最近、二人の中小企業経営者とお話しする機会を得て、その中であいさつが話題となりました。お一人は社内であいさつ運動をしていて、自ら率先しているとのこと。もう一人は、役員会であいさつ運動を取り入れようと決め、社長も同意したが、一向に広がらず困っているとのお話でした。

あいさつと言えば、あえて取り上げるまでもなく、あいさつできて当然と考えることもできるのですが、自然とできる人や苦手な人、また全くあいさつに関心を持たない人など様々です。そこで、これらの違いはどこから来るのか、古くて永遠の課題と言えるあいさつに関して、その意義や役割などを見直し、あいさつで身の回りや職場を明るくすることを考えてみました。

1.あいさつって何?

人が顔を合して、すぐに話の本題に入ることは大変少なく、顔を合わせ目礼したりして相手の存在を認め、本題と関わりにない話題を話すのが普通です。「こんにちは、今日は天気が予報よりいいですね、調子はどうですか?・・・・・」。このような日常会話の中で「こんにちは」だけがあいさつでなく、これらすべてがあいさつと言え、あいさつすることでその後の会話がスムーズに進みやすくなります。そして、話が終了して別れる時も何らかのあいさつを行い、またこれからもよろしくという形で次につながっていきます。ですから、あいさつはコミュニケーションをスムーズに進める第一歩であり、また区切りをつけ次につなげ人との関わりを深めていくものです。

あいさつは、挨拶と書きますが、これは禅問答に由来しているそうで、自分から相手に「近づく」とか「せまる」という意味があります。ですから、あいさつは、「自分から相手に心を開いて近づき、安心できる人ですよと、せまっていくこと」と言えます。言い換えると、あいさつは相手の存在を認め感謝しているというサインと言えます。このような意味から、あいさつは、本来あいさつされた人にあいさつするのでなく、自ら先にするものと思います。

2.あいさつは、どんなものがある?

顔を合わせて一言言葉を交えてする場合、話さないまでも会釈したり手を上げたりし、身振りでする場合、また、顔を合わさない場合は、電話、手紙やはがき、メール、また贈り物でもあいさつの気持ちを伝える場合があります。また、相手、場所や時間に応じて表し方も異なります。

あいさつは、顔を合した時や別れるときの「おはよう、こんにちは、さようなら」以外に、例えば会議、電話の応答、仕事の指示や依頼をする時の初めや終わりに、「活発な議論をよろしく、お疲れさま、ありがとう、世話をかけます、・・・」など多くのあいさつに類した会話を行っています。最も日常使われるのは「ありがとう」ではないでしょうか?これも感謝の気持ちを伝えるあいさつの基本です。

3.あいさつすると、何が変わるの?

あいさつをすることで、その場を共有して安心感や一体感を持つことができ、次の会話の第一歩と言えます。例えば、会議や催し物などでちょっと一言のあいさつや会釈をするだけでその場での安心感や居心地が良くなり、積極的に参加しやすくなります。これは、エレベーターで乗り合わせた人と一言あいさつができると、エレベーターという閉ざされた密室空間であるだけに安心感を得ることを経験された方も多いと思いますが、相通じるものと思います。

あいさつができることで、後の話の展開が広がったり深まったりし、実りある結論が得られるだけでなく、参加者の人間関係も改善され日常の風通しが良くなり、業務の改善につながると考えています。職場の雰囲気が良くなり相手の立場で考えられるようになりチームワーク力が増します。

4.どんなあいさつが心地よいのか?

人は、相手との最初の短時間でその人の印象を感じ取り、その後の話もそれに基づいて対応することが多々あります。それは、人が何かを相手に伝えるときに、最も影響するのはその人の表情や態度と言われているためです。一言のあいさつも相手を見て元気よく行うことなど、その時の態度表情の如何によって相手への印象を大きく決定づけると言えます。

「応対一瞬、印象一生」という言葉がありますが、これは最初のあいさつや態度表情は一瞬であっても、その印象は一生と言わないまでも大きく相手に影響を与えるということでしょう。そして、その印象は一度相手に伝わると中々修正することが難しいものです。あいさつは、人の理性でなく感性で感じ取れら直接相手に伝わっていきます。

そんな訳で、あいさつは相手の方を向いて明るく(笑顔)元気に(伝わる声で)することが、その人との関係性を良くする大切な働きをします。

5.あいさつについて、身の回りを振り返ってみましょう

朝起きて家族と「おはよう」、近所の人と「天気いいですね」、・・・どんな気持ちを体験しましたか?逆にできなかったときは、その場の雰囲気はどうでしたか?あいさつを十分しなくても、生活に直結する問題はないのですが、あいさつを双方でできることは、お互いが元気になれるエネルギーを分かち合って得られる習慣と言えます。

日々の生活で、あいさつをする機会は50回以上あると言われています。しかし、実感としてはそんなにないと思うのですが、それはあいさつに気づかずにその場を過ぎているのかもしれません。

6.あいさつを続けるには?

会社などで、あいさつを奨励してもなかなか定着しない話はよく聞くことです。背景に日本人は言葉に出さなくても相手に通じる、以心伝心的な関わりを大切にする面を持ち合わせているのも一因と言われています。また、人はどのようにあいさつすれば良いか、良くないか、ほとんどの人は本来分かっていると思います。要は、あいさつするかしないかですが、日常的な習慣化は容易ではありません。定着するために、会社の出退勤時に通用門であいさつしているかどうかチェックしている会社もあると聞いています。あいさつは会社だけでするものではなく家庭や日常の社会生活で行うものです。どのようにしたらよいのでしょうか?

