桜花賞、レッドリヴェールをクビ差交わし去り、阪神ジュベナイルフィリーズの雪辱を晴らしたハープスター。
ダービー挑戦も・・・・・・と一時は騒がれたが、オークスに出走。牝馬クラシック『2冠』をめざすこととなった。
父ディープインパクト、母ヒストリックスター。祖母に桜花賞・オークス『2冠馬』ベガをもつ良血。
デビュー2戦目の新潟2歳Sでは、18頭立て最後方から直線だけで17頭を抜き去り、2着馬イスラボニータに3馬身の差をつけた。
上がり3ハロン・32秒5、ディープインパクト譲りの豪脚。
牝馬の枠を超えた『超新星』の誕生。
『ハープスター』・・・こと座の一等星『ベガ』の別名。
祖母ベガの再来として期待されたハープスター。
期待通りの輝きを見せ始めた。
だが、絶対的勝利を信じられた阪神ジュベナイルフィリーズで、まさかのレッドリヴェールのハナ差、2着。
3歳になって、3月、桜花賞トライアル・チューリップ賞を単勝1.1倍で圧勝。
4月、桜花賞で最後方一気、先に抜け出したレッドリヴェールをとらえ切った。
つねに後方待機、危なっかしく思えるレースぶりも、ハープスターなら安心できた。
むしろ、桁違いの末脚で追い抜く様を人々は目に焼き付けたかった。それが、本音か。
桜花賞、ハープスターに敗れたとはいえクビ差2着に踏ん張ったレッドリヴェール。
オークスでなくダービー挑戦へと回った。それは体質の弱さにあった。一度レースを使うと疲労回復に手間取るレッドリヴェール。少しでも間隔を開けられるように、オークスの1週間後、ダービー出走となったワケだ。
レッドリヴェールのオークス回避。
『打倒 ハープスター』の1番手となったのが、ヌーヴォレコルトだ。
父は国内で唯一ディープインパクトを破ったハーツクライ。
新馬戦4着のあと未勝利戦・こうやまき賞(500万下)を連勝。
チューリップ賞2着、桜花賞3着。
世代トップクラスの実力は示した。
だが、
どうやっても勝てるとは思えない相手、ハープスター。
唯一、勝れるものは流れに乗れる自在性か?
距離は、誰もが初めての2400m。
未知の距離への対応力で、ハープスターの破壊力に抵抗するしかない。
ハープスターのような派手さはいらない。勝ちたい心、2400mでハープスターの切れ味が少しでも鈍れば・・・・・・勝機はある、あるはず、あってほしい。
ハープスターとはまだ対戦していないバウンスシャッセ。
独特のローテーションを組む藤沢和雄厩舎。
3歳になって本格化。寒竹賞(500万下)、フラワーカップ(G3)を連勝も、
桜花賞を使わず皐月賞に出走、牡馬に混じってイスラボニータの11着だった。
牝馬同士の戦いに戻って、その実力を確かめる。
オークス、2400mでこそ、実力発揮か!
父ゼンノロブロイ、母ビワハイジ。ブエナビスタの半妹サングレアル。
いつも付きまとうのは、ブエナビスタの名。
懸命に走った。2歳新馬戦1着、福寿草特別(500万下)4着、オークス出走をかけたフローラSで1着。
権利を獲った。
ブエナビスタの妹ならG1出走は当たり前。世間から認めてもらうには、ハープスターに勝つしかないのか?
高い、高いハードルを、じっと見つめるしかなかった。
クイーンカップ制覇。桜花賞3番人気も8着に敗れたフォーエバーモア。
フローラSでサングレアルのクビ差2着、ブランネージュ。
クイーンカップ2着。父ハーツクライ、母父ブライアンズタイム、距離は合うはずマジックタイム。
秘かに狙うは、『女王』の座。
何があるかわからない、それが競馬だから。
5月25日、オークス。
1.ベッラレジーナ
2.ディルガ
3.マイネオーラム
4.ペイシャフェリス
5.バウンスシャッセ
6.パシフィックギャル
7.シャイニーガール
8.サングレアル
9.ヌーヴォレコルト
10.ハープスター
11.マーブルカテドナル
12.マイネグレヴィル
13.ニシノアカツキ
14.ブランネージュ
15.マジックタイム
16.クリスマス
17.フォーエバーモア
18.エリーザベスト
1番人気ハープスター、2番人気ヌーヴォレコルト、3番人気バウンスシャッセ。
4番人気サングレアル、5番人気フォーエバーモア。
ゲートが開いた。決して悪くないスタートを切ったハープスターだが、徐々に後方馬群に置かれる。
いつものごとく、余裕の後方待機に入った。
1,2コーナーを回り、先頭に立ったのはペイシャフェリス。
エリーザベスト、マイネグレヴィル、マジックタイム、ブランネージュ、等間隔で並んだ。
スムーズに収まった先行隊列。
直後にマーブルカテドナル、バウンスシャッセ。
中団、サングレアル、フォーエバーモアとともに3頭並んだ内にいるのがヌーヴォレコルトだ。
後方、ディルガ、ニシノアカツキ。
後方3頭目を行くのがハープスター。
最後方がクリスマスだ。
1000m通過、60秒7.平均ペース。
馬群がグーンと固まり、ペイシャフェリス、エリーザベスト、マイネグレヴィル、3頭並ぶように直線に入った。
大きく横に広がった馬群。
大外に出したのは、ハープスターだ!
先頭馬群が入れ替わり、先頭に立ったマイネグレヴィル!
ブランネージュ、マーブルカテドナルが迫る!
さすがに距離2400m、ハープスターの切れが鈍いのか?
後方馬群からいつものような飛ぶ切れ味が見られない!
直線の坂を駆け上がって、伸びてきたのはヌーヴォレコルト・岩田康誠だ!
中団、内で脚を溜めた。直線、馬群の外目へ持ち出し、馬群の中で気を窺った。
前はいつでも差せる。だが、敵は必ずやって来る、後方にいるハープスター。
鞍上・岩田は、耐えに耐え、待ちに待って脚を溜めた。
そして、ゴーサイン。出した限りは死に物狂いでヌーヴォレコルトを叩き出すだけだッ!
一気に先頭を奪った!
同じ考えを持っていた、バウンスシャッセ鞍上・北村宏司。
内から鋭い伸び脚でヌーヴォレコルトに迫った!
近づくゴール。
大外から、先頭へ迫る二筋の光り。
ニシノアカツキを従えた、ハープスター・川田将雅だ!
伸び脚をつけたハープスターの輝き。
届かないッ、思われた位置から一気に迫った!
内外、開いたゴールをめざす馬影。
ヌーヴォレコルト、
ハープスター。
その一瞬は、ヌーヴォレコルト、岩田康誠にはスローモーションのように遅く、長く感じた。
クビ差、
凌いだ。
ヌーヴォレコルト勝利。
勝ちたいッ、心が勝った。
1着ヌーヴォレコルト
クビ
2着ハープスター
クビ
3着バウンスシャッセ
4分の3馬身
4着ニシノアカツキ
2馬身半
5着ブランネージュ
(つづく)