今回は選択公理からツォルンの補題を示していこうとお思います。
選択公理
(Uλ)λ∈ΛをAの空でない部分集合からなる族とする。
このときΠ(λ∈Λ)U_λ≠∅である。
補題7
Aを極大元を持たない順序集合とする。写像f:A→Aで任意の元x∈Aに対してf(x)>xを満たすものが存在する。
(証明)
Aの空でない部分集合全体からなる族をRとする。
選択公理により写像g:R→Aで全ての元M∈Rに対してg(M)∈Mとなるようなものが存在する。…(※)
いまAは極大元を持たないので元x∈Aに対してM_x={y∈A|y>x}とする。
そこでf:R→Aを次のように定める。
f(x)=g(M_x)
するとf(x)∈M_xであるからf(x)>xとなる。(証明終)
(※)についての補足
例えばA={1,2,3}のときについて考える。
Aの空でない部分集合全体からなる族は{{1},{2},{3},{1,2},{2,3},{3,1},{1,2,3}}である。
ではg:R→Aはどのようなものか?
それはM∈Rを任意の元としてMの元を取り出すような写像である。
具体的には下の条件を満たすような写像を考えたら良い。
g({1})=1,g({2})=2,g({3})=3,g({1,2})=1,g({2,3})=2,g({3,1})=3,g({1,2,3})=1
g({1,2})のとりうる値は1または2であればよい。
このようにAが有限集合の場合は簡単にgを構成することができる。
ではなぜ選択公理を導入する必要があるのだろうか。
Aが無限集合のときにその効果は発揮される。
初回の通り、無限個の集合(袋)から元(球)を1つずつとり新たな集合を作る(新たな袋に入れる)という操作は実は自明でない。
これを保証するのが選択公理である。
選択公理の(Uλ)λ∈Λが袋の集まりでUλ(λ∈Λ)がそれぞれの袋である。
Π(λ∈Λ)U_λは新たに作ることのできる袋のとりかた全体集合の集まりである。
これが空でないといっているのが選択公理である。
さて、ツォルンの補題を証明する。
ツォルンの補題
帰納的な順序集合は極大元を持つ。
(証明)
帰納的な順序集合Aが極大元を持たないとする。
補題7より写像f:A→Aが存在して任意の元x∈Aでf(x)>xが成立する。…①
このときf(x)≧xが任意の元x∈Aについて成立する。
よって補題6よりf(x)=xを満たす元x∈Aが存在する。…②
①と②とは矛盾する。よってAは極大元を持つ。(証明終)
ようやく本ブログのテーマである選択公理→ツォルンを示すことができた。
次回からはツォルンの補題→選択公理を示すための準備をしていく。
では、源義経に感謝。
参考文献
・『集合・位相入門』、松坂和夫
