前回のアイディアメモを元に打ち合わせ。

そこから一週間で直したものが以下に掲載するプロットである。怒られたら(以下略)

早苗のIT技能と高見沢のポジションを組み合わせることを思い付いたとき、「よっしゃー!」とガッツポーズしたくらい手応えがあった。

鈴原教授の最後を描くことも、この段階で既に腹は決まっていた。

かつて自治体から独居老人宅にタブレットが配布されたという設定にすることで、初期投資等の問題もクリアされた。

 

 

『サクラクエスト』第17&18話プロット(2016/09/29)

★#17Aパート
祭りの復活には三つの祭具が必要だと分かる。
「なんかRPGっぽいね。面白いじゃん」
 気楽に構えている早苗。しかし散逸した祭具は今どこにあるのか。「こういうことは『教授』に訊いた方がいいよ」と美濃のアドバイス。山間の過疎地域に住む人物らしい。

教授に会いに過疎地域へ行く由乃ら。
 教授と呼ばれているのは独居老人の鈴原廉之介。元教授だけあって知的な感じ。だが一筋縄ではいかない雰囲気もある。
「残念だが私の専攻は文化人類学であって民俗学ではない。ここへ移住してきたのも定年後、20年前のことだ。50年も前の祭りのことなど知らない」とにべもない返事。
「だが、剣鉾ならある」
「え?あるんですか?」

 鈴原宅の裏には古びた蔵がある。案内され入っていくと、無数のガラクタの中に確かに剣鉾があった。
「あっさり見つかっちゃった」
 剣鉾とはお祭り行列の先頭を飾るもので、矢印のような形状をした剣先だけでも長さ2メートルはある。のこぎりのように薄くふにゃふにゃと曲がる。剣の根元には扇状の巨大な金細工が飾られ、その中央部分に神額が取り付けられている。神額には通常、その剣鉾を用いる祭りの神社名が記されている。さらにこのパーツは長い棹と接続され、祭りの先頭を歩く者はそれを両手と腰で支え、バランスを取りつつ練り歩かねばならない。全長6メートルはあり、重さも30キロはあるだろう。
「この家の元の住人は健康上の理由から老人ホームに移っていった。それで私が家ごと買い受けたわけだ。剣鉾はその人が保管していたのだろう」
 ともあれ、これで祭具の一つは見つかった。さっさと回収しようとする由乃ら。
「待ちなさい。これが間野山祭りの祭具だとどう証明するのだ?」
「はい?」
 よく見ると神額は真ん中でぽっきりと割れており、「~神社」の部分しかない。
「証明って……」
 由乃らにしてみればそれが実際に使われていたかどうかはさほど問題ではなく、要はそれっぽく見えればいいわけだが、鈴原は「それでは『不可』だな」と譲らない。やはり、なかなか面倒な老人のようだ。

 真希はああいう高圧的な老人は父親を想起させるらしく、「私、苦手だわ」とこぼす。しかし早苗はまだまだ楽観的。
「要するにあの老人を納得させるのがミッションでしょ?クリアすればお宝ゲット、みたいな。ますますRPGっぽくなってきたわ」

 近くに点在する民家を訪ねれば、当時を知る人物もいるだろう。由乃らが向かうと、停車中のバスの前で高見沢が老人たちから何やら責められている。不採算のため、ここ一帯の路線バスは廃止が決定したのである。
「そんなこと一方的に言われてもねえ、ああそうですかってわけにはいかないんだよ私らは」
 不満をこぼす老人ら。自分で車を運転するには危ない高齢者もいるし、そもそも免許を持たない人もいる。バスは依然として過疎地域における重要な足なのだ。

「俺に言われても知るかってんだよ。会社が決めたことなんだから」
 休憩所でイライラとタバコを吹かす高見沢。どう頑張ったって廃れていくものはしょうがない。高見沢はかなり前からこの町の現状について醒めた考えを抱いている。
「自治体の補助金が入ってるったって、バス一台で年間1400万も経費掛かってるんだぜ?ジリ貧だよ」

