まぁ、確かに、無駄に使った回数の方が多かったかもしれない。
でも、それも今は昔・・・。
普通の受付開始時間よりも30分早めに入院させるのだから、当然、手術も午前中に行われると思っていた。
朝も、食べてないしね。
でも、違った。
手術は、午後の2時頃からの順番待ち。
午前中は、点滴しながらあれこれの説明となった。
今日1日は、どうやら食事は出来そうもないらしい・・・まぁ、そんな状態じゃなくなってるだろうけどね。
自分でバリカンで剃毛して、来る人来る人皆に披露。
ちょっとした露出狂もつかの間、うとうとしているとお浣腸の声。
これも、慣れるもんじゃない。
そして、14時を回った頃、手術室からお呼びがかかる。
耳下腺の手術の時よろしく、ガラガラで運ばれるのかと思いきや、徒歩で手術室まで看護婦とお散歩。
受付を済まされ、重たい扉の向こう側へ・・・まな板の上に載せられる・・・。
今回の手術は、全身麻酔じゃなくて脊椎麻酔ってやつで、下半身だけが麻痺するった代物だ。
はじめは僕も、長い間一緒にやってきた分身の最後の晴れ姿を眼に収めようなんて余裕な考えを持っていたが、それは、この麻酔のかかり始めると同時に吹き飛んでしまったよ。
徐々に自分の意志では動かなくなっていく下半身。
感覚がずっと残ってるだけに、とても不快な思いにさせてくれる。
そしてそれが、心に動揺を生む・・・パニック、パニック、パニック?!?!
先生たちの声が飛ぶ。
どうやら、施術を新人にやらせながら指導してるようだ。
えっ?! まじ?! ちがうとこ刺したら俺どうなっちゃうの???
先生たちの会話に不安を煽られ、パニックが更に加速する。
「先生、俺、だめです」
「何が? 大丈夫よ、痛くないでしょ? 」
「いや、そうじゃなくて、精神的にいっちゃいそうです! 」
心電計の音が、ますますスピードを上げていく。
「あら、じゃあ、ちょっと寝ましょうね・・・手術中は寝てましょう、それが良いわ・・・安心して、大丈夫だから」
勝気な物言いの女医に促され、動かない脚をなるべく意識しないように努め、努め・・・務め・・・、気持ちをなんとか落ち着かせようと深呼吸を繰り返し、繰り返し・・・・・・・・・はい、終了。
「ご苦労様、終わりです・・・切除したやつ見たいって言ってたよね・・・」
散々、パニックっておいて気がついたら、目の前には鶏胸のひらきの様になった青春の片割れが、冷たいビニールの袋の中で、泳いでいました。
「全部とれたから・・・綺麗なセミノーマ色だよ・・・」
さすがに帰りは歩いて帰るにもいかず、身も心もズタボロになった気分で、どなどなど~などぉ~な~。
痛々しい姿が、最後の遺影となりました。
chi--nn!!