食堂へ戻るとマチコが食卓を広げていた。いつも昼はマチコと過ごす。
徳太郎は両親を知らない。生まれてすぐに相次いで病死したが、その頃のことは記憶があるわけでもなく伝え聞きしただけである。両親の死後は祖父母に育ててもらったが、祖母は先頃急逝し祖父は田舎で一人畑を耕している。徳太郎はマチコを祖母のように慕った。快活な彼女が祖母によく似ていたからである。
二人で過ごす時が唯一緊張が解れるときだった。育ちがいいわけではない徳太郎はこの家のぴんと張り詰めた空気を息苦しく思っていた。輪をかけて不仲の家庭にやきもきしてしまい徳太郎の拠はマチコだけであった。
夕刻が迫り、茶の稽古からキヨ子が帰宅した。菓子が余ったからと、茶請けの饅頭を一つもらった。そろそろ福美を迎えに行く時間である。
徳太郎はいつもの場所に車を停めた。本来ならば車外に出てお迎えをするべきなのだろうが、それさえ福美が嫌がったからである。
夕日が柔らかく包み込んで、徳太郎は目を瞑っていた。ラジオから西洋の音楽が流れ、それに耳を傾けていた。不意にガラスをつつく音が聞こえ徳太郎は慌ててラジオのスイッチを落とした。
徳太郎は両親を知らない。生まれてすぐに相次いで病死したが、その頃のことは記憶があるわけでもなく伝え聞きしただけである。両親の死後は祖父母に育ててもらったが、祖母は先頃急逝し祖父は田舎で一人畑を耕している。徳太郎はマチコを祖母のように慕った。快活な彼女が祖母によく似ていたからである。
二人で過ごす時が唯一緊張が解れるときだった。育ちがいいわけではない徳太郎はこの家のぴんと張り詰めた空気を息苦しく思っていた。輪をかけて不仲の家庭にやきもきしてしまい徳太郎の拠はマチコだけであった。
夕刻が迫り、茶の稽古からキヨ子が帰宅した。菓子が余ったからと、茶請けの饅頭を一つもらった。そろそろ福美を迎えに行く時間である。
徳太郎はいつもの場所に車を停めた。本来ならば車外に出てお迎えをするべきなのだろうが、それさえ福美が嫌がったからである。
夕日が柔らかく包み込んで、徳太郎は目を瞑っていた。ラジオから西洋の音楽が流れ、それに耳を傾けていた。不意にガラスをつつく音が聞こえ徳太郎は慌ててラジオのスイッチを落とした。