ラストチャンス | 林修オフィシャルブログ「いつやるか?今でしょ日記」Powered by Ameba

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こんにちは。東進ハイスクールの現代文講師、林 修です。日々に思い、少し考えたことをぼちぼち発信していきます。

 容赦のない切り捨てが平気で行われるメジャーの世界で、これほど多くの「チャンス」が与えられたのは、彼の人徳のなせるわざなのかもしれません。しかし、彼は今日もその「チャンス」を生かすことはできませんでした。僕は今日こそが本当に「ラストチャンス」だったと思っています。




 夜中の二時過ぎに始まった試合をリアルタイムで追ったのは、もちろん仕事を抱えていたからでもありますが、今日が「ラストチャンス」になるだろうと思ったから。チームとしては、優勝を意識したからこそ、彼を獲得したのだと思います。事実、彼が入団した当初は、そういう位置にいました。しかし、皮肉なことに、彼が加入してから、チーム成績は悪化の一途をたどり続けました。その間首位のNYYは一気に加速して、あっという間に同地区の他の4チームを置き去りにしてしまいました。




 もちろん、彼一人のせいではありません。しかし、彼が期待されたような戦力になれなかったことは否定できません。




 このオフ、彼には契約のオファーが届きませんでした。一人で黙々とトレーニングを続けていた彼のもとに、オファーが届いたのは開幕して約一ヶ月も経ってからです。長年彼のファンである僕は、その時のことを、5月2日の記事で次のように書いています。




http://ameblo.jp/itsuyaruka/day-20120502.html






 もちろん、喜びましたし、期待もしましたよ。しかし、不安の方が圧倒的に大きかったですね。




 マイナーでも打率1割台。やはりな、と思いました。それが故障者続出のチーム事情により、急遽メジャー昇格。まずいな、今度はそう思いましたね。しかし、5月30日、昇格したその試合の第2打席で、完全試合男ハンバーからホームランを放ちます。それでも、その後の2打席の凡退の様子を見て、不安を解消できなかったことは、6月1日の記事に書いた通りです。その後、BAL戦で元中日のチェン投手から一発を放つものの、打率2割に満たぬ低迷が続きます。





 僕には、単にヒットが出ないというようには見えませんでした。速いボールに対応できない→迎え打ちになる→変化球に泳ぐ、といった悪循環を続けるうちに、とにかく「ずれる」、「つまる」ことが多くなりました。本人も、「つまった」とコメントすることが増えました。



 これはもう、完全に限界なのではないでしょうか?



 TAMのマッドン監督は、名将の誉れ高い監督です。彼のことを極めて高く評価し、結果が出ていないにもかかわらず、彼を起用し続けました。もちろん、TAMのDHを務めていたスコット選手が故障で不在だったせいでもありますが。




 そのスコット選手が復帰して、彼の出場機会は減りました。しかし、スコット選手が41打席ノーヒットというチームワースト記録を更新するような不振に陥ったこともあって、彼は再び出場機会を得ます。DHとしてだけではなく、外野手として先発する機会さえ与えられました。しかし、彼は結果を出すことはできませんでした。打率は一度も2割を超えることはなく、むしろ下降。1割8分、7分と緩やかな下降を続けました。(これほどの低打率になると、ノーヒットでもあまり打率が下がらないのだなあ、と妙なことに感心していた時期です。)




 7番で先発に起用された、7月2日のDET戦、彼は久しぶりにマルチヒット(複数安打)と打点を記録します。マッドン監督はよほど彼のことを信頼し、期待しているんでしょうね。翌日の首位NYY戦では、彼を4番に据えて、ライトで先発起用します。




 その一回表における守備でした。彼は何でもない凡フライを取り損ね、2点を失う原因を作ってしまいました。さらに、ファウルフライをフェンス際まで追った際に左足の太腿裏を痛めて、結局一度も打席に立つことなく、ベンチに退いたのです。彼の外野守備はもともと凡庸というレベルであり、負担の小さいレフトをずっと守ってきたのですが、マッドン監督はあえて彼をライトで起用しました。そして、彼の事実上のエラーから試合にも負けたのですから、責任を問われてもやむを得ない選手起用だったと言えます。




 その後、オールスターを挟んで、時の流れの中で少しずつ回復していったようです。しかし、本人は守備への不安を口にし、監督もまた、二度と先発で起用することはなく、代打での出場が続きました。しかし、やはり打てません。凡打の山だけが累々と築かれていきました。




 7月18日、故障者リスト(=DL)に入っていた正右翼手であるジョイス選手が、予定を一日早めてメジャー復帰することになりました。25人のロスターを空けるために、誰か一人降格されます。地元紙は3人の候補を挙げ、その中に同じ外野手である彼が入っていました。しかし、実際に降格されたのは、内野手のライムズ選手でした。




 そういう一連の事情のもとで、相変わらず、代打での凡打が続くにもかかわらず、明日は先発起用があるかもしれないという情報を昨日ネットで得たので、プレイボールから今日の試合を追ったのです。




 結果は、3打数ノーヒット、三振、ライトフライ、ファーストゴロでした。第1打席は、満塁の得点機でもあったんですが。ちなみに、チームは6-0で快勝です。本当に「ラストチャンス」だったと思います。これだけ打てないのに、よくこんなにも「チャンス」を与えてくれたものだという感謝に満ちた驚きを感じ得ません。




 31試合 88打数 14安打 2HR 打点7 三振19 打率 .159




 この、見るだけで胸の痛くやるような数字こそが、今日の試合終了時点における彼の成績であり、おそらくTAMでの全成績ということになるでしょう。(次のSEA戦で、もう1度か2度、代打くらいはあるかもしれませんが。)




 来週には、同じくDL入りしていた外野手のフルド選手の復帰が予定されています。今度は間違いなく、外野手が降格されるはずです。いや、それ以前の解雇もあるでしょう。




 もちろん、去就は本人が決めることです。しかし、もういいでしょうというのが、約20年彼を応援し続けてきた一人のファン(しかも、かなり熱烈な)としての素直な感懐です。同じような立場にあった、元DETオルドニェス選手も、少し前に引退を表明しました。自身の去就問題さえ生じかねないのに、ここまでファンが納得できるまでに、彼に「チャンス」を与えてくれたマッドン監督には、本当に感謝の念が尽きません。




 今後一番見たくないのは、日本のプロ野球に復帰して、「そこそこ」打ってしまう姿です。そんなことになれば、きっと日本のマスコミは「復活!」と銘打って、大いに煽り立てるでしょうが、そんなものは「復活」でも何でもありません。単に、レベルが低く、あまりにも球速の乏しい日本の投手が相手ならば、ここまで衰えた彼でも対応できるということの証明に過ぎないんですから。(それさえできない可能性もありますが。)




 さらに、一ファンとしての素直な思いを勝手に書き綴ります。




 お疲れ様でした。静かにバットをおいてください。最近のあなたのファンは、少し前の今日は試合に使ってもらえるかな、という思いではなく、今日は解雇されていないかな、そんな思いの方を強く抱いて過ごしていました。マスコミの報道も焦点はそこに移っています。




 2009年のワールドシリーズ最終戦でヤンキース・スタジアムに鳴り響いたMVPコールは紛れもなく、あの瞬間の最高の選手として、あなたを讃えていました。もう十分でしょう。あんな素敵な瞬間があったのですから。あの至福の瞬間こそが、すべての野球選手がめざすものであり、あなたをそれを得たほんの一握りの人間の一人なんですから。約20年間、本当にありがとう。






 尊敬すべき、松井秀喜様