最近、面白そうな本を見つけました。

サラー・ベイクウェル(Sarah Bakewell)という作家が書いた

『How To Live(いかに生きるか)』(Vintage Books)です。

副題は「a life of Montaigne in one question and twenty attempts at an answer

(ひとつの問いに20の解答を出そうする試みに表れたモンテーニュの人生)」となっています。

(私が見つけたのは英語の原著で、翻訳があるかどうかはわかりません。

ちなみに、「英書が読めることを自慢しようとしている」などと言わないでください。

英語がまったく読めない大学教員というのはたぶんいませんし、

私もちゃんと読めているかどうか怪しいので。)


モンテーニュは16世紀のフランスに生きた哲学者で、

『エセー』という本で有名です。


「いかに生きるか」という問いに対して

モンテーニュなら20の解答を出すだろう。

その解答は、互いに矛盾していたり、方向性がバラバラだったりするだろうが、

モンテーニュの人生を浮き彫りにしてくれるはずだ。

著者はそう考えて本書を書き進めています。


「いかに生きるか」へのモンテーニュの第一の答えは

「死のことを思い悩むな」です。


彼は若いころから死のことを思い悩んでいたそうで、

親友の死や

家族の死(たとえば、彼には6人の子どもができましたが、

成人したのは一人だけだったそうです)の経験が、

ますます彼に死のことを考えさせました。

それに彼がよく読んできた哲学者の著作には

死の話題がひんぱんに登場します。

キケロの「哲学するとは死ぬ方法を学ぶこと」

というフレーズはその象徴といえるでしょう。


でも、36歳頃に転機を迎えます。

馬から落ちて、瀕死の重傷を負ったのです。

意識不明の状態で、彼が経験したのは、

死とは眠りに陥る瞬間と同じであること、

でした。


眠くて仕方がないときにわれわれが感じる、

抵抗できない、その甘美さ。

睡魔に負けることの快感。


死とはそういう夢想状態だと経験したモンテーニュは、

死の恐怖が消えてしまい、

死よりも生のほうにより関心を持ち始めます。

また、死をよく知っているのは哲学者ではなく、

彼の所有するブドウ畑などで働く

農民や労働者だと考えました。


死のことは自然に任せておいて、

この世を「すべるように漂うように」生きていく。

それが、瀕死の経験以降の、

モンテーニュの生き方になったそうです。


このエピソードを読んで、

モンテーニュという人に、

とても親近感が芽生えました。


モンテーニュのように生きたいとも感じました。

第2の解答は、また次回に。

先を早く知りたい方は、

ご自分で読んでみてください。