全国の離島のビールを追い続ける離島ビール倶楽部。
ビールを求めて移動した総距離は地球一周分。
アクセスの悪いブルワリーには慣れっこですが、
今回は過去最凶クラスの秘境度でした!
ツカレナオースブルワリーは今年開業したばかりで、ネット上にほとんど情報がありません。どこよりも早く詳しい現地レポートをお送りします!(訪問日:2024年8月23日)
・「アクセスしやすい島、淡路島」の罠
・この先にブルワリーは本当にあるのか?
・まるで秘密基地!工場跡地に建つブルワリー
・美味しいビールの作り手はどんな人?
・秘境ブルワリーを襲った大事件。そして再起。
・帰り道も、帰ってからも。ツカレナオース!
今年もやってきました!しま彦家の夏休みの定番、淡路島!
2歳児連れなので、車でアクセスしやすい淡路島を今年も選びました。昨年は西海岸にあるナミノオトブルーイングを訪問しました(→当時のブログ)が、今回は島の最南端エリアに今年開業したばかりのツカレナオースブルワリー(TSUKARENAOSU BREWERY)を目指します。
Googleマップによれば、徳島空港から鳴門大橋を経由して車で47分とのこと。余裕でアクセスできそう!
…と、出発前の僕は安易に考えていました。
というのも、Googleマップは肝心な情報を教えてくれなかったのです。
淡路島の南側は山だらけで、ツカレナオースブルワリーはその狭間にある秘境ブルワリーだということを…!
現地へと向かう市道からして、相当うねうねした峠道です。
序盤で2歳児は車酔い。オクサンは「こんな場所だと聞いてなかった」と激おこ!
後部座席はカオスですが、なんとかツカレナオースブルワリーへと下る支道への分岐点まで来ました。海づり公園の看板が目印です。
車でも行けるとの事前情報でしたが、運転に自信のない僕は、これより先に進む勇気が出ません。
一旦、最寄りのホテルへ瀕死状態の妻子を送り届けてから、徒歩で出直すことにします!
あらためて、徒歩で山を下っていきますが、左も右も崖。ガードレールはありません。車じゃなくて良かった。。
※途中、車がすれ違える退避スペースは何か所もあったので、運転が得意な人なら車でも問題ないと思います。
見晴らしの良いヘアピンカーブ。まだまだ5合目くらいです。
途中に東屋もありました。
ツクツクボウシの大合唱を浴びながら下り続けること約15分。ようやく平地が!
滝のような汗を拭きながら、今来た道のりを振り返ります。あの山の上から歩いてきたんだなぁ。
ここは周囲を山と海に囲まれた小さな集落。住民は数人しかいないそうです。でも新しそうな民家もあり、明るい印象を受けます。
ほどなくして「HOKAGE」という看板の場所に辿り着きました。
こちらは工場跡地をリニューアルして出来たアウトドア施設だそうです。
この「HOKAGE」と同じ敷地内、入口すぐのところにツカレナオースブルワリーはあります。(写真左手前の建物)
建物正面からの写真。窓越しにステンレスタンクが見えます!(500リットルタンクが5基あるそうです)
※写真提供:ツカレナオースブルワリー
魚の養殖場跡地の古い漁具倉庫を改修した建物で、1階が醸造所、2階がタップルームになっています。
タップルームは2024年3月にオープンしましたが、とある事情(後述)により6月から臨時休業が続いています。
今回は事前にお願いしていたので、内部に入れていただきました!
こちらがオーナーブルワーの須賀健介さん(35歳)。
さっそく貴重なビールを注いでくれました!
セッションIPA「AWAICHI(アワイチ)」で乾杯!
淡路島島内でしか飲めない限定ビールです!
あーー!これは美味い!!!
フルーティ、かつ、アルコール3.8%でグビグビいけるライトな味わい。
猛暑の中、山道を歩いてきた身体に、これはヤバい。染み入る!うますぎる!
「アワイチ」とは淡路島一周のこと。一周150kmくらいの道程を自転車で回るのが人気のアクティビティだそうです。
「淡路島で醸造所を開くにあたり、いつか人々のアワイチを応援し讃えるようなビールを作ろうと決めていました。」と語る須賀さん。自らも体験すべく、自転車を使わず、なんと2本の脚だけ(!)でアワイチを敢行したそうです。
道中、鹿だらけだったり、疲労のあまり幻覚を見たりと、連続33時間半にも及ぶ壮絶なアワイチの様子は、須賀さんのブログに生々しく綴られています。
書き出しから突っ込みどころが満載↓
2024年5月21日18時に醸造所での仕事を終え、淡路島の南西の阿万でスタートしました。
仕事帰りにやることでは絶対ない!笑
このエピソードからもわかる通り、須賀さんは見た目こそ爽やかなイケメンですが、相当にストイック、というかクレイジーです。(そうでなければこの秘境でブルワリーをやろうなんて思わない!)
