵の検問に遭う。ドイツ兵にぼくは自慢げに「エルフステーデントホトレースに出るために学校のレポートを書くんです」と話すと、ドイツ兵はそれを知っていて、ぼくたちを放してくれた。ドイツ占領下でもオランダ人の冬の喜びを奪うことはできなかったのだ。3人は疲れたヨープを励ましながら、とうとう小母さんの家にたどりつく。そして、翌朝、無事に一人帰って来る。
勇気ある少年の物語だ。中・高学年での読み聞かせに最高。表紙はオランダの国旗になっている。帯の言葉がいい。緊張の中で役割を果たしていく子どもたちや家族、そして冬の風景がすばらしい。このシーズンに早速持ち込んでください。
ルイーズ・ボーデン作、ニキ・ダリー絵、ふなとよし子訳(福音館2011年)1500円