放射線パラダイムの変革(4) 最終回    
 ホルミシス臨床研究会理事 服部禎男  



まとめ  


 1997年のセビリア会議(放射線身体影響専門家600名参加)を受けて、フランス医料学アカデミーモーリス・チュビアーナ代表は、EUの細胞学者達に呼びかけ、ヒトの細胞にガンマ線などによる連続照射をし、発がんなどの線量率の上限値を追求しました。2001年6月、ダブリンで彼は次のように発表しました


 「自然放射線の10万倍(10ミリシーベルト/時)から100万倍(100ミリシーベルト/時)以下の線量率であれば、ひとの細胞のDNA修復は見事になされ、アポトーシスによる異常細胞除去機構まで考えると発がんに至ることはない。 要するにこのレベルなら、ひとの細胞の抵抗機構はパーフェクトである。」   


 この研究努力を評価して、低レベル放射線影響の専門家達は、モーリス・チュビアーナ博士に名誉あるマリー・キューリー賞を贈りました。   


 2007年受賞講演で、博士は米国科学アカデミー2006年の報告書のヴィレンチック博士の論文を紹介しました。   


 ヴィレンチック博士は、細胞実験で放射線に影響を受けやすい精源細胞で、DNA修復限界は自然放射線の6、000万倍(6、000ミリシーベルト/時)以上であることを碓かめました。   


 放射線による治療を目指して前立腺がん細胞などによって、1、000ミリシーベルト/時を5時間程度照射することによって、がん細胞増殖抑制の可能性ありと暗示しています。   


 すべての根拠として、数千万年ものあいだ活性酸素とたたかって生きてきた細胞のDNAは、たたかい慣れたレベルつまり自然放射線の1、000万倍(1シーベルト/Hr)レベルのたたかいに最も習熟しているとし、レゾナンスアダプテーション(共鳴適応)を述べています。   


 マイクロシーベルトでなく、ミリシーベルトでもなく、毎時シーベルトといった線量率にいたっているヴィレンチック論文の当否について、フランス医科学アカデミーや国際ホルミシス学会の重要な専門家に質問すれば、DNA修復とアポトーシスがそのレベルで充分活性化しているのだと回答されるのは確実です。   


 細胞あたり毎日100万件のDNA修復がなされていることを無視している国際放射線防護委員会は、ヴィレンチック論文のレベルに達している科学者の現状をどう見ているのでしょうか。
                     2011年7月24日                    
           ホルミシス臨床研究会理事 服部禎男


(終わり)




いすけ屋


 以上の論文により、確かに最近30年の“活性酸素のアタックとDNA修復の研究”は目覚ましいものがある事がわかる。ところが、いまだに放射線は浴びない方が安全だと言う、昔の理論に懲り固まった学者が多いので困る。概して彼等は左翼思考であり、憲法9条を信じ、脱原発、反核武装を信条としているので、彼等にとって放射線は危険な方が都合がよい。確かに放射線は高線量では危険である。従って、福島原発事故が100%人災のように宣伝して、人間ではコンタロール出来ない恐ろしいものだというプロパガンダが、心を同じくするマスコミも同調して広められた。


 放射線パラダイムの変革とは、1996年、カリフォルニア大学マイロン・ポリコーブ博士とドイツの放射線分子生物学者ル-ドヴィッヒ・ファイネンデーゲン博士によって「人体細胞は活性酸素によづて激しくアタックされ、そのDNA損傷の修復活動は細胞あたり毎日100万件で、これこそ生命活動の本質である。 われわれは被害とその修復の競争で生きているので、放射線被ばくの積算は誤りである」と提起された事に始まる。


 人は自然治癒力が備わっており、放射線による細胞破壊も5000年の自然放射線被ばくによって培われ、通常生活でこのDNAの特別な異常(DSB)までが殆どエラー無く修復されることがわかっている。また、日常生活における活性酸素のアタックについて,上述のマイロン・ポリコーブ博士がルードヴィッヒ・ファイネンデーゲン博士と共に1996年主張した値(自然放射線の1,000万倍)に一致した。 活性酸素(自然放射線の1,000万倍)で何千万年も訓練してきた身体の真の適応応答である。


 詳しくは、ラッキー博士の「放射能を怖がるな!」を購読していただくと共に、この「放射線パラダイムの変革」シルーズを熟読していただきたい。そして、科学の進歩に全く取り残された政治や勧告・法令、大学の講義、一般人の常識について、橋をかけて頂きたいと思う。