石川英夫法律事務所のブログ -4ページ目

春の嵐の日に

 今日は、台風並みの風雨となり、私以外は全員早々


に帰宅し、何故か電話も鳴らず、久々に、靜かな事務


所です。その静けさが、ブログを書く気分にしたようで


す。


 これから、風雨が強まり、陸上で最大28メートルもの


強風が吹くとの予報ですが、幸い、桜が未だ一分咲き


程度であり、花散らしの春の嵐とはならずに済みそう


です。春には、穏やかな日差しの下で、青空を背景に


して咲き誇る桜を、心静かに観たいですよね。週末が


楽しみです。


 今日昼過ぎ、私の携帯電話に、思いがけない人から


電話がありました。短い会話の中で、共通の知り合い


の若い人達の動静を聞かされ、それぞれの人生の転


機を感じました。新しく向かう先に幸せが待っています


ように、と心静かに祈りました。



裁判で負けた話 高齢者の離婚(続)

 高齢者の離婚について、その離婚裁判を担当した裁


判官達が参考にしたと思われる学者の小論文がありま


す。その論文は、「60歳を過ぎ、老人と呼ばれる65歳


を過ぎた男女に、再出発は可能だろうか。」と述べ、高


齢の妻の離婚請求を棄却した判決を、「思慮深い判決


」という表現で讃えていす。その離婚裁判を担当した


高等裁判所の裁判官も、和解手続の席で、「80歳を過


ぎて、病気で、余命が僅かなのに、今更離婚しても、未


来がないでしょう。」と、冷たく言い切りました。そして、


和解不成立後の判決で、控訴棄却となり、離婚請求は


認められませんでした。上告審も、敗訴でした。


 私は、この学者や裁判官達は、人の心を持っているの


だろうかと、疑問に思いました。原告は、再婚するため


に離婚を求めている訳ではありません。死を迎える前に


心の自由を得たいのです。半世紀以上の長い年月にお


いて、夫の不貞や暴力に耐え続けた妻が、離婚によっ


、夫の束縛から解放され、夫の収入に依存せず、権利


として分割された年金で生活し、自由で、心安らかな


生を過ごしたいと願っているに過ぎないのです。


 それなのに、裁判官達は、「もうすぐ死ぬのに」とか


再婚はできないのに」とかいう理由で、「死ぬ前に心


自由を得たい。心静かに死を迎え迎えたい。」という


ささやかな願いを聞き入れよしなかったのです。若


いころ繰り返された不貞や暴力、そして、別居の契機と


なった夫の暴力も、もう直ぐ死ぬ以上、高齢で再婚でき


ない以上、離婚が認められる理由にならないと言うので


す。それ故、夫が離婚を拒否している以上、離婚は求め


られないというのです。


 「もうすぐ死ぬのに、離婚しても仕方無いでしょう。」


という裁判官の冷酷な言葉に、私は、打ちのめされ、


言葉を失いました。裁判に対し、深い失望を感じ、虚


しさを覚えた瞬間でした。(終わり)

嘘の自白 3 証拠原本発見

 深夜、事務所で一人仕事をしていたとき、疲れた状


態で、とんでもない勘違いで、大事な証拠原本を破棄し


てしまったことに気付いた私は、この事態をどう解決す


るか考えました。裁判の進行は、証拠調べを終わって


いましたし、写しはあり、証拠の内容は確認できますの


で、実質的な影響はほとんどないと判断しました。しか


し、証拠原本を誤って破棄したことの責任はどうしよう


ありません。悩んだ末に、私は、その依頼者に対し、


実を説明し、お詫びする手紙を書きました。裁判に悪


影響は無いと書いた私の説明に納得して頂けたのか、


れとも、読まれなかったのか、その依頼者から、何も、


がありませんでした。


 それからしばらくして、事務員が、私の鞄の中から、そ


の証拠原本を発見したのです。その証拠原本は、鞄の最


も端の仕切りの中に、ノート等と一緒に紛れて入っていま


した。そこに証拠原本が入っていることは、通常あり得


いことなので、盲点になっていたのです。この事実に


基づいて記憶を辿ったところ、その事件の口頭弁論が終


わった後、急いで帰ろうとして、証拠原本を事件記録に


いで、別々に鞄に突っ込んでしまったのです。そ


て、事務所に帰って、鞄から事件記録を取りだしたとき、


原本が鞄の端の仕切の中に別に入っていることに


気付かず、そのままになっていたのです。


 証拠原本が鞄に入っていたという事実に基づき、記憶


辿って、その経緯を思いだした私は、その途端、では、


証拠原本を破棄したという記憶は、一体何だったのか、


という疑問に捕らわれたのです。証拠原本は破棄され


てなく、鞄の中に有ったという現実がある以上、証拠原


本を破棄したという記憶が誤っていたことは、確かなこ


とです。そのような誤った記憶が、あたかも真実である


かのように、私の記憶となったのは何故か、私は、その


誤った記憶が脳裏に浮かんだときのことを思い出して、


考え、そして、やがて理解したのです。証拠原本が無く


なったという重大な責任問題が生じ、冷静さを失った精


神状態で、証拠原本が紛失したという事実の原因を思


考しているうちに、不要書類を破棄した記憶が浮かび、


その記憶が、証拠原本が無いという事実と結び付き、証


拠原本を破棄したという誤った発想が浮かび、その途端、


誤った記憶になってしまったのです。


刑事事件の冤罪事件の自白も、そのようにしてなされ


のではないか、私は、そこに思い至りました。「お前


が殺した。」、「お前が犯人だ。」等と責められているう


ちに、刑事が何度も切り返して話す出来事が、あたかも


自分の記憶であるかのように、脳裏に刷り込まれて行


ってしまう。殺人事件、自分がその犯人として疑われ、し


かも、捕まって、手錠を掛けられ、留置場に入れられ、そ


して、今、刑事から、犯人だと責められているという切迫


した状況の中で、異常な精神状態となり、そのような精


神状態の中で、必死に思考しているうちに、刑事が語る


出来事が、自己の記憶になってしまう。冤罪事件におけ


る虚偽の自白は、そうやって作られるのだろう。私は、そ


のように理解できたのです。