高校生の就職活動のルールとなってきた「一人一社制」。空前の売り手市場にあって、見直しの議論が進んでいます。
高校生の就職活動における「一人一社制」とは、応募受付開始から一定期間、生徒が同時に応募できる企業を1社に制限するという就職慣行です。大学生のように複数社にエントリーして内定を競う「併願」はできず、選考で不採用が確定した後に初めて次の企業へ応募できる仕組みとなっています。都道府県ごとに詳細なルールは異なりますが、多くは「9月中は1人1社のみ、10月(または11月)以降に複数応募を解禁する」となっています。
この制度は就活生にとって、競争率が下がり、例年98%前後の高内定率を維持できる点や、学校が試験手続きや企業連絡を代行するため負担が少ない点がメリットです。一方で、他社との比較検討が難しく、求人票の文字情報だけで就職先を決めざるを得ないデメリットも。入社後3年以内に約4割が退職するという、「早期離職率の高さ」につながっているとの指摘もあるところです。
一方、企業側としては、「内定=入社」の単願応募であるため内定辞退がほとんどないこと、採用のコストや手間を大幅に削減できることがメリットとして挙げられます。一方で、9月のわずか1か月間で一気に選考を行う必要があり、自社にマッチする人材かどうかを見極める時間が不足しがちな点はデメリットです。
千葉県が実施した意識調査によると、企業側の過半数が複数応募制への移行を望む一方、学校側は9割近くが一人一社制の維持を求めており、意見は分かれています。当事者である生徒側は約6割が一人一社制を望んでいるものの、その割合は近年減少傾向にあるところです。
こうした中、2020年に国の有識者会議が各都道府県に見直しを要請したことで、一人一社制は転換期を迎えています。
従来から「一人三社制」を採用していた秋田県や沖縄県に加え、2021年度以降は和歌山県、大阪府、茨城県なども制度を改定し、今年度時点で全国7府県が「一人複数社制」を導入しています。一方、今年4月の高等学校就職問題検討会議にて、運用ルールが議論された千葉県ですが、一人一社制の制度変更には至ってはいません。しかし、「今年度については暫定的に一人一社制を継続する」とし、今後の見直しに含みを持たせる形ともなっています。
生徒側の負担を考えつつも、選択の幅を確保する必要があるところで、複数社への応募を解禁するべき時期に来ています。
