東京競馬場グランドオープン記念イベントの目玉、「ジョッキーマスターズ」。栄誉あるダービー、オークスを制した元騎手によって演じられるエキシビジョンでありながら、府中のターフに彼らが実戦さながらのスタイルで戻ってくるとあれば興奮は隠しきれない。

単勝馬券は⑤岡部幸雄を購入!と言っても限定販売されていた出走各騎手のオッズカードに同封されているオマケのような簡易馬券である。オッズカードの絵柄はシンボリルドルフ。そしてこの日、シンボリの勝負服をまとったジョッキーの姿を久々に拝見できるのだ。

発走予定時刻は1640。最終レースの後に組まれている。

この日のメインレースはオークストライアル。ベッラレイアが差し切ったらしきことを伝える場内実況の響きがパドックにも僅かに伝わってくる。しかしこの日のお目当ては一にも二にもジョッキーマスターズ。メインレースを生観戦していては、仮にウイニングチケット譲りの切れ味を発揮してパドックに向かったとしても好位グループは望めず後方に甘んじざるを得なくなるのだ。しかし同じく観戦を捨てた京都メイン平安Sの実況「ワイルドワンダァ~~!!」が僅かに聞こえてしまった(聞き取りたくなかった…)ときには少なからず消沈したのだが…。武豊エイシンはいずこへ…。

このパドックで勝負服姿の岡部騎手を見るのは約2年振りになる。引退する前日の土曜日、降る雨が厳寒期でも特に厳しい冷え込みに追い討ちをかけていたあの日以来。

とにかく今日は天気がもってよかった。1週間前から週末の天気を逐一調べては予報の結果に顔を曇らせていたが、フジビューとはいかないまでも最悪の雨だけは避けることができた。

トウカイの勝負服がただ一人、だいぶ前から安田隆行騎手がフライング気味に姿を現している。そしてパートナーとなる馬たちがパドックを周回する。もちろん現役の競走馬ではなく競馬学校で扱われている馬だそう。岡部騎手のパートナーはクウェストルージュという綺麗な栗毛の牡4才。何と美浦トレセンにて自身の調整のみならず馬の調教!やアフターケアにまで手を施すやる気を見せているらしいのだ!!



岡部が河内が!



そしていよいよ主役たちの登場。

アグネスの勝負服は河内。そして緑色の鮮やかな勝負服が人混みの間からチラチラと岡部幸雄。やはりまだまだ絵になる。続々と面々が登場し、パドックの中央に集まっていく。そして横一列の整列を四方へ向けて繰り返す。記念撮影タイムだ。最終レース後にもかかわらず大挙詰め掛けたファンに対する惜しみないサービスである。



整列!


いよいよ馬に跨って周回する……と、誘導馬の鞍上には細江、横山ノリ、後藤Jの姿が。先輩Jの久々の大仕事を、後輩たちがこのような形で盛り上げ、支える姿はやはりいいものである。

久々に見るシンボリの勝負服。間近を通り過ぎても全然違和感がない。緑色がことさら鮮やかに輝いて映るのは気のせいだろうか。的場騎手のファンに笑顔で手を振るパフォーマンスに対し、岡部騎手は以前と変わらぬ勝負師のムードである。だがこれこそがジョッキー岡部幸雄である。これでいいのだ。



岡部-シンボリ!



主役たちが地下馬道へ吸い込まれていくと、野次馬共も一斉に大移動を始める。フジビュースタンドを経てターフに出ると、一瞬でそれと分かるこの独特ななまりの声は……杉本清だ。特にひいきをしているわけではないが、この声がターフに響き渡るとやはりイベントの雰囲気が出る。JRAの粋な計らいに感謝。

「私の夢は岡部幸雄です」

杉本節も軽快である…。

スターターには柴田政人氏を起用。この状況下でGⅠのファンファーレが勇ましく鳴り響けば胸の高鳴りも最高潮。大観衆、大声援である。

アイネスフウジンの中野は逃げを打てず、代わりにイソノルーブルの松永が先導役を引き受ける。そこからポツポツとカワカミプリンセスの本田、アグネスフライトの河内と続く。その後は固まって、逃げが期待されたアイネスフウジンの中野、トウカイテイオーの勝負服が眩しい安田、そして絶好のスタートから中団に控えたシンボリルドルフの岡部がいる。前傾姿勢の騎乗フォーム。一目で岡部だと分かるあのフォームが帰ってきた。後方にはシャダイアイバーの加藤、エリモエクセルの的場が外からかわしていく。最後方にはメリーナイスの根本。

直線は着順にかかわらず、お目当てのジョッキーに声援を送るのがいいだろう。

岡部騎手は優勝争いに加わることこそなかったものの、4角を回るときの雰囲気、2頭の間を割って入ろうかという闘争心溢れる追いっぷりが堪能でき、満足である。



感動レースをありがとう!



本当に素晴らしい企画だった。

恐らく第二回、三回と続くと思うが、次は関西開催だろうか…。



優勝はこの人!