 翌日、早苗は凛々子と鈴原宅を再訪。由乃らは付近の独居老人宅へ祭りのことなどを聞き取り調査に行っている。
 凛々子は千登勢から50年前の祭りの写真を借りてきていた。そこには確かにあの剣鉾らしきものが映っている。
「んー、確かに形は似ているが、これでは単位はあげられないな」
 教授っぽい言い回しの鈴原。本当は剣鉾のことなどどうでもいいのにわざともったいぶっているようで、早苗も次第に苛立ってくる。
「ところで早苗さん、君も東京出身なんだってね。『放熱山脈』で見た」
 鈴原はかつて東京の大学で教鞭を執っていたが、定年後に縁もゆかりもない間野山へ妻とともに移住してきたという。つまり早苗と同じIターンである。
 鈴原は路線バス廃止の話題を振り、「どうしたらいいと思う?」と早苗に問いかける。
「私もこういった問題にはかねてから興味がありまして……」
 人口減少はもはや歯止めが利かない。それならいっそ、過疎地に住む人々はもう少し寄り集まってコンパクトなコミュニティを再形成してはどうか、と提案する早苗。
「そうすれば少なくとも交通問題は改善されるかと」
「何故、住まいを移らねばならない?みんな定年まで真面目に働き、税金を納めてきたんだ。住みたいところに住むのは当然の権利だ」
「でもそれだと社会的コストが……」
「では質問だ。君が将来高齢者になり、孫の代からこう言われたとしよう。『おばあちゃん、何でまだ地球なんかに住んでるの?早く火星に移住しようよ』……さて、君はどうする?住み慣れた地球を離れられるか?」
 答えられない早苗。
「同じことだ。住みたいからそこに住んでいる。理屈じゃないんだ。ではもう一つ質問だ。君は何故、間野山を選んだ?」
「え……?」
「あの番組を観る限り、別にどこでも良かったんじゃないか?ただ東京が嫌になったというだけでね」
 ぐうの音も出ない早苗。自分がいかに浅い考えだったかを思い知る。
「いや、別にいいんだよ。私だってこの町に特別な思い入れがあるわけじゃない」

 一方、独居老人宅を訪問する由乃らは、それぞれの家庭にほぼ必ずタブレットが置いてあることに気付く。しかし殆ど使われておらず、ある老婆などはお盆代わりに使っていたりもした。
「何年か前に、自治体が過疎地域の家に配布したんだけどね。ケーブルテレビ回線でネットだって使えるのに、全然活用できてないんだ」
 と、しおり。行政の施策でありがちな仏作って魂入れずのパターンである。しかし早苗は、そこに解決の糸口があるのではと考える。
「そっか……もう下地は出来てるわけね……」

★#17Bパート
 独居老人を対象に、インターネット講習を開く早苗。何度説明しても分からない老人もいて大変だが、どうにか努力は結実していく。
「この町をIT大国にするのよ。情報が寸断された状態を過疎だというなら、バーチャルでコミュニティを作っちゃえばいいんだわ。とにかくお年寄りを孤独にしないこと!」
 アンジェリカの店で間野山SNS構想について盛り上がる早苗ら。
「そのうち車も自動運転の時代が来る。そう遠くない将来にね。交通弱者の問題もそれで片付くわ」
 カウンターで食事中だった高見沢、それを聞いてカチンと来たらしく、黙って店を出ていく。自動運転の時代が来れば高見沢のような人間は即、お払い箱だ。冗談じゃない。彼にもプライドはあるのだ。

 入院中だった丑松が退院する。早苗のバーチャルコミュニティ構想を聞き、「それなら適役がおるぞ!」と源爺のもとへ向かう。彼は元北陸きときとテレビの技術者だったのだ。
「ほう、面白そうだな。どうせ暇だし、一肌脱ぐか」
 こうして源爺の自宅をスタジオ代わりに、ネット上の地域番組「まのやまチャンネル」が開設される。それぞれの独居老人宅をネットで繋ぐ、参加自由の垂れ流し系番組である。ネットに習熟した老人らが趣味や特技を披露したり、チャンネル内のコーナーはどんどん増えていく。こうして過疎地域同士がネットを介して繋がるようになり、老人らの交流は目に見えて盛んになっていく。

 こうした繋がりは老人同士だけでなく、間野山全体へと波及しつつあった。ある時、野毛が高見沢に嬉しそうに報告する。
「60年代のジャズにめっちゃ詳しいじいさんがいてさ。まさか共通の趣味を持つ人が間野山にいたなんてなあ。俺しょっちゅう会いに行って一緒に飲んだりしてるんだ」
 他にも老人同士の合コンが開かれたり、注目されたくて奇抜なことをやらかす者も現れた。ワインに詳しいジジイは女子にモテる。元大工や元配管工の老人が自前のCMまで作り出した時には現役の職人らから苦情が来るほどだった。
「そこまで老人たちはネットを使いこなしてるのか……」
 現状を踏まえ、何やら考えを改めた様子の高見沢で。

 が、何事にも光と影はある。ある日、老人Aが老人Bに殴りかかる事件が起きた。
「コイツが俺のことバカにしやがって……!」
「何で俺だって分かンだよこの野郎!」
 ネットではいつの間にか匿名の掲示板が設置されており、日頃から折り合いの悪い近所の人間を中傷したりする投稿が目立ち始めたのである。
<小田島のとこの家庭菜園 キュウリ小さすぎわろ田>
「これ絶対てめえの仕業だろ!」
「俺だったら直接言うよ馬鹿野郎!」
 どんどん無法地帯化していく「まのやまチャンネル」。鈴原などは「歴史は繰り返すものだ」と皮肉っぽく事態を静観している。このままでは町は老人たちによってスラム化してしまう。どうする早苗……!?

