IVF(媒精)とICSI(顕微授精)について みなさんが意外に知らないこと
こんにちは。
Kinoshitaです。
体外受精の開始のお話をすると、
患者さんからよくいただく質問があります。
「先生、媒精(IVF)と顕微授精(ICSI)は何が違うんですか?」
「最初から全部、顕微授精の方が妊娠しやすいんですか?」
結論から言うと
媒精にも
顕微授精にも
それぞれに
特徴的なメリットがあります
◯媒精(IVF)の魅力
私は、
媒精ならではの魅力は
「卵子が採卵後も最後の成熟を続けられること」
だと思っています。
採卵した卵子は、
媒精では
約16〜20時間、
卵丘細胞に包まれたまま培養されます。
この卵丘細胞という細胞は
単なる
「卵子の周りについている細胞」ではありません。
現在では、
AREG(Amphiregulin)
EREG(Epiregulin)
BTC(Betacellulin)
といった
EGF-like peptide
を介して、
卵子の成熟や受精能力に
重要な役割を果たしている
ことが分かっています。
つまり、
媒精では、
卵丘細胞と卵子が最後まで会話を続けながら
成熟している可能性があります。
私は、
この点が
顕微授精ではできない
媒精の一番の魅力だと思っています。
つまり
受精するタイミングが
成熟した段階での卵子と
精子に任されているわけです
顕微授精では、
培養士が
何時何分に
精子を卵子へ注入するかを決めます。
一方、
媒精では違います。
精子は卵子の周囲に存在しています。
そして、
受精する瞬間は、
卵子と精子に任されています。
数時間の違いかもしれません。
しかし、
私は、
この採卵後の最後の成熟段階が
卵子にとって、受精、胚発生にとって
重要な時間になっていると考えています。
既存の報告でも
採卵して受精までの培養時間(前培養といいます)が
受精、発生に関係する
という論文は昔からよく出されています
◯顕微授精(ICSI)の魅力
もちろん、
顕微授精にも、
媒精ではできない大きなメリットがあります。
まず、わかりやすいのは
少ない精子の中からでも
より良い精子を1つ選ぶことができます。
現在では、
PICSI
膜透過型精子選別(ZyMot・レンズフックなど)
など、
さまざまな精子選別法があります。
また、
卵子活性化ができるのも
顕微授精だけです
セントロメア抗体などによる受精障害の治療を
多く実施している当院では
この卵子活性方法に力を入れています。
受精障害が疑われる患者さんでは、
卵子活性化が必要になることがあります。
これは、
一般的にはカルシウムイオノフォアなどを用いて、
(当院ではご夫婦毎に複数の卵子活性の選択肢を提供できます)
卵子が受精後に活性化する手助けを行う治療です。
当然ですが、
この治療は
顕微授精でしか行いません。
つまり、
顕微授精には、
媒精にはない
治療の選択肢があることも確かです。
Kinoshitaから〜
今回の内容でわかって頂きたいのは
媒精には、
媒精だからこその良さがあります。
顕微授精には、
顕微授精だからこそできることがあります。
だから私は、
「どちらが優れているか」
ではなく、
「どちらのメリットを患者さんへ届ける必要があるのか」
を考えています。
初回採卵は、
受精卵を作るためだけではありません。
そのご夫婦の
受精という力を知る最初で最大のチャンス
でもあります。
媒精か。
顕微授精か。
その答えは、
すべての患者さんで同じではありません。
最短で妊娠へとつながる方法を見つけること。
それが、
私のクリニックが受精を決める際に
大切にしている目的です。
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