
『AIって、労務のことは間違えますよね。』
先日、ある会社の担当者の方とお話ししていて、そう言われました。
AIの使い方をお伝えする連載の4回目です。
これまでの3回は、有給の日数、労働時間の電卓、社内のお知らせ文と、どれも道具を作る話でした。
今回は、道具ではなく聞き方のほうです。
本当に間違えるのか、確かめてみました。
【Claude】【ChatGPT】【Gemini】の3つに、同じ質問を2回ずつ投げています。
まず、何も足さずに聞きました
投げたのはこれだけです。
『パートさんに有給は何日つきますか?』
みなさんなら、何が返ってくると思われますか?
結果を先に申し上げます。
間違った答えは、ひとつも返ってきませんでした。
3つとも、【比例付与】の表を出してきました。
週の所定労働時間が30時間より短く、かつ週の所定労働日数が4日以下の方は、働く日数に応じて日数が変わる。その表です。
| 週の所定労働日数 | 入社から半年後 |
|---|---|
| 5日以上(または週30時間以上) | 10日 |
| 4日 | 7日 |
| 3日 | 5日 |
| 2日 | 3日 |
| 1日 | 1日 |
そのうえで、3つとも最後に同じことを言ってきました。
『週に何日、何時間働く方でしょうか。入社日も教えていただければ、具体的に計算します。』
ここで気づいたことがあります。
AIは外したのではなく、止まったんです。
答えが出なかったのは、私が渡していなかったからでした。
次に、前置きを4行つけて聞きました
同じ3つに、今度はこう投げました。
- どこの話か(北海道の事業所です)
- いつの話か(2026年10月1日時点の取り扱いで)
- 誰の話か(週3日・1日6時間で契約しているパートの方です)
- 会社のルール(就業規則の条文をそのまま貼る)
4番に貼ったのは、この記事のために作った条文です。
「第○条 年次有給休暇は、入社日に3日を付与し、入社後6か月を経過した日に、労働基準法に定める日数を付与する。」
そして聞きました。この方が入社から6か月を経過したとき、有給は合計で何日になりますか。
結果は、3つとも8日でした。
入社日の3日と、6か月経過時点の5日。週3日勤務なので、法定の日数は5日になります。
本題はここからでした
面白かったのは、答えが合っていたことよりも、そのあとでした。
3つとも、私が聞いていないことを返してきたんです。
この条文はそのまま読むと3日+5日で8日になるが、それが会社の意図かどうか怪しい、と。
もし会社が『法定の5日のうち3日を先に渡しておく』つもりで書いたのなら、この条文では足りない。
「労働基準法に定める日数から、入社時に付与した日数を控除した日数」と書かないと、意図と食い違う。
3つが3つとも、そう指摘してきました。
3つのうちのひとつは、さらにこう続けました。
『週5日勤務の人なら、3日+10日で13日になるのか、それとも3日+7日で10日なのか。同じ問題が起きます。』
正直に申し上げます。
私はこの条文に、穴を仕込んだつもりはありませんでした。
前置きの見本として、それらしい条文を作って貼っただけです。
聞いたのは日数だけで、条文の出来については何も聞いていません。
それでも3つとも、そこを見つけて返してきました。
ここだけ覚えてください
就業規則に『入社日に◯日を付与する』と書いてある会社は、そのあとに「控除した残日数」の一文があるかどうかを見てください。なければ、法定より多く渡す約束になっています。
ただ、3つが一致しても正しいとは限りません
ここは社労士として、ひとこと申し上げておきたいところです。
今回はたまたま、3つとも合っていました。
ただ、同じ質問に同じ答えが返ってきたことは、正しさの証明にはなりません。
3つとも同じ資料を読んでいれば、3つとも同じように間違えます。
今回で言えば、比例付与の表と、就業規則が法定を上回れるという考え方。
このあたりは私のほうで確かめたうえで、この記事に書いています。
確かめるところは、やはり人の側に残るんですよね。
この4行は、何のために置くのか
最後に、実際の使い方を。
聞くたびに考えるのは面倒なので、私は前置きを決めてしまっています。
- どこの話か
- いつの話か
- 誰の話か
- 会社のルール(就業規則の条文をそのまま貼る)
長いように見えますが、実際に書いてみると30秒ほどです。
(正直に言うと、急いでいるときは私も飛ばします笑。)
ただ、今回やってみて考えが変わりました。
この4行は、正しい答えをもらうために置くものだと思っていました。
そうではなく、AIをこちらの検討に参加させるために置くものだったんです。
日数だけ聞いたのに、条文の書き方まで返ってきたのが、その証拠だと私は思っています。
まとめ
- 3つとも、前置きなしでも間違えなかった。比例付与の表を出して、聞き返してきた
- AIは外したのではなく、止まった。止めていたのはこちら側だった
- 前置きを渡したら、3つとも8日で一致した
- そして3つとも、聞いていない条文の穴まで指摘してきた
- ただし、一致は正しさの証明ではない。確かめるところは人の側に残る
これまでの3回は、こちらにあります。
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さてさて、冒頭の『AIって、労務のことは間違えますよね』に戻ります。
やってみるまで、私も半分はそう思っていました。
ただ、返ってきたものを並べてみると、間違えていたというより、こちらが止めていたというほうが近かったです。
どこの、いつの、誰の話かを言わずに頼んで、返ってきたものを見て『そうじゃないんだよなあ』と言っていたわけですから。
それは、頼まれたほうも困りますよね笑。
これからも折を見て続けていきます。
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