毎日新聞 2014年07月09日 20時06分(最終更新 07月10日 11時56分)
http://mainichi.jp/select/news/20140710k0000m040055000c.html


土石流:民家1棟埋まり、中1男子死亡 長野・南木曽町


 9日午後5時55分ごろ、長野県南木曽町中心部の梨子沢橋付近で「土砂崩れで家がつぶされた」と住民から119番があった。


 木曽広域消防本部によると、川沿いの民家1棟が土石流で埋まったとみられ、親子とみられる男女4人を救出したが、中1男子(12)が死亡した。10歳男児が両足骨折の重傷、母親とみられる女性と5歳男児は意識があるという。


 県警によると、国道19号でもトラック2台、乗用車1台が土砂に巻き込まれたが、運転手3人は無事だった。【稲垣衆史、巽賢司】



いすけ屋


 台風8号とは直接関係のない長野県南木曽町では、集中豪雨により土石流が発生し、中学生が亡くなった。現地ではちょうど砂防ダムの工事中で、堤体は出来上がっていたので、被害は最小限に収まった。以下が国交省発表の梨子沢土石流報告書の中の1ページである。



 報告書によれば、9日の15~18時の3時間で112ミリの豪雨があり、梨子沢の上流で土砂崩壊があり、それが引き金となって、梨子沢第一ダムおよび工事中の梨子沢第二ダムを土石流が襲った。土石流発生後の写真を見ると、両ダムとも満杯である。厳しく言うと、想定土石量を超える土石流だったということは、想定が甘かったか、予算の都合でダム規模が抑えられたかのいずれかである。


 一応、基準では100%の能力を持たせるから、後者の場合はないと思うが、民主党政権時代は無きにしも非ずだった。もっとも想定量は確実なものではなく、このようにせっかく砂防ダムを設けたのに、死者1名、負傷者3名、全壊5戸、半壊7戸という被害を被ってしまったことは、地元および関係者として、非常に残念だろう。ただ、現実には砂防ダムはこうやって役に立っている。公共事業は要らないと言った有識者の真摯な意見を聞きたいものだ。


 木曽川まで下流の流路も急こう配を是正し、階段状に改修されている。これら一連の工事によって、どれだけ被害が軽減されたかを考えると、このような防災工事の大切さを改めて痛感した次第である。誰だ!「コンクリートから人へ」と空文を唱えたのは!地方へ行くと、このような危険な箇所は山ほどある。そして毎年、どこかがやられている。地方軽視が原因だ。一度降ると50年確率ぐらいの雨が降る昨今なのに、河川の排水能力は5年確率程度しか持っていないのが、地方の現実である。防災に関しては一人の命も100人の命も重さに差はない筈だ。そこに投資効率を求める現在の公共事業実施の方法は、問題があると思う。