外国人投資家は中国株を売り逃げ 人民元相場の下落進む | ある女子大講師

外国人投資家は中国株を売り逃げ 人民元相場の下落進む

外国人投資家は中国株を売り逃げ 人民元相場の下落進む

1.北京では毎年恒例の全国人民代表大会(全人代)が開かれている。日本メディアの多くが全人代について「国会に相当」との注釈を付け、大々的に報じる。全人代とは、共産党が指揮し、予め党中央が決めた政策を党が選んだ全人代委員たちが承認するだけの会合なのに、民主主義を想起させる国会に例えるのだから、北京当局になめられる。今回は前にも増して習近平共産党総書記・国家主席の強引さが際立つ。習政権は、全人代終了後の首相定例記者会見を停止した。

 

2.不都合な真実を隠蔽する習政権のやり口だが、不動産バブル崩壊不況打開策行き詰まりの表れだ。習氏の代弁者である李強首相は、実質5%前後の経済成長目標を掲げた経済報告の根拠について、外国メディアから突っ込まれたらまともに答えられない。中国国家統計局発表の原データをもとに、国内総生産(GDP)を再計算し「5%経済成長」の噓を暴かれている。、北京の大本営発表を鵜呑みにする米欧の投資家はいない。

 

3.5日にブルームバーグ電では、GS資産運用部の最高投資責任者の「中国に投資すべきではない」との発言が流れた。同幹部は中国経済が向こう10年、着実に減速する見通しに加え、「中国の政策が不透明で、経済データがまだら模様で、中国投資への懸念を高めている」と指摘した。GSは長年、対中投資に血道を挙げてきたウォール街金融資本の代表格だが見切った。発言は全人代開幕直前というタイミングだ。党中央は昨年12月の中央経済工作会議で「中国経済光明」の宣伝工作を打ち出し、違反する者には反スパイ法を適用すると脅しているが、GSは構わなかった。中国経済衰退の見方を否定し、噓の楽観論を繰り出せば国際投資家から見放される。その方が怖い。

 

4.外国人の中国株式保有と人民元の対ドル相場の推移から、一目瞭然、両者は連動し、2022年2月のウクライナ戦争勃発以降、外国人投資家は中国株を売り逃げている。それに債券、預金など人民元建て金融資産が全般的に売られ、人民元相場の下落が進んでいる。通常、投資先の通貨が安くなれば、現地の金融資産、特に株式は割安とみられて買われやすい。

 

5.その代表が日本株で円安が進行する中で、日経平均株価は史上最高値を更新しているが、中国は逆だ。金融投資だけではない。製造業などの対中直接投資は昨年、前年比で81%減となった。中国経済はもとより、外資の流入なくして成り立たない。金融は外貨準備に左右されるし、先端的な技術も外国企業に依存している。金融の量的拡大に限度があれば、不況対策財源の国債発行も限られる。全人代での政府活動報告では、景気テコ入れのための金融緩和、財政出動が明記されているが、規模は昨年以下の小出しだ。