今日未明、 小用に起きた折、虫が、くぐもった、か細い声で鳴いているのを聞いた。
何の虫だろう、まだ秋の虫でもないだろうし、と思っていたら、今朝蝉の声で目が覚めた。今年初めて聴く蝉の声である。
長い幼虫生活を終え、昨夜のうちに羽化したのだろうか。
蝉は、晴れた日の夕方地上に出て、翌朝には外骨格が固まり成虫になるという。
私が聞いた夜の声は、天敵の現れる朝までに体を作らなければならない切羽詰った声だったのかもしれない。
いや、幼虫の硬い殻を割り、柔らかい皮膚が外気に触れたときの、みずみずしい感動の声だったのか。
あるいは、外気に触れたのもつかのま、再び硬い鎧に変容していく身の痛みの呻き声か。
それとも、たった一人で世に出ていく怯え、勇み声、身震いだったのかもしれない。
いずれにしても、私は、蝉の一生の重大場面に居合わせたのだ。

(参考: ウィキペディア セミ)