今回も切片の性質を紹介します。今回で終わりと思っていたのですが量的にきついので明日も続けることにします。今日は補題を2つ紹介します。
補題2
fを整列集合WからWへの順序単射とする。このとき次が成立する。
・任意の元x∈Wについてf(x)≧xが成立する。
(証明)
M={x∈W|f(x)<x}とする。M=∅が成立することを示したらよい。
M≠∅だとする。MはWの空でない部分集合であり、Wは整列集合だからminW=aが存在する。
a∈Mよりb=f(a)<aである。fは順序単射でありb<aなのでf(b)<f(a)=bが成立する。
f(b)<bよりb∈Mであるがこれはaの最小生に矛盾する。
よってM=∅である。(証明終)
補題3
Wを整列集合とする。このとき次の⑴,⑵が成立する。
⑴x∈Wを任意の元とする。このとき、WとW<x>とは順序同型になり得ない。
⑵a,b∈W(a≠b)を異なる任意の2元とする。このとき、W<a>とW<b>とは順序同型になり得ない。
(証明)
⑴fがWからW<x>への順序同型だとする。WからWへの写像gを次のように定める。
任意のy∈Wについてg(y)=f(y)である。(つまり、fの値域をaW<x>からWに拡張したものだと考えれば良い。)
このときgが順序単射であることは直ちにわかる。…(※)
g(x)=f(x)∈W<x>よりg(x)<xが成立する。これは補題2に反する。よってWとW<x>は同型になり得ない。
⑵Wは整列集合だから全順序集合である。よってa<bが成立するとしても一般性は失われない。
このときW<a>は(W<b>)<a>とみなすことができる。…( ❇︎ )
よってW<a>はW<b>の切片となるので⑴よりこれらは順序同型になり得ない。(証明終)
練習問題
※と❇︎について詳しく考えよ。
では、源義経に感謝。
