近藤勇・流山前後36 | 大山格のブログ

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おもに歴史について綴っていきます。
実証を重んじます。妄想で歴史を論じようとする人はサヨウナラ。


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開城前夜
慶応四年四月十日(グレゴリオ暦1868年5月2日)


 この日は、江戸城明け渡しの前日にあたります。東海道先鋒総督府は指揮下の諸隊に警戒を命じました。その際、総督府参謀の海江田武次と木梨精一郎から口頭で伝えられた命令の趣旨説明のなかから、勝海舟および大久保一翁との交渉の様子を見ておきましょう。
今日の御達し承知にてこれあるべく候。明十一日江城請け取りの儀に付、諸軍屯所に於いて整列、臨機の処置これあるべしとの御達しにこれあり候ところ、大久保一翁、勝安房(海舟)申し候には、明日御渡し申し上げ候軍艦八艘のうち、昨晩一艘、今朝一艘脱走、大洋へ乗出し候あいだ、この段御断り申し上げ候、そのうえ陸軍諸隊色々鎮撫いたし候へども、激論沸騰、殊に七番隊は全隊暴論多く、全隊脱走、いか様の暴挙これあるやも計り難く候あいだ、この段御達し申し候との事に付き、軍艦脱走、大洋へ乗出し候とも、地球中に潜匿いたし候はば、随分あい知れ申すべし。また陸軍沸騰、殊に七番隊甚だしく、其手にて鎮撫いたさせかね候はば、官軍をもって鎮撫いたし申すべし。そのうえ陸軍の儀に候へば、たとい脱走いたし候とも、軍艦とは異なり皇国内に潜匿いたし居り申す儀に付き、捜索出来かね候と申す儀はこれあるまじく、鎮撫行き届きかね候はば、こちらより鎮撫致すべしと詰問に及び候ところ、何分精々鎮撫におよび候あいだ、御鎮撫の儀は御用捨(容赦)下され候との儀に付き、一翁、安房へ委任致し置き候へども、とかく哀訴歎願らしく、兵仗器械引き渡しの儀、諸隊おりあわず、難渋の趣き申し立て、際限これなし。これまでのところ極々寛大の御処置、御恩沢のみにて御威厳御示しこれなく候あいだ、明日のところ、屯所にて整列、臨機の処置あい待ち候御含みにこれあり候ところ、直ちに兵隊押出し、桜田門内へ繰り込み、御威光あい耀かし申すべしとの督府御英断にあらせられ候あいだ、その旨差し心得、明朝五ツ時屯所繰出し申すべしとの御達しに御座候。

『復古記』第九冊p472-473
 すでに海軍も陸軍も脱走が始まっていました。それを徳川家で鎮撫できないならば、東海道軍が鎮撫する、つまり東海道軍は戦争も辞さないという態度を示しました。このように開城と武装解除が波乱含みの様相を呈していたので、東海道軍は指揮下諸隊に示威行動を命じたわけです。
 また、東海道軍は江戸の士民に対して開城の趣旨を諭し、動揺することのないよう布告しました。
今般、海陸諸道進軍候は、朝敵慶喜ならびに抗命の族(やから)のみ誅鋤遊ばされ候叡慮のところ、当人悔悟謹慎に付ては、従来の行状赦すべからずといへども、生霊塗炭の艱苦忍ばせられず、罪魁すら、なお死一等宥めらる上は、帰嚮の輩は勿論既往を咎めず、才能および有志の者は御抜擢、億兆愛撫の意四海へ御表示の思しめしにて、徳川譜代陪従小吏に至るまで、凍餒の患これなき様、御扶助成し下さるべく候に付、疑懼を抱かず、この聖意を奉戴し、士農工商など一切安堵営業致すべく候。なお追々闕廷より徳教御宣布候へども、当分徳川祖宗の良法は、そのまま変更これなく候條、勤王一途、心得違いこれあるまじく候、かつ当国諸事訴訟などは、聊かも忌諱なく、当総督府へ申し出るべく候、そのうえ至当公平の裁判これあるべきものなり。
   辰四月     東海道鎮撫総督府(朱印)

『復古記』第三冊p483-484
 江戸や関東各地が、なかば無法の巷と化していたことは前に掲げた塚原渋柿園の回想にあったとおりです。ですから総督府が訴訟を取り扱うと宣言したことは重要でした。そもそも権力とは人々を従わせる力のことをいいます。たとえば現代の民事訴訟でも判決に従わない者がいれば、強制代執行が行なわれます。従わない者を無理にでも従わせるのが権力なのです。その権力を、もはや徳川家では維持できなかったため、なかば無法地帯というべき地域が出来てしまいました。だから総督府が裁判権の掌握を宣言したことは、庶民にとっても重要だったのです。

 同じ日、結城藩の恭順派に擁立された新藩主の水野勝寛が、東山道軍の指示に従って江戸から結城に戻りました。その途中、板橋で東山道先鋒総督府の本陣へ挨拶のため立ち寄った勝寛は、薩摩藩士の平田(九十郎)宗高の計らいで、総督の岩倉具定に拝謁しています。勝寛こそが正当な藩主であるとしたい、新政府側の思惑が窺える出来事です。

『復古記』第十一冊p461-462
 甲州勝沼の戦い、梁田の戦い、結城騒動と、東山道軍は武力行使を重ねていましたが、それらの敵の陰にいたのは会津藩の脱走者でした。江戸開城と武装解除を無事に済ませるまで、引き続き東山道軍は会津藩の動向を警戒すべき立場にありました。


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