いすけ屋


 小沢判決について、われらが石原都知事は、都庁での定例会見で、「限りなく黒」と一刀両断し、「彼に関する金銭のヤマはもっと大きなものがあるんじゃないか。インフラ整備のための贈収賄なんて、(授受した)双方が同じことを言わないと絶対に立証できない。だから彼に関する金銭の疑惑はもっとベラボーなものがあるんだろうが、これはらち外なものになっている」と小沢氏の「政治とカネ」にまつわる独自の見解を披露した。「4億円といったって、われわれにしたら大金だが、彼にしたらチャチな問題だったのではないか」と、得意の石原節であった。


 気持ち的にはそうでも、一旦「無罪」判決が出た人に、「ほんとはやったんやろ」と言ってるようなもので、ちょっといただけない。田中角栄や金丸信は、ちゃんとお縄になっているんだから、噂が真実なら、小沢一郎もとっくに捕まっているはずだ。さすがの石原さんも、マスコミの宣伝攻勢に騙されたのか。それとも、何らかの事実を知っているのか。もし知っているのなら、堂々と検察に協力すればよい。


 ただ、「親分が二人とも「金」で捕まっているから、どうせ小沢一郎も悪い事やってるに違いない」では、本人はたまったものではないだろう。石原さんも、今回大きな勘違いをしている。そもそも、共同正犯容疑で裁判されたのであり、裏金は訴因にはなっていない。ウソの記載をした動機として、4億円が怪しい金である必要があっただけだ。


 そもそも2009年3月以来、検察とメディアが結託して大騒動を引き起こしてきた問題の具体的内容は以下の三つである。


1.新政治問題研究会、未来産業研究会という二つの政治団体からの献金を事実通りに収支報告書に記載して報告した。これが「虚偽記載」にあたるとされた。しかし、同じ事務処理をした政治家資金管理団体は20近くに及ぶ。そのなかで、小沢氏の資金管理団体だけが摘発の対象になった。それはなぜか?本命が裏金にあったからだ


2.2004年10月に代金決済があり、2005年1月に移転登記が完了した世田谷不動産の取得について、小沢氏資金管理団体は2005年の取得として届出をした。これを検察は2004年の届け出とするべきだったとして「虚偽記載」だとした。しかし、会計学上は、本登記の日に計上するのが正しい。裁判所はこれを虚偽記載だと認定したが、陸山会裁判で登石裁判長が、水谷建設から1億円の授受があったと「推認」して、有罪としているので、この判決をぶち壊すわけにはいかなかった。もし無罪なら、共同正犯の訴因そのものがなくなり、裁判の意味がなくなるからだ


3.世田谷不動産の取得代金は銀行借り入れによったが、銀行借り入れを行う際に小沢氏の資金を定期預金として担保として差し出した。小沢氏サイドは「預り金」として、これを収支報告書に記載しなかったが、検察は借入金として記載すべきだとして、これも「虚偽記載」だとした。
 

 これらのどこに、重大な刑事犯罪が存在するのか。本命は石原都知事や皆さんが期待する「裏金」であったはずだ。しかし4億円の金の出所は、検察に克明に報告されていて、検察は起訴さえできなかった。これは国策捜査であり、小沢の政治活動を封じる事が目的であったから、検察は検察審査会制度を使って、強制起訴とした。民主党は予定通り、小沢を党員資格停止に追い込み、政治活動を封じる事には成功したのである。


 石原さんは、「贈収賄なんて、(授受した)双方が同じことを言わないと絶対に立証できない」と言ってるが、社長運転手の証言および運転日誌からは、渡したとされる日には、そのホテルに送迎していない。それを登石裁判長は、「授受があったものと推認される」と推認で認定したうえでの、有罪だ。渡されたされる石川元秘書と水谷建設元社長は同じことを言ってないのに、受け取ったと認定されたのだから、いかにいい加減かが分かろうというものだ。都知事たる地位の人は、あまり軽々にこういう事に口出ししないほうがいい。


 名誉棄損で訴えられたら、勝てないよ、石原さん。貴方は大事な人だから、いくら小沢が嫌いでも、こんなことで無駄な時間を使うのはもったいないでしょ。