複雑で理解し難い話が続いて恐縮です。

医療事故訴訟においては、病院側が提出する証拠資料が非常に重要となります。今回のように脳外科内で2種類の検証報告書(最終提出分とB医師補足追加分)が存在し、病院として行ったとする検証の内容が全く明らかにされていない状況においては、原告側が医療過誤の過失の度合いを立証する上で困難が生じます。

A医師が8件の医療事故を発生させたことや、A医師に対する手術禁止命令が下されていた事実については既に病院側が公表しています。しかし、一方で、脳外科の総意とされる検証報告書(最終提出分)には再発防止策として、「B医師(科長)の手術手技能力の改善が急務である」「不適切な術操作を厳に行わない様にB医師(科長)に対して厳重注意、あるいはB医師(科長)による手術実施の一定期間の自粛となる」などと記載されており、この検証報告書(最終提出分)の内容が事実だとすれば、B医師(科長)こそが手術禁止にされるべき医師であるかのように読み取れます。

また、記者会見時の高尾副院長(当時)のコメント(当時診療科長と当該医師との人間関係でかなりトラブルがあったと。最初に合議した文書が出ているにもかかわらず、科長は文書を出したいと言ったので、とりあえず受領した)からは、人間関係が原因でB医師(科長)が脳外科の合議に反する文書を勝手に提出したように受け取れます。

ところが、最近になって、別件の民事訴訟(A医師が原告となって赤穂市などを訴えている民事訴訟)で、「医療安全推進室検討分」という新たな証拠資料の存在が判明しました。医療事故訴訟では、病院は、「A医師が関与した問題事例8症例についての報告書等はすべて提出した」としていましたが、実際には未提出の報告書が存在していました。

 

この資料は、医療安全推進室が、脳外科から提出された検証報告書(最終提出分)と手術室に居たスタッフから聴き取りを行った情報を照合した結果、不審な点や不可解な点が多いことに気付き、検証報告書(最終提出分)に対して鋭く疑問を指摘するという形式で作成された資料です。
 

つまり、医療安全推進室は、脳外科の総意とする検証報告書(最終提出分)の内容が事実と異なると認識した上で、事実はどうだったかを把握するために、B医師に対して「B医師補足追加分」を提出するよう指示していた事が判明したのです。

 

 


これらは、B医師が妻に送った以下のメール内容と整合性があります。

(2021年5月8日受信)
公式文書を提出後に、医療安全部の〇〇師長さんから、「本当にこの文書で良いの?このままの内容を信じる事は到底できない。手術当日そこに参加して事実をモニタ画面で目撃した手術室スタッフも複数いる。これが正式採用になった場合、後日〇〇先生は本当に取り返しのつかない大変な事になるよ。」と諭されました。

 

資料の具体的な中身として、例えば2019年10月の医療事故について、検証報告書(最終提出分)では、「損傷を与えた当事者はB医師(科長)」と記載されていることに対して、医療安全は、「医療事故時の主執刀医はA医師と聞いており」と明確に指摘しています。また、再発防止策として検証報告書(最終提出分)では、「B医師(科長)の手術手技能力の改善が急務」と記載されていることに対して、医療安全は、「(A医師に)手術の実施をおこなわすことは困難と判断する」と結論付けています。

 

その他、2019年から20年にかけて少なくとも8件発生した医療事故をめぐり、院内の医療安全推進室がそのうち6件で外部専門家による検証の必要性を指摘していたにもかかわらず、実際には外部検証は3件しか行われず、医療安全の機能不全が改めて明らかになりました。

なぜ赤穂市民病院は、このような事実を明確に認識した上で記載されている証拠資料(医療安全検討分)を医療事故訴訟で提出しなかったのでしょうか?公にすることによって何か不都合が生じると懸念したために証拠資料の存在自体を隠蔽しようとしたということでしょうか?
 

 

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