【建国祭編】
第12話「夜明けのギルド」(2017/06/21)
第13話「マリオネットの饗宴」(2017/06/28)

1クール目のラストを飾る、重要なエピソードを任せてもらった。

由乃らの町おこし活動の集大成、幸運にも恵まれ建国祭は間野山史上かつてない賑わいを見せるが……。

書いていて心が痛んだ。物語の折り返し地点でここまで苦い話にして視聴者から見放されるんじゃないかという不安もあった。しかし心を鬼にせねばならない。町おこしに本当に大切なものは何か、身を以て体験しなければ後半戦からの由乃らが次のステージへ上がれないからだ。
これは制作陣の総意であり覚悟である。

今回は話の流れやテーマが明確だったため、これまでのような表に出てこない部分での紆余曲折はさほどではなかった。ただ由乃編ということで彼女にどのようなドラマを設定するかといった部分には時間が掛かった。

さて、例によって最初期のプロットを掲載しよう。怒られたら削除する。


『サクラクエスト』12、13話プロット(2016/07/22)

<概要>
 強いて言えば由乃編。建国祭に向け奮闘する5人。
 が、ローカル局の介入によりイベントは望まぬ方向へ。

<ゲストキャラ>
雨宮幸也……地元ローカル局の若手ディレクター
久米……雨宮の上司(再登場)
プトレマイオス……人気バンド

<プロット>
#12
○Aパート
 チュパカブラ王国建国祭の時期がやって来た(※カブラ王国から数えて建国30周年とかになるといいのですが)。
 大そうめん博よりはるかに大規模のイベントであり、俄然張り切る由乃ら。
 そこへローカル局・北陸きときとテレビ(仮)の久米が部下を連れて訪れる。雨宮幸也という若手ディレクターである。久米は以前のぬるキャラ選手権での由乃の演説以来、密かに彼女らの活動に注目していた。雨宮はそのことを久米から聞き、今回ぜひとも取材をさせて欲しいという。
「実は僕、間野山出身なんです。この町を盛り上げるために協力させて下さい」
 きときとテレビには『情熱山脈』という局製作の人気番組がある。地元で頑張る人間を応援するドキュメンタリーだ。雨宮はこの枠に粘り強く企画書を出し続け、今回ようやく自分のやりたいテーマで取材することができるようになったという。
「ずばり、主役はあなた方5人です。若い女の子5人の町おこしというテーマで、建国祭までの日々を密着取材します」
 由乃らにとっても願ってもないことである。ローカルとはいえ、ゴールデンタイムの1時間番組で取り扱ってもらえるのだ。
「こちらこそ、ぜひお願いします。一緒に間野山を盛り上げていきましょう!」

 密着取材開始。由乃らをはじめ、関わる町民らのテンションも高い(※この辺りをコメディ風に楽しく見せたい)。丑松も何やら野望があるらしく、やたらとカメラに映りたがる。
 大イベントだけに、やるべきことは山ほどある。市との連携・交渉、警備会社や各種業者の選定、町民への周知等々。手分けしてこなしていく由乃ら(※別行動の間に他の4人をどう思っているかカメラの前で吐露したり)。
町民はチュパカブラ王国になど愛着はないが、毎年恒例ののど自慢大会は楽しみにしているようだ。由乃らも心得たもので、いつも以上に会場を大きくしたり町民の望みに応えていく。

○Bパート
 雨宮が突然報告をしてきた。
「皆さん、やりましたよ!プトレマイオスが建国祭のライブに出てくれることが決まりました!」
「プトレマイオス?」
 若者を中心にブレイク中のバンドである。雨宮が早稲田の学生時代に構築した人脈を駆使し、東京の音楽事務所と渡りを付けてきたのだった。
「普通こんな田舎のイベントになんか絶対出ませんよ!一気に全国からのお客さんが増えるのは確実です!」
「え、でもイベントの予算は決まってるのでそんなゲスト……」
「大丈夫、そっちも抜かりはありません」
 雨宮は同時に上司を説得し、建国祭の協賛をするよう話をまとめてきていた。
「これで表立って局としても建国祭をPRできるようになりました、一石二鳥ってやつです。早速ですが今日のニュースにも出てもらいますね。祭りの告知を兼ねて」

