青山の港区子ども家庭総合支援センターで性被害の対応の話を聞いてから、(そういえばあの事件についてはちゃんと読んでいなかった)と借りてきたのが、旭川の中学1年女子への性加害を含むイジメ事件。PTSDに苦しみ、転校もしたものの後に女子中学生は家出し創作も空しく公園で遺体で発見される。自死とみられている。(タイトルで間違えそうだが、旭川の女子高生橋突き落としや江別市の男子大学生暴行致死と違い、イジメからPTSD、凍死まではタイムラグがある)

 

かなり有名な事件なので子どもを持つ親は週刊誌で読んだかもしれない。母子家庭で育ち、中学に入った爽彩さんは上級生らの不良グループ(といって良いだろう)に目をつけられ、男子上級生から裸の写真や自慰行為の写真を送るよう脅され、拡散されたりといった、とても中学生の発案とは思えない凄惨ないじめを受ける。本人や、気づいた母親が学校に相談するも、取り合ってもらえなかったり、相手が未成年だからと大したお咎めもなかったりといった歯がゆい状況は、週刊文春?オンライン?で読んだ記憶があった。

本書は、更に爽彩さんが亡くなった後で、市議会で“イジメと認定されなかったことについて”複数の市議が突っ込んだ質問をしていたこと(地方議員は地元の名誉職と見做されることが多いが、旭川市議はいい仕事をしているなと感服しました)、問題のイジメがあった中学での大荒れ保護者会の様子が詳細に記されている。話し言葉のつっかえなども正確に描写されているが、多くの保護者が、我が子のことのように怒りの言葉を発し、学校側が煮え切らない答えをする様子がリアルに伝わってきます。

 

イジメを受けた学校からはもちろん転校はしたがPTSDを発症し、今時そんな病棟があるのかというような管理下で入院したという爽彩さん。妊娠させられた可能性もあると、病院で検査を受けさせたお母さんの気持ちはどんなだっただろう(幸い、陰性だったそうですが)。

 

爽彩さんは写真に見る通りきれいな顔立ちだし、ややコミュニケーションが取りづらい障害があったそうだが、こういう子は中学に入った途端不良グループに目をつけられやすい。LINEで性的な要求をされた段階で誰かに相談出来なかったのかと悔やまれます。

本書を読んで、保護者、議会、子どもたちの様子を見て通報する近所の人、そして丹念に聴き取りを続けた取材班…まともな大人が大勢いたのを知って、少し救われた。あまりお勧めの本ではないが、こういうことも日本で起こりうるのだと知っておいたほうがいい。