Tと寝る…? | 秘密の35年☆赤い糸の行方

秘密の35年☆赤い糸の行方

何度別れても、切れることのなかったふたりの糸。二股だったときも、彼が「あの人」と結婚してしまったときも、わたしが海外で暮らし始めたときも。音信不通6年、14年ぶりの再会から、再び動き始めた恋。国境を越えた超遠距離・婚外恋愛。

夜、芸能プロモーターとの
待ち合わせ場所に友人と共に向かった。

万が一、Tに逢ってしまったら
どうしよう。


わたしは内心、ヒヤヒヤしながら、
プロモーター氏が来るのを待った。

彼が現れると、ラウンジへ移動した。

席に着くなり、わたしは口を開いた。

「ここってTが泊まってるホテル
じゃないんですか?」

「よく知ってるねぇ。さすが。

実は今までTと一緒で、部屋に
送り届けて来たところだよ」

やっぱり。

「こんなところにいて、見つかったら
まずくないんですか?」

「部屋に一度入ったら、
もう出てこないよ」

プロモーター氏は、全く気にする様子は
なかった。

ここまで来て、じたばたしても
始まらない。

わたしも肝をすえた。

話は一貫してTのことに集中した。

友人はしきりに、どれほどわたしが
Tのことを好きかということを
プロモーター氏に訴え続けてくれた。

「プロモーターさん、
なんとかしてあげてくださいよ」

「そうだよなぁ。そんなに
好きなんだもんな。確かに
なんとかしてやりたいよなぁ。

じゃあ、Tと寝るか?」

突然の提案に思わず、
持っていたグラスを
ひっくり返しそうになる。

「えー! ちょっと待って!
どうしてそういう話になるんですか?」

顔が真っ赤になるのがわかる。

「でもゆりなちゃんの話を聞いてると、
Tはゆりなちゃんのことを
知ってると思うんだよね。

そうするとまずいからなぁ」

「うーん。それはどうかなぁ。

頻繁にTのそばへ行っていたのは、
昔のことだから」

Tと寝るなんてとんでもない。

でも彼と近づけるかもしれない
チャンスを逃したくない。


そんな卑しい気持ちが働く。

だからといって、友人の手前

「じゃあ、Tと寝ます」

とも言えなかった。

こんなときにプライドが邪魔をする。

「わたし、Tとそういう関係に
なることは望んでいないんです。

それよりも友だちっていうか、
仲良くなりたいと思ってます」

これは本心だった。

昔からずっとそう思っていた。

わたしがそう言うと、
プロモーター氏は声のトーンを
低くした。

「それは難しいね」

あっさりと否定されて、
その話は終わってしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あれから15年。

このときのことを思い出すと
今でもドキドキする。

もしもあのとき、イエスと言っていたら
どうなっていたんだろう。


Tの部屋をノックする。

ドアが開くと、Tが立っている。

それから…。

いつまでも妄想は尽きない。

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