あいさつを定着させるには、経営トップがあいさつすることへの意図を明確に持ち、率先垂範する姿勢とともに、あいさつの意義や役割を理解することが大切と思います、また、自らの今までのあいさつについて振り返り、自分に合ったあいさつのやり方や習慣化の方法を見つけて日常化につなげることも大切です。加えて、あいさつの本来の意味にもありますように、あいさつされたからするというのでなく、たとえ相手があいさつしなくても自ら率先してする姿勢も大切です。

最近、ある企業で開催したあいさつセミナーでの話ですが、最後に「あ・い・さ・つ」から始まるあいさつの大切なポイントを一言づつ考えてもらいました。教科書的には「あ=あかるく、い=いきいきと、さ=先に、つ=つづけて」となるのですが、参加者のみなさんに考えてもらうと、思いもつかないポイントを突いたユニークな言葉が出てきました。それらの中から、自分にしっくりと入る言葉を見つけて実践に結び付ける形で進行しましたが、これも底辺からの定着化の一案かなと思っています。冒頭の経営者のあいさつの話を今一度振りかえって、2社のあいさつの普及の相違について皆さんはどのように思われますか?

7.「おまけ」として、あいさつをより効果的にするには?

それは、あいさつに一言付け加えることが大切です。例えば、「おはよう、今日もよろしく」「おはよう、伊藤さん」と言うように一言、特に名前を付け加えて呼ぶのは相手も気持ちがよくおすすめです。人の名前はなかなか覚えにくいものですが、それだけにあいさつにその都度付け加えるのは早く覚えられることになります。メーリングリストで配信されるメールの冒頭に自分の名前が付けられていると、自動的に付けられているとは言え、受信したときに何だか自分を認め注目しているサインとして受け取られ親近感が湧きますね。

一番あいさつを実践しやすいのは、家族からではないでしょうか?「おはよう、行ってきます、今日の調子どう?今日は早く起きられたね、行ってくるよ、ゴミ出しありがとう、・・・・」そんな言葉を、今までより一言でも多く毎朝自ら率先してかけることで家の雰囲気は大きな変化を生むと思っています。それは、相手の中と同時に何より自分の気持ちを和まし温かくしさわやかにしてくれるものと思います。

8.おわりに

継続して心よりあいさつできるためには、①経営トップのあいさつへの意図とその表示、②意義や役割を知る、③自分のあいさつのクセを知る、④自分に合った習慣化の明るい方策を立てる、⑤あいさつを自ら先に実行し、その時の感情を知る、⑥あいさつの定着に関する会合でいろいろな実体験をシェアーしあう、などを考えることが大切と思っています。

さあ、今日も明るく1回でも多く「おはよう、こんにちは、よろしく・・・○○さん」!


 先日、イチロー選手がメジャ-リーグで9年連続200安打を達成した。この100年来の記録更新に対してマスコミで多く報道されたが、いろいろ心に残るインタビューや記事が目についた。


自分の好成績を連続して残せる秘訣は何か、と言うことに対してその一つが打率と安打数の話です。打率は、自分の成績を明確に表す客観的指標だが、好不調で変動する、しかし、イチロー選手は打率もさることながら打てば減ることが無い安打数にこだわるそうだ。


二つ目に、イチロー選手の打撃法を絶えず進化させる練習に取り組む姿勢があります。彼が言うには、「成績を残すために、これをやっておけば良いというものは無い、自分は動いている。だからトレーニングを続けなくてはならない」と言う内容のコメントを述べています。これだけの大打者であれば、ある程度自分の打撃を維持するための練習メニューは心得ているのではないかと思っていました。


私流の解釈ですがこの言葉の意味するところは、いくらスキルを学んで実践しても自分の体調や年齢、相手チームや試合の環境などあらゆるものが変化している中で、これだけやったのだからOKと言うものはない、しかし現在の自分はそんな変化の中で最高だというとらまえ方で対処しているのかと思っています。現状の自分を絶えず前向きに受け止め、現時点の不安から開放し、自分のもっている力を発揮できる形を作っているのではないかと思っています。

イチロー選手のこのような野球に対する姿勢は、自分自身を精神的肉体的にコントロールして、どんな環境に対しても継続して長期期間にわたり成績を残せることにつながっているのだろう。

 先日、イチロー選手がメジャ-リーグで9年連続200安打を達成した。この100年来の記録更新についてマスコミで多く報道されたが、心に残る本人のコメントがいくつかありました。その一つが、打率と安打数の話。打率は自分の成績を明確に表す客観的指標として、打者にとって自らの力量を表すものです。そして、多くの打者が首位打者を目標に絶え間ないトレーニングを重ねチャレンジしています。

 しかし、イチロー選手は打率もさることながら安打数にこだわるそうです。これは本人の打者としての考えとして以前から語られているようですが、メジャ-リーグ9年連続200安打と言う前人未到の記録達成の背景に、それを支えたイチロー選手の安打数へのこだわりが大きな力となっていたのかなと思っています。 

 打率は、シーズン中でも好不調の波に見舞われ、上がったり下がったりして安定化するのは難しく、その変動による精神的負担は大きいものだと思います。反面、安打は打てば打つほど確実に増え、そして不調時でも決して減ったりしません。打率より安打数に主眼を置き目標を設定してチャレンジすることにより、単年の成績云々と言うのでなく9年と言う長年にわたる大記録達成に対して、イチロー選手本人の精神的なマネジメント能力が大きな力となったのでは思っています。

 そういえば、以前イチロー選手が今シーズン始めに胃潰瘍から8試合ほど欠場しましたが、その時に「日本ではアメリカより少ない試合数で200安打達成した、だからハンディは無い」と言うようなことを語っていた記憶があります、要は、彼はいろいろな困難に遭遇したときの対処法を体得しているように思います。そして、それは可能性を開く彼独自の前向きな、未来志向の対処をしているのではと思っています。