インタビュー風景の写真を撮らせてください、と言ったら、急にタオルを被って顔を伏せる須賀さん。クレイジーだけどシャイな一面もあり、底が知れません。笑
須賀さんは茨城県出身。新卒で入社したメーカーで7年間勤めた後、奥様の地元である丹波篠山に移り住み、「丹波路ブルワリー」で働きながらビール醸造を学びました。
その後、地元の茨城県でブルワリー開業を目指したものの市街化調整区域の制約から断念。途方に暮れる中、掛け持ちのアルバイト先の社長さんから南あわじを紹介され、縁もゆかりもなかったけれど「流れに乗ろう!」と思い切った結果、現在に至るそうです。
「流れに乗る」って大事ですよね。しま彦、38歳。これからの人生は、余計な怖れや保険は捨て、流れに乗って生きたいなぁ…。なんてことを思いながら二杯目!
ツカレナオースブルワリー定番のアメリカンペールエール。
これも美味い!!!
「せっかくだから海を見ながら飲みましょう」と須賀さんに誘われて、すぐ裏手の浜辺へ。
「醸造作業で汗だくになった後、この海に飛び込むのが最高に気持ちいいんです」と話す須賀さん。
ちなみにHOKAGEではテントサウナも借りれるそうです。
サウナの後はもちろん海にダイブ!
今回僕は飛び込みませんでしたが、ここでビールを飲むだけで最高に整います!気持ちいい!
汗だくでも爽やかな須賀さん。臨時休業を余儀なくされた大事件“停電トラブル”について飄々と語ってくれました。
淡路島の中でも秘境といわれるこの集落は、インフラ面が弱く、3ヶ月に1回くらいの頻度で停電に見舞われるそう。とはいえ長くても数時間で復旧するので、須賀さんが現地にいて設備の再起動ができればビール作りに影響しません。
しかし2024年5月末、須賀さんが出張中に停電が発生。すぐに電気は復旧したものの、発酵タンクを冷やすチラー(冷却装置)は止まったまま…。晴れの日が続き、出張から帰った須賀さんが目にしたのは「すべてのビールがお風呂のように熱くなっていました」という悲惨な光景。2,000リットル超のビールを廃棄することになる大惨事でした。醸造所の床に崩れ落ち、泣きながらしばらく天井を見つめていたそう。
開業して間もない時期、しかも稼ぎ時の夏本番を前に、そんなことが起きたら心が折れてしまいそうです。でも須賀さんは立ち上がって、再び仕込みを始めました。
絶望の中、支えてくれた周囲の人々に、心から感謝しているという須賀さん。「ビールを作れる状況に感謝して今まで以上に気持ちを込めてビールを作れています。失ったもの以上に得たものが大きい停電でした。」と振り返ります。そんな須賀さんが作るからこそ、ツカレナオースのビールは、淀みなく、クリアで美味しいのでしょう。
まだタップルームの臨時休業は続きますが、これからの展望も語ってくれました。停電対策として、自動復旧システムの導入を検討中とのこと。また、もともと養殖場だった場所なので、魚の輸送に使っていた生け簀(写真右)を立ち飲み用のテーブルとして転用することも構想中。次回来るとき、どんな風に進化しているのか楽しみです!
数々の困難を克服し、心のこもったビールを作り続ける須賀さんに心からの敬意を表して!記念の一枚!
ほろ酔いで実にいい気分です!
しかし忘れてはいけません。下ってきた道を上らないと帰れないのです。
炎天下。うねうねと果てしなく続く上り坂。きつい…。
汗もだくだく。ここに徒歩で来る場合はビール以外の水分は必携です。
東京の雑居オフィスでパソコンに向かう日々。ストレスと運動不足のせいで体内に溜まっていた疲労が、否応なく汗とともに絞り出されていく感覚。超疲れるけど、気持ちいい!これぞ、ツカレナオース!
※ちなみに「ツカレナオース」とは、パラオ語で「ビールを飲む」という意味です。新婚旅行で訪れたパラオが気に入ったので、この言葉を屋号に取り入れたのだとか。「あまり屋号にはこだわりはなかった」というのも須賀さんらしいです。笑
ようやく坂を上り終え、市道に戻ってきたときの安心感は異常です。
ここから徒歩10分くらいで、本日宿泊する「ホテルニューアワジ プラザ淡路島」に着きます。
ホテルの部屋からは瀬戸内海が一望できます。
ちなみに海上に見える大きなイカダのような構造物は、ツカレナオースブルワリー近くの海釣り施設です。ということは、ホテルから直線距離なら近いのです。今後、ホテルからツカレナオースブルワリーのある集落へ遊歩道を整備する構想もあるそうで、ぜひ実現してほしいですね!
瀬戸内海に沈む夕日を眺めながら、あらためてツカレナオース!
地元・福良のお米を使用したアメリカンラガー「FUKURA LAGER(ふくラガー)」。
お米の旨味と切れ味でスッキリ!Alc.4.5%なのでロング缶でもゴクゴク飲める!とても美味しいビールでした。(詳細については須賀さんのブログも必見です)
ちなみにツカレナオースブルワリーの缶ビールは、南あわじの中心街にある「道の駅 福良」でも買えます!
東京なら淡路島のアンテナショップ「日本橋室町すもと館」でも買えるそうです。同じ淡路島の、あわぢびーるやナミノオトブルーイングのビールも取り揃っているという噂(※未検証)なので、今度行ってみようと思います!
また、オンライン通販やふるさと納税で取り寄せることもできます。現地まで行けないという方や、タップルーム再開まで待てないという方はご利用を!当倶楽部の紹介ページのリンクからどうぞ↓