お正月の三が日が終わるまで、
家族水入らずで過ごす彼。
温泉地でのんびりするのが
恒例らしい。
一番下の子供が生まれてからは
受験の年を除いて、
ずっと欠かさずに続けている。
彼からそんな話を聞かされたのは、
クリスマスが終わったあとだった。
彼と再会してから、
初めて迎えた年末年始。
この時期は婚外恋愛者にとって、
不都合で面白くないことが
たくさんあると知った。
普段の倍の忙しさ。
イレギュラーなスケジュール。
一年中で一番長い連休。
家族単位で過ごす行事。
わたしは休暇中、
彼と連絡が取れなくなることを
恐れた。
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差出人： ゆりな
ひとつだけお願い。
突然、音信不通にならないでね。
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差出人： 河原
大丈夫。
温泉地に行っても、
ネットは繋がっているから。
31日から３日までは日光でのんびり。
４日が仕事始めです。
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12月の彼のスケジュールは
普段にもましてびっしりと埋まり、
殺人的な忙しさだった。
お正月番組の撮りだめと
連日の飲み会。
にもかかわらず、何故か
メールだけはきちんとくれていた。
それもとんでもない時間に。
奥さまとは別々の寝室で寝る彼。
深夜に帰宅すると、
ベッドに倒れ込むようにして
眠りに落ちる。
遅い時間に就寝したのだから、
朝まで眠れたらいいのに、
何故かときどき変な時間に目が覚める。
その変な時間に書いてくれた
メール。
送信時刻は朝方の３時だったり、
４時半だったり。
そうまでしてわたしの相手を
してくれていた。
なのにほんのちょっと
連絡の間があいただけで、
すぐに寂しさに襲われていたあの頃。
どうして彼の気持ちを
信じられなかったのだろう。
家族旅行中の彼が
メールをくれるかどうかで
気持ちを推し量ろうとした。
なんと愚かなことだろう。
元旦の朝。
ちゃんとメールは届いた。
なのにわたしの気分は
今ひとつだった。
（続く）
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