2017年北海道釣行記録 後編(藤田広一郎) | ivylineのブログ

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◆藤田広一郎◆

 

10月7日朝4時

 
 前日の秘境釣行の影響で自分達は深刻な筋肉痛に見舞われていた。金縛りかと思うほどに身体の自由がきかず、お腹もくだして4時に目覚めた時に「うん、無理だね」とうなずき合い、ふたたび眠りについたのだった。
周りもだんだんと騒がしくなり、重い身体を起こして目覚めると既に7時を回っていた。のそ〜っと歩きセイコーマートで買ったしじみ汁を身体に染み込ませながらグダ〜っとGoogleマップで釣り場を探した。
 釣行3日目、身体はキツイがせっかく北海道に来たからには釣りに行きたいのである。何ヶ所か候補は見つかったが、相方のハムストリングがキマッテいたため、あまり歩かないダム湖に向かうことにした。
夢は大きくITO狙いで車を南富良野町に向けた。
 
 
高ウェイトのジグやスプーンをルアーケースに入れ替え、ミノーも65mmから17cmまで持てるだけ詰め込んだ。なにせITOは何で釣れるのか自分達には分からない。いったい普段何を食べているのか?どんな所に付くのか?どんなアクションか良いのか?分からない事だらけであった。自分達はなるべく対応できるようにポケットをパンパンにするしか方法が無かったのである。
 この旅で最終的にはITOを釣る事になるわけだが「自分達は情報が無い中釣った」「周りが釣れてない中釣った」「これでしか釣れない1匹だった」などと言う為の言い回しではない。「知らない土地」で仲間と、あーでもねー、こーでもねー、と話しながらルアーやポイントを選んでいき、ターゲットの魚に出会うまでのプロセス、その「楽しさ」を伝えるために書きたいのだ。上手く書ける自信がないので先に補足しておく(笑)
 
話は戻るが、ルアーケースをパンパンにしながら自分達は湖畔に降り立った。身体は言う事を聞かず、自分達は立ちやすい場所にズシーンっと陣取った。相方はスプーン、自分はジグを投げて魚を探したが、さっぱり反応がなかった。バイブレーション、ミノー、スピナーまで投げたが当たりすらない(笑)当たりが無いとボトムを探りたくなるのは釣り人の性で、そのお陰でずいぶんなペースでルアーが無くなって逝った(╥_╥)
 すっかり日も登り、湖畔の霧は晴れ、メンタルも限界に近づき、そろそろ昼飯でもと思っていた時、自分が投げたジグに異変が起きたのだった。
ウェイトを下げて15gのフラット系ジグで底をネチネチ探っていたのだか、ふとよそ見をしながらテンションフォールをした瞬間に遠くでモゾっときたのだった・・・
5才から始めた釣り、20年を超えると身体は僅かな違和感も感知するようになる。ましてやITOかもしれないという期待。もう、電撃フル合わせである。
得体の知れない何かが竿の先でグングン動いている。相方はジィ〜っというドラグ音を聞きつけて駆け寄ってきた。
自分「なんだべ?デカいぞ」
相方「底?」
自分「んだ」 
相方「カープじゃね?」
自分「頭振ってるぞ」
 
・・・・・・
 
 
相方「うわ、鬼だ(笑)」
自分「んだな(笑)」
モワ〜と上がってきた魚体は正にITOであった。念願の魚がついに自分のルアーを食ってくれたのだ。魚がハッキリと見えた瞬間、一気にブワーっと鳥肌が立った。
 
が……しかしだ。(笑)
 
水面に上がってきたITOは最後の力を振り絞って急に暴れだした。自分はITOが掛かったという事態に興奮と緊張で判断力が鈍っていた。そして自身の土壇場での決定力の無さを忘れていた(笑)足場より2mくらい先の水中に岩盤が張り出してるのを見落としていたのである。急に深みに向かってフルトルクで走り出したITOのパワーにSTELLA3000HGのドラグはしっかり反応してラインを出してくれた(╥_╥)
そしてフンッっというラインブレイクの感触を残してITOは深みへと消えていったのだった...
 
突然の出会いは突然の別れ
向こうから告白しといて「好きな人ができたの・・・」と言われフラれた時と同じ気分だった。
 その日、道東自動車道を東に向かう道中で頭の中をグルグルグルグルとITOが泳いでいた・・・(╥_╥)
ジンギスカンからのミスタードーナツ。
ヤケ食いである。
 
10月8日朝4時
 
自分達は日本で最初のラムサール条約登録湿地になった釧路湿原に立っていた。釧路湿原国立公園特別保護地区に入らないよう迂回しながら湿原河川を釣り歩いた。
 
 
 
 
 
 
 
