M&Aバンカーの凄さ~10月27日(金)~ | The New York Blog

M&Aバンカーの凄さ~10月27日(金)~


昨日ネタに書いた高校時代の同期が、実はワシントンDCに大量にいることが判明。世界銀行やシンクタンクに就職しているらしい。近々みんなを訪問、したい。。。



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さて、M&Aバンカーという職業をご存知だろうか。


投資銀行の投資銀行部門、或いは日系の証券会社のM&A部門にいる人種である。


所謂投資銀行マン、或いはインベストメントバンカーというのは広義の定義で、投資銀行マンは通常二種類に分けることができる。



カバレッジバンカーと、M&Aバンカー。


カバレッジバンカーというのは、例えばエネルギー業界、メディア業界とかに特化しており、いわば顧客対応で仕事を取ってくる人、所謂営業の仕事である。


M&Aバンカーというのは、M&Aの専門家。カバレッジバンカーが仕事を取ってきたら、その仕事を実際に実行する人(M&Aの場合なら)、と言ってもいい。



巨額のお金が動くM&Aの交渉の最先端に立つので、広範な知識を必要とする仕事なのだが、何より面の皮が熱く、交渉が決裂するかしないかの瀬戸際でギリギリの攻防を行う能力を必要とする仕事である。


日本も漸くM&Aの波が到来してきたとは言え、まだアメリカに比べると市場も小さいので、本当の意味でのM&Aバンカーはまだ少ない。元GSの服部さんとか、何人か有名な人はいるが。



と前置きが長くなったが、今日、ファンドのハッピーアワーがあり、雑談していると或る売却案件の話になった。


通常、ファンドが傘下の会社を売却するときは、投資銀行を使う。プライベートエクィティファンドの仕事はある意味、非常にM&Aバンカーの仕事とも似ていて、使う必要がない、といえばないのだが、売却するときはオークション形式にした方が有利に売却できることが多くなり、オークションにするとどの顧客へ打診すべきか、顧客情報を投資銀行の方が持っていること、更にスケジュール管理やピッチブック(資料)の作成、更に事務的な仕事も増えるので投資銀行に一任することが多くなる。


ただし、一対一で企業を売却する時は別。ファンドにもよるらしいが、僕のファンドはこういう場合はフィーが高い投資銀行は使わず、独自に売却してしまう。(僕も今年こういうのを一件担当したが、全て自分でやらねばならないのは本当に大変)。



さて、この某案件では投資銀行を使っていたのだが、パートナー曰くそこにいたM&Aバンカーが凄かったらしい。感心することしきり。


先ず最初にモデルを作ったのだが、このモデルの出来がものすごかったらしい。数字の分析がきちんとしており、投資先の経営陣さえ理解できていなかったところまで踏み込んだものだったという。


そしてこのモデルを、投資先の経営陣と、買い手候補の両方に配った。僕の知る限り、売り手サイドの投資銀行がここまでやるのは珍しい。特に日本でやるときは、計算式の生のエクセルファイルが投資銀行から買い手に渡されることは先ずない、と思う。少なくとも僕が知る限りは。計算がどこかで間違っていた場合、後で問題になるのを嫌うからだ、という説明を聞いたことがある。だから基本的には、売り手は、


「はい。こちらがデータになります。後はご自由にどうぞ」


となり、買い手はあれやこれやと分析モデルをつくる。



この案件でモデルを両方に配ったのには目的があった。それは経営陣と買い手に共通認識を持たせること。経営陣が自らモデルを説明できるようにすることにより、より高いレベルで売り手と買い手が議論できるようにと、売り手のM&Aバンカーが仕向けたのだ。



でも、一番凄い話はここからだ。



実は、案件も終盤に差し掛かったところで、投資先のある問題が持ち上がった。(でも重大なものではなく、よくある、という程度の問題)。


相手側の弁護士はこれを非常に問題視し、レプワラ(Representations & Warranties=表明・保証)を要求してきた。


レプワラ、というのはM&Aの契約で非常に重要な条項である。



限られた時間しかない中で、両サイドが全ての項目について確認・合意することは不可能に近い。そこで、完全に煮詰めることがなかった条項については、このレプワラという項目で、問題点を明らかにし(表明)、事後になって問題があったと認定された場合には、金銭の授受が行われる(保証)のである。



さて、相手側のこの問題専門の弁護士、この点に関してレプワラを要求して譲らない。そして、もう時間もない。(ある期限を過ぎると、契約は破棄される取り決めになっている)。


そして、この弁護士、オカマ、というか、とてもホモっぽい人だったらしい。



交渉は膠着状態。相手側も、話を進めようにもこの専門弁護士が主張して止まないものだからどうしようもない。だからそれを要求してくる。


その時、我々についていたM&Aバンカーが相手側に放った一言。これが凄い。(敢えて原文のまま、英語で書きます)




"I'll give you your fucking rep if you rep that he is a fucking homo!!"





あまりの突然の言葉に、相手側は黙りこくってしまったという。(でもファンドのパートナーは笑いをこらえるのに必死だったらしい)。




この専門弁護士が、それでも言葉を返そうとまた何かを言おうとしたとき、



すかさずまた、



"I'll give you your fucking rep if you rep that he is a fucking homo!!"




完全にこの弁護士は押し黙ってしまった。




その後の交渉でも、この問題関連のレプワラ条項のことを、M&Aバンカー氏は"homo rep"と呼び続け、一歩も引かなかったという。



そしてなんと結局、先方が押し切られる形で契約にこの条項は反映されなかった。




特に相手方が、アメリカ南西部方面の純朴な田舎の人たちであったこともあり、ニューヨーク流のこういう出方に面食らってしまった、ということもある。でもなかなか凄い話だ。日本なら、例えM&Aであろうとここまではしたない言葉を使ってビジネスの交渉をすることなど、有り得ないだろう。。。




でももっとすごい話がある。



このM&Aバンカー氏、実はまだ、





33才。




僕より年下なのだー。




このM&Aバンカー、僕も会ったことはあるのだが、全然そうは見えない。しかも、ファンドのパートナーと対等に仕事をし、高い評価を得ている。そしてこういうエピソードまで作ってしまう。



僕まで、完膚なきまでに叩きのめされてしまったエピソードでもあった。。。



恐るべし。ウォールストリートのM&Aバンカー。



世の中、すごい人がいるものだ。