★#18Aパート
 早苗はひとまず「ネット上の匿名禁止」という応急処置でしのぐ。
 老人らのネット習熟はまた別の副作用を生んだ。引き籠もり老人が増えてしまったのである。鈴原はそんな老人らをまとめ、とんでもないことを始める。
「路線バスを廃止するというのなら、我々は鎖国を宣言する。生活については自分たちで協力し合うから、外部は一切干渉しないでもらいたい」
 自分らの地域を勝手に立ち入り禁止にし、鎖国状態を作る鈴原。つくづく面倒な老人である。しかしそんな鈴原たちに理屈抜きで協力してしまう由乃。
「アンタどっちの味方なのよ!」
「いや、でも鈴原さんたちの気持ち、よく分かるし……」
 すっかり鈴原たちのコミュニティに取り込まれる由乃。必要な物資はネットで注文すれば殆どが手に入る。便利とまでは言えないものの、意外と生活できてしまうことに新鮮な驚きを感じる由乃。

 それでもやはり、病院だけは問題だった。毎日の通院もそうだが、もし万が一のことがあった場合、適切に動ける人間はいるのか。
「やっぱり交通手段は必要ですよね……」
 そこで立ち上がったのが、高見沢だった。彼の中では一つの構想があった。デマンドバス。従来のように決められた路線を時刻表通りに走るのではなく、利用者が利用したい時にネットを通じて予約をし、必要な時だけ運行する乗り合いシステムのことである。路線バスとタクシーの中間的存在。利用者にとっては好きな時間に格安で利用でき、運営会社も人件費や燃料費などを大幅に削減できる。
「とりあえず試運転の許可は会社からもらった。何事もものは試しだ、まずはやってみなきゃな」
 あんなに醒めきっていた高見沢がどうして……?
「俺にだってプライドはある。この腕一本で嫁と子ども食わせてんだ。いずれ自動運転が当たり前になっても、それまではせいぜいあがいてやるさ」
 このまま手をこまねいているよりは、リスクを取ってでもいち早く新事業に着手する方がアドバンテージを得られる。ビジネスの観点からも高見沢の行動は理に適っていた。早苗は高見沢と協力し、ネット上に簡易的な予約システムを作り、試運転を開始する。

 デマンドバスは老人らに好評だった。ドアトゥードアでバス停まで歩く必要がない。定員9名ほどの狭い車内だが、却って乗り合わせた乗客との会話が弾むというもの。料金もタクシーよりははるかに格安だ。高見沢もいつもより乗客とのコミュニケーションが取れて嬉しそうである。

 過疎対策に一役買うことができ、満足げな早苗のもとへ思いもよらぬ知らせが届く。
「え……教授が!?」
鈴原が昨夜亡くなったのだ。あんなに元気だったのに、何故……?

★#18Bパート
 脳溢血による突然死だった。が、まるでそれを予期していたかのように鈴原は身辺整理をきっちり済ませていた。自分の土地は自治体に寄付する。上物の取り壊し費用も予め用意していた。
 独り身だった鈴原だが、近所の仲間の厚意により葬儀が執り行われることになった。火葬場の煙突から立ち上る煙を眺めつつ、鈴原のことを思う早苗。鈴原と一番親しかった老人がやって来る。
「いやー、いい葬式だったね。あ、これ、生前に教授から預かっていたんだけど、君に渡すように言われてたんだ」
 老人から手渡されたのは、蔵の鍵だった。

 由乃らとともに鈴原宅の蔵を開ける早苗。そこには早苗宛てのメッセージがあった。
<蔵の中のものは自由に使って下さい。元々私のものではないからね。君の成績は優・良・可でいえば良かな。なかなか楽しかったよ、早苗さん>

 こんな形で祭具を譲り受けることになろうとは。早苗が蔵の中を見回すと、膨大な量の手書きノートがあった。
「これは……」
 鈴原が間野山に移住してから20年間、一日も欠かさず書き続けた研究成果だった。彼の専攻は文化人類学。この学問の主な研究はフィールドワークである。実際に調査対象となる土地へ赴き、何年、何十年というスパンでそこに生きる人々を観察し、直に触れ合い、統計的なデータを取り、その生活様式やものの考え方を理解しようとする。鈴原は退官後も文字通り研究を続けていたのだ。
「縁もゆかりもないなんて言ってたくせに……」
 鈴原なりに間野山は何かしら心惹かれる要素があったのだろう。その場所に根を下ろすことがどういうことか、教えられたような気がする早苗。
「私も間野山とは縁もゆかりもないけれど……しばらくここでやってみようと思います。ありがとうございました、教授」
 心の中で鈴原に感謝する早苗だった。



<了>
 

 

ほぼ完成品に近い状態。

ホン打ちメンバーの意見を採り入れ、ここからさらに肉付けがされていった。

早苗に関しては十分見せ場も成長もあるのでいいとして、問題はやはり由乃だった。主人公として国王としてどう動かせばいいか。

「教授のクーデターに巻き込まれて人質になったものの、心情的にそちらに寄り添ってしまう」

こうすることによって由乃も物語の中心に居続けることが出来た。何より彼女の性格からしていかにもな感じがとてもいい。

 

さて、次回は本編の解説を。