自分達が入った釧路川の支流は川幅がだいたい2m、広い所でもせいぜい3mあるかないかの規模の河川だった。上流に車を止め、ポイントまで1時程歩きそこから5km程釣り上がるようなルートを選んだ。
ポイントに着くとスグに魚が反応してくれた。
30cm前後の可愛いアメマスである。川は独特の黒濁りのような水質で、スプーンでボトム付近を流すのが良く効く気がした。
そして猛威を振るったのがウグイである(´-` )まったくの勉強不足でまさか湿原河川にウグイがいるとは思って居なかった。勝手にトラウト天国だと思い込んでいたのである。また、そのサイズが半端なく、50cmクラスがアメマスよりも先に喰らいついてくるのだ。
しかし外道とは行っても50cmクラスだ、その下に突っ込むような独特な引きはスリリングでなかなか楽しいものだった。
魚は釣れまくるものの、お目当てのITOの気配は全くないまま3時間ほど湿原を歩いた。
疲れも出てきたので持っていたチョコレートを食べ、自分達はしばし昼寝をする事にした。こんな優雅な休憩をとれるようになったのはほんの最近の事で、今まではこの身が朽ち果てるまで歩き回るスタイルだった。ちょっとは大人になったのだろうか・・・
10月とは思えない程のポカポカ陽気で、それはもう気持ちが良い昼寝であった。
 
 目が覚めると太陽は一番高い所にあった。
連日の釣行で重たくなった身体をゆっくり起こし、最後のエリアに足を進めた。
川幅ばもう既に2m弱まで狭まっていた。
 

水深はあっても4,50cm、マップを見ると車までもう残り1キロを切っていた。
お互い喧嘩した訳ではないが疲労により既に会話も無くなっていた(笑)60cmに迫るウグイを釣り上げても無言で針を掴んでリリースし、たまに釣れるアメマスにも多少微笑む程度で足を止める事は無くなっていた。
川の両脇にあるヨシやスゲ(Wikipedia参照w)の背丈も高くなりだんだんと川を覆うようになってきた。
 
自分「そろそろ歩けなくなってきたな」
相方「んだね」
自分「あの角までやっていい?したらやめるべぇ」
相方「釣っちゃって」
 
相方のその言葉が妙に耳に残ったまま自分はキャストした。もはや集中力は完全にキレ、カウントダウンもせずにリールを巻き、スプーンは波紋を作りながらゆっくりと近づいてくる。川幅1m程の水面はゆらゆらとスプーンの波動で動いていた。特に何かを考えていた訳ではない。ただゆっくりとラインを巻き取っているだけだった。
しかしまぁ、大物が釣れる時ってのはいつもそんな時なのである。釣りたいという欲が一瞬無くなった時というか、初めてサクラマスが掛かった時もスプーンを巻きながら赤川3段の上に広がった朝焼けを見ていた時だった。
 
 突然、スプーンの右側で何かがモワッっと動いき、直後にスプーンとラインが下に引きずり込まれた。ん?っと思いながらも自分はとっさにグンっと合わせをいれた。首の振り方、重さ、周りの水の荒れ方、デカいのはスグに分かったのだがその時はバカでかいウグイだと思っていたのである。
魚が暴れ、周りの土が舞い上がりなかなか魚体が見えずにいたがやっと魚の尾ビレが見えた時、また全身に鳥肌が立った。
「イトウだ!!!」
相方が横で叫んだ。
 
黒濁りの水の中に淡いピンク色の尾は一際鮮やかに見え、そのバカでかい口が自分のルアーを食わえたまま目の前で右に左にと身体をくねらせているのだ。やっと、やっと念願の魚パート2がとれるかもしれない・・・
 
ガラスのメンタルをもつ自分にとっては最悪の状況である。判断力は鈍り、手足は震え、せっかくの高級リールは鷲掴みにし、ドラグは愚か竿も立てたままただただ魚の事を見ていたのだ。
 
どうやってとるべ・・・
 
 
スグにでもランディングしたいが携帯していたのは50cm程度のタモだった。それではまるで話にならない。
 
フルパワーでずり上げも考えたがそれでは魚体が傷ついてしまう。でももちろん写真も取りたい・・・
リリースを考えるとハンドランディングしかないと思ったのだ。(やった事ないがw)
相方に竿を代わってもらいITOの方へと近づいた。周りは浅いがITOがいる所だけは深くなっていてウェーダーを越えて水が入ってきた。しかし、もはやそんな事はどうでもいいのである。
ゆっくりと左手を下顎に伸ばし、右手は尾ビレの根元に伸ばした。
 
 
 
 
 
・・・ゆっくりと、確実に、ギュッと・・・
 
 
 
念願の魚をゲットした瞬間であった。
 
 
 
 
 
 
 
 
今回の旅も昨年同様に非常に勉強になる旅であった。
 
「次はキングサーモンでも狙ってみるか〜」なんて相方と話しながら、カッコつけてウイスキーを片手に帰路についたのだった・・・
 
 
使用ルアー
 
ガルフ14g アカキン、クロキン、ガンメタ、サンライズ
ギーガ15g クロキン、ブルピン、メキシコブラック
HSHOOK シングルL