 雨宮のやり方に違和感を覚える由乃。ニュースでも町おこしの話題というより由乃らをアイドル扱いしようとする意図を感じる。いつかの園田監督とは逆で、下から来るような強引さがある。しかし間野山を良くしたいという熱意は紛れもないものだ。無下に断るわけにもいかない。
「え、でも由乃ちゃん、それってのど自慢大会をやめるってことだよ?」
「うん……」
 プトレマイオスなら確かに県外への訴求力は桁違いだろう。「客が増えるならその方がいいに決まっとる」と丑松も雨宮に賛同。

 建国祭前日。プトレマイオスの3人が前乗りしてくる。精一杯もてなす観光協会の面々。しかし特設ステージの手作り感満載の飾り付けを見て、「俺らの思ってたのと違う」と言い出す。
「ぶっちゃけ俺らもいま大事な時期なんで。あんまダサいイメージつけたくないんすよ」
 もともとのど自慢ステージだったのを急遽作り替えたのだから仕方ない。由乃らはこのピンチを切り抜けられるのか……?
(※目に見える急迫の危機で次回への引きとし、実は本当の危機にはまだ誰も気付いていないという構図)

#13
○Aパート
 結局、由乃ら5人徹夜で設営をやり直し、事なきを得る。くたくたながら建国祭スタート。プトレマイオスの3人も最高のパフォーマンスを見せ、来場客らは大盛り上がり。しかし熱狂しているのは若者ばかりで、高齢者は「何やらぎゃんぎゃん騒がしいのう」「三波春夫は来ないのか?」「のど自慢楽しみにしておったのに」等、不満げな反応。しかもプトレマイオスは盛り上げるつもりで間野山をおちょくるようなアドリブを入れたりしていた。

 気がつけば全国どこにでもあるようなイベントになってしまったが、間野山にこれだけ人が訪れたのはバブル期以来だということで丑松は大喜び。由乃らの奮闘を手放しに褒める。
 密着取材の雨宮も手応えを感じており、「これがテレビで流れたらさらに間野山に人が来ます。放送を楽しみにしていて下さい」と帰っていく。

○Bパート
 後日、建国祭の総括を行う由乃ら。収支報告書によればそれほど黒字になっていない。あれだけ人が来たのに、様々な面で余計な支出が掛かりすぎたせいだ。王国内もゴミだらけになっていて、来場客のマナーの悪さも問題となる。またあれ以来、どうも町民らがよそよそしい。由乃の違和感がマックスに達した頃、例の『情熱山脈』が放送される。
「え……何これ……?」
 由乃らは完全にアイドル扱いだった。明らかに恣意的な編集がされており、まるで由乃らが町民などそっちのけでとにかく盛り上がればいいと言っているように見える。雨宮としてはその方が人目を引きやすいと考えたのだろう。しかし結果的には由乃らの思いとはまるで違うところへ乗せられてしまった。同じくそれぞれの場所でテレビを観ている町民らも冷ややかな様子。
「私たち……大失敗しちゃったかも……」で次回へ続く。

※何を以て「失敗」とするのか、そしてそれを端的に画で表現するのは難しいのでこのような構成にしてみました。
※イベントを成功させるのは当然のこととして、他にも由乃らに何らかの負荷を掛けないとドラマ性が弱く、段取りっぽく見えてしまう恐れがあります。また5人とも同じ方向を向いていていいのかという問題も。
※せっかくなので由乃の母(第一話5稿では「八重」となっています)とのやり取りを次回に入れてみてはどうでしょう。局の公式サイトに『情熱山脈』のアーカイブがアップされていてそれを観た、とか。

<了>



細かいところは打ち合わせでかなりブラッシュアップされたと思う。商店会との会議シーンも当初は全くなかったし、雨宮もダメな奴である。何より由乃のドラマが弱い。

これまでは町おこしのネタについて議論する時間が多かったのだが、由乃が主人公であることの意味について改めて監督が強く意識するようになったのはこの辺りからだ。町おこしのディテールももちろん大事だが、何よりこれは由乃の物語である。これまでの話数で大臣らのキャラは掘り下げてきたが、肝心の由乃については十全とは言えない。そろそろ意識していかないとずるずる最終回を迎えてしまう恐れがある。今後誰のエピソードであるにせよ、由乃には毎回何らかの学びや成長を描いていきましょう、と。

 

それを踏まえ、本編の解説をしていこう。