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 似たようなタイトルの小話を、以前にASWATのブログにUPしたことがある。第3話の「ウグイスとニホンイタチ、どちらが大事か?」である。本稿を読む前に、それに目を通して頂けると有難い。

 とりあえず、此度の件を簡単に解説する。南アルプスの北岳(最高峰3193m)では、1981年に63個あったライチョウの(番の)テリトリー数が、2013年には8個にまで減少した。そのことに危機感を覚えた鳥研究者と環境省は、2015年度より「悪天候に弱く、捕食者に襲われ易い孵化後約1ヶ月間をケージ内で飼育し、初期生存率高める」試みを開始した。つまり、海亀でやられていることの真似事だ。信濃毎日新聞の、2016年10月17日の記事である。

 更に信濃毎日によれば、「2016年度は6月27日にケージ内飼育を始め、7月20日に雛15羽を放鳥した。その1ヶ月後の8月18日には雛は3羽に減り、10月5日には2羽になってしまった」とのことだ。何故そのような追跡が出来たかというと、雛に発信器を付けていたからのようである。

 この急減の因が「捕食である」という証は無い。だが計画の推進者である小林篤(東邦大学研究員.29歳)は、「その可能性が高い」と言う。その根拠は「ニホンテンがケージにアタックする行動がセンサーカメラで撮影された」ことと、「一帯で、ニホンテンとアカギツネが頻繁に目撃され、痕跡も多く発見される」ことである。それらの糞からライチョウの雛の破片が出て来た訳ではない。だが小林はあくまで捕食者犯人説に固執し、「来年度より罠を仕掛けて、捕食者(候補)を試験捕獲する」案を提出した。環境省もそれに同調しているようである。

 小林はチョウゲンボウも捕食者候補に挙げている。だがそれは捕獲対象には含まれていない。その事情はウグイスとニホンイタチの関係に類似する。三宅島でウグイスの巣を直接襲っているのはカラスである。だがカラスは駆除対象にはならず、ニホンイタチのみが敵視されるのだ。鳥研究者にとっての悪者は常に哺乳類(で多くの場合carnivora)なのである。

 三宅島のニホンイタチは移入個体群、つまり国内外来動物である。たから邪魔者扱いされても仕方ないという見方は有り得るだろう。だが私は、その論理は危険と思う。それは「移民排斥」に繋がる。既に定着したものについては寛容であるべきだ。ましてやニホンテンは在来種であり、日本固有種である。もしそれがライチョウの雛を食べているとしても(重ねてその証は無いが)、だから駆除せよという論理は如何にも乱暴である。

 そもそも「ケージ内飼育」というメソッドに問題ありではないか?。それだと、「捕食者の危険を察知し、回避する」方法を親か教えられない可能性がある。どうせ無教育のまま放鳥されるなら、成鳥になってからの方がましではないか?。雛に発信器を付けることも問題ありだ。それだと身動きに支障が出て、結果「食べられ易くなる」可能性がある。

 そもそも、番の数が激減した理由は何か?。ネットには「登山者の増加」に求める論がある。登山者が出した残飯を狙って捕食者が高山にまで分布を広げたという論だ。その可能性は無しでも無しと思うが、確かなデータの裏付けは無いようである。

 私は、動物の分布の制限要因として「食物とシェルター」を重視する。ライチョウは食物は(ネットによれば)主に植物質で、季節によりいろいろと食べ分けるという。それは言うなればグルメだが、グルメの食生活は危うい。環境が変化すると、バイオマスが不足する可能性がある。高山は、元々生物生産性が低い地域なのである。

 シェルターは、ハイマツ群落だろう。その生えかたはかなり密であり、テンやキツネは内部を自在に動くのは難しいと思う。体がスリムなオコジョやニホンイタチ雌は自在に動き得るが、オコジョは数が少なく、ニホンイタチは(たぶん)高山には分布しない。かようにライチョウに「安全提供」しているハイマツ群落が、もしか減っているのではないか?。その可能性をチェックするためにネットを検索したが、データが出て来なかった。ハイマツ群落の推移は、航空写真を見れば大まかにはすぐわかる筈だ。だが驚くべきことに、その単純作業を誰もやってないようである。

 もうひとつ、ネットを検索しても出て来ない事柄がある。それは「遺伝的劣化の可能性」だ。高山環境は生態学的には「島」であり、個体数は制限される。いきおい近親交配が起き易く、その結果繁殖能力が低下しやすいのではないか。84という番の数はセーフティとしても、何らかの原因でそれが微減したら、安全度が臨界点を越え、減少に歯止めがかからなくなる可能性がある。私のこの論はあくまで仮説だが、もし鳥研究者がそれを考慮していないとしたら、怠慢のそしりを免れ得まい。トキの絶滅の因は(最終段階では)それだろう。「その教訓を忘れたか?」と言いたい。

 以下は蛇足。「オオカミを(国外外来として)移入し、シカの数を制御する」計画が未だ蠢いているようである。2016年10月26日の日刊ゲンダイの記事であり、学者は誰もコメントしていない。福岡県添田町の町議が「山林の管理はオオカミに任せるべき」という(極めて無責任な)発言をしている。これに対しては私は「沖縄へのマングース導入(という愚行)の教訓を忘れたか?」と言いたい。そして「対案はあるのか」という反論に対しては「ある」と応じる。私の対案は、ブログの第20ー21話「シカよシカ、汝を如何せん」に示されている。

      
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