第18話「ミネルヴァの杯」実況&解説。

 

鈴原教授率いる蕨矢集落の老人らによる「在宅クーデター」。間野山からではなく、チュパカブラ王国からの離脱というのが洒落が効いている。政治色はなるべく廃したうえで、やることと言えばまず宴会。

「しかめっ面で一方的に叫んでいるだけでは見向きもされないからね。人は楽しそうなところに集まってくる」

という教授の予言通り、まのやまチャンネルは注目を集め、国王を奪還に来たつもりの真希もミイラ取りがミイラになる。教授は鋭いだけではなく茶目っ気もある人物なのだ。

 

「だって私、初めて必要とされたんだよ?今は人質役に徹します!」

ホントにお人好しの国王である。ここは由乃のキャラを活かす好機だと思った。

「由乃ちゃん、悪目立ちするタイプだから」さらっとしおりの毒舌も炸裂。

 

それにしても老人占拠率の高い画である。相馬Pいわく、「これだけ老人の多いアニメは『まんが日本昔ばなし』以来ですよ」。普通の制作会社ならこんな企画はまず通らないだろう。

 

記録係の凛々子を見送る千登勢。少し顔が笑っている。やはりかつてロックをやっていただけあって洒落が分かるのだろう。

 

キノコ狩りに精を出す国王。

「それはツキヨタケ。食べたらブサイクになって死ぬぞえ」

こういうセリフが私は大好きで、隙あらば言わせようとする。ブサイクになって死ぬ、って(笑)。ぞえ、って(笑)。

 

一方の早苗は鈴原教授と真剣な話。

5人とも同じ場所にいさせるのはもったいない。こうやって同時進行で描くことでテンポと密度が増す。

さて、鈴原教授の真の狙いとは?

ここで先述の、堀川社長の熱弁が効いてくる。

「コミュニティを解体するということは、その土地の文化を解体するのと同じなんだよ」

このニュアンスを活かすにはどうすればいいか考えた。まのやまチャンネルのことを思い出した。そうだ、あれだ!いずれ消えゆく文化でも、ネットになら半永久的に残せる。

デジタルアーカイブ。

この発想に行き着いたことで、教授の真の狙いをより深く掘り下げることが出来た。

教授はいずれ蕨矢集落が消滅することも分かっている。ならばせめてその文化をアーカイブに残そう、と。

 

こんな時でもギャグを挟まずにいられないのが私である。

サンダルさんの大リーグネタもいい味になっている。

 

ここで前回の問いを教授が再び投げかける。

「君はどうして間野山を選んだのかね?」

まだ答えられない早苗。彼女の中で町おこしの概念やアイディアはまだ一般論の域を出ていないのだろう。間野山であることの必然性はないのだ。しかし自分の持てる力で何とかしたいと切実に思うようになる。

 

一方の由乃もキノコ狩りや雪囲いに精を出しているばかりではない。監督が常に口にしているように、彼女にも毎回何らかの発見や成長がなければならない。車に頼らざるを得ない美智代婆さんの窮状を目の当たりにすることで、いよいよ限界集落の問題が我が事として迫ってきた。

 

Bパート。

ダメもとで高見沢に掛け合う由乃。相変わらず醒めた態度の高見沢。ついムキになって「本当にそれでいいんですか?」と彼を刺激してしまう。そうして彼はようやく本音を語る。

 

「いいわけないだろ!……あそこに座って、来る日も来る日もこの町を見続けてきた。かれこれ15年以上もな。今日は花屋にシャッターが下りた。今日は空き家が雪で潰れた。今日は小学校が廃校になった……自分が生まれ育った町が廃れていく様を見て、何とも思わない奴がいるかよ」

 

「今日は」で繋げることによってセリフにリズムが生まれ、何でもないような一日も彼にとっては常に変化の連続だったのだということを表現している。

 

互いの足りないものを埋め合うかのようにバスの中で呼応する早苗と高見沢。もうここ画の雰囲気も最高。

「たまには路線から外れてみるか……」

高見沢カッコ良すぎる。

 

蕨矢に戻った由乃らによる吊り灯籠のエピソード。まさかこれがあの伏線になろうとは誰も思うまい。また教授が間野山へ来たいきさつや今の住まいについての情報もさり気なく盛り込んでいる。教授が抱っこしている美智代婆さんの犬がめっちゃ可愛い(設定ではチワワらしい)。

 

 

さて、いよいよ登場したデマンドバス。

ここで大事なのはそれが画期的かどうかよりも、過去に高見沢が計画書を会社に出して撥ねられた経緯があるということだ。彼も町のために動こうとしていた時期があったのだと初めて視聴者が知ることになる。実現できなかったのは電話予約オペレーターの人件費がかさむため。その穴を埋めてくれたのが他ならぬ早苗だった。老人がネットに習熟しているのはまさにとてつもないメリットなのである。

 

老人らを乗せて走るデマンドバス。

和気藹々、普通ならここで「めでたしめでたし」と終わるだろう。しかし。先述したように、限界集落を扱うからには死までを描き切らねばただの綺麗事で終わってしまう。断腸の思いであのような結末にした。

 

「ん、氷はまだあったかな……」

 

安易に泣かせようとしたわけではないことは、一連の淡々とした演出を見て頂ければ分かるだろう(その淡々とした演出こそがむしろ泣けるという確信ももちろんあったが)。

表のふっと消える吊り灯籠。お気楽な様子の由乃が電話に出てハッとなる無音のカット。次のシーンはもう葬祭場という潔さ。この辺の演出はもう本当にありがとうございますとしか言いようがない。一人の人間の死を最高の敬意を以て描いてくれたと思う。

 

一つの土地に根を下ろすことの意味。

膨大なノートの束が雄弁に物語っている。癖のある字も教授らしくて実に良い。

 

そしてここで祭具の話に戻ってくるという「キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!!!! 」感。

さらにせっかく登場したデマンドバスもちゃっかり再利用。

 

「縁は作り出すものなんですね……ずっと先のことは分からないけど、しばらくここでやってみようと思います。ありがとうございました、教授……」

 

早苗、ホントに教授に出会えて良かったね。心からそう思えるエピソードだった。

 

ちなみに今回は本シリーズ初の特殊エンディング。私のホンはいつも尺オーバー気味で監督に迷惑を掛けているのだが、今回は特に削りようがなかったらしい。

おかげさまで代表作になりました。ありがとうございます。