第8話「妖精のレシピ」から。

冒頭、麦刈りからのスタート。ここまで重めの話が続いてきたのでコミカルに行きたいなと。由乃はまだいいとして真希はブルース・リーばりのトラックスーツ、早苗は防護服、凛々子は忍者。いや君らボケ過ぎだろ(笑)。

 

初登場となるしおりの姉・さゆり(CV:能登麻美子)。

澄み切った能登ボイスがぴったりで片側にまとめた髪もツボ。おまけに天然。しおりと声質が似ているのもいい。

 

四ノ宮家でみんな揃って食事。

元は入院中という設定だったおじいちゃんが一番モリモリ食べている。

ここでいま由乃らが取り組んでいるのはご当地グルメであるということ、しおりがリーダーとして適任なのに頑なに断る描写を入れている。

同時にカットバックで丑松がまた良からぬことを企んでいるシーンも。

これまでのエピソード同様、丑松は過去にご当地グルメにおいても大失敗をしている。かぶら漬けをサンドした間野山バーガーなんて誰が食うんだ。

 

コント仕立ての試食会。

「下がりなさい」「はい……」

せっかく国王・大臣の設定なのでこういうのもやってみたかった。

凛々子もギアが上がってきた。

しおりは「地元の食材を使わなきゃ意味がないよ」と主張するのだが、作った料理はいかんせん地味である。袋小路に入ってしまう5人。

 

ちなみに本企画に参加するにあたって、木下斉氏の地方創生に関する著書には当然目を通している。その中で「ゆるキャラとB級グルメは東京の代理店が潤うだけ、やるだけ無駄」といった指摘もあった。それを承知の上で敢えて扱うことにした。地元の歴史や風土を掘り下げる糸口としてこの題材は相応しいからである。

その意味でしおりの主張は正しい。だがインパクトがなきゃ外から人は呼べないとする由乃の主張も間違いではない。

 

その夜、さゆりは自室で荷造りをしている。

住み慣れた実家を離れ、いよいよ一人暮らしを始めるタイミングなのだ。初登場キャラには必ず何かしらの「状況」を設定する。それが物語の推進力になる。

緩衝材代わりのチラシに懐かしい顔を見るさゆり。同級生の熊野である。

 

さゆりの提案で一家揃って熊野のビストロを訪れる。

地産地消、地元の食材にこだわる料理にしおりは刺激を受け、さゆりは熊野と再会を果たす。しかしどこか様子がおかしい二人。

 

同じ頃、由乃らはC級グルメ大会の準備に精を出している。早苗のポスターデザインに修正を出す形で、さらっとその日付も見せている。

「観光客たくさん呼んで、商店会の人たちにも喜んでもらわなきゃ」

なんて健気な国王だろう。まさかあんな事態が待ち受けているとも知らず……。

 

一方の織部家。凛々子が怪しげな魔女料理を作っているところへ千登勢が帰宅。

微笑ましいシーンの中にさり気なく「毎年恒例、納涼会の準備さ」というワードを忍ばせている。

 

Bパート。

イワナ獲りに励む由乃ら。ここに出てくる熊野は明らかにサイズがおかしい(笑)が、山道を下るところの木漏れ日の描写なんかは素敵だ。

しおりは「天然系小悪魔」とか「むしろサタン」とか散々言われているが。

 

第4次試食会。

一度コントはやったので同じことをしても仕方ない。今度はしおりが4人に説教するパターンにしてみた。

なんか棒立ちで複数の人が一人に怒られている画が個人的にツボなのである。

それにしてもゲテモノ化してきた料理の数々。

トロピカル串焼き(南国か)、フローズン炒飯(ただの冷凍食品)、落ち武者饅頭(グロい)、全部一人で考えたんだが大変だった。こういうところで無駄に時間が掛かる(笑)。

 

父・貴之がしおりを散歩に連れ出すシーンは情景がとても美しい。散居村の真骨頂は夕暮れ時だと思う。

ここでしおりは自分の家の事情や地元の農業の実態について知ることとなる。

「しおり、いつまでも変わらない生活なんてないんだよ」

実家が自営業だったりする人は、貴之の一連の言葉には感じるものがあるのではないだろうか。私も似たようなことを父に言われた記憶がある。

 

さて、とうとう問題勃発。

よりによって商店会恒例の納涼会とC級グルメ大会の日付が丸被りしてしまったのだ。

いくら何でもそんなミスはないだろうという視聴者からの批判はあった。私もこの辺はもう少し補強が必要だったかなと反省している。だが組織のトップ同士が反目している場合、ディスコミュニケーションが積み重なってこういう信じられないような事案が発生する可能性もゼロではないと思っている。いずれにせよ他人事のような美濃と山田のコメントはいただけないが。

 

この辺は書いていて本当に辛かった。

商店会の人たちにも喜んでもらおうとしゃかりきになっていた由乃が、「あんたらのやってることなんざ所詮、自己満足だろ」と言われてしまうという。

だがそれくらい由乃を追い込まなければ、しおりという巨大な風車は動かないのである。

 

みんなで謝りに行くのを拒絶する丑松に対するしおり。

「……冗談、ですよね?」

もう上田麗奈さんお見事!としか言いようがない。目だけは笑っていない感じが声だけで分かるという。後にLINEスタンプにもなったくらいのインパクトあるシーンだ。

 

さて商店会との対峙。

丑松はよりによって新開発のチュパカブラ饅頭DXをお詫びの品として差し出す。

これが千登勢の火に油を注いだ。「この際だから言わせてもらうよ」から徐々にヒートアップしていく感じが大好きで、何度観てもここは泣いてしまう。かつてバンド仲間だった丑松に対して千登勢は複雑な思いがあるんだろうなあと。そう、千登勢は決して意地悪な権力者などではなく、言っていることは筋が通っているのだ。

 

由乃がイベントの取り止めを口にした瞬間、ついにしおりが自らの意思で立ち上がる。

「私に考える時間を下さい!必ず見つけますから!商店会の皆さんも、私たち観光協会も、いえ……間野山のみんなが笑顔になれるアイディアを!」

もはやうえしゃま劇場と言っても過言ではない。第6話の「はっ」と息を吸うブレスでなく今度は逆、息を吐きながら言葉の塊を押し出していく感じが素晴らしい。さらに「いえ」のところだけ力を抜いてメリハリを利かせるという匠の技まで。

 

ちなみに今回は増井監督が絵コンテを担当している。ギャグの切れ味がいいのはそのためか。あの人はいつもボソッと面白いことを言う。

 

 

続いて第9話「淑女の天秤」。

ようやく地元の特産、そうめんに辿り着いたしおりが打ち出したのは「大そうめん博」。

商店会の納涼会ごと取り込んでしまおうという試みだ。コンテスト形式にして地元の人間にも興味を持ってもらい、同時に物産展を開催することで外からの客もまとめて呼び込む。まさしく三方良しのイベントである。

 

未だに凹んでいる由乃を丑松はしっかり見抜いている。

「よそ者はよそ者らしく突き進めばいい」

久しぶりのドク登場。自動給湯ロボは私にとっての「あったらいいな」である。これくらいの発明品ならリアリティの範囲内じゃないかと。

 

熊野がフランス行きを決意したきっかけがフレンチトースト。

後になって横谷さんから思いがけぬ情報がもたらされた。これ実はフランス発祥じゃないらしいんです、と。

もう話組んじゃったしどうしようかと思ったが、「逆に熊野っぽくていいんじゃないですか?」という流れに。こうしてさゆりと熊野は似たものカップルとなったのである。

 

熊野の「僕は死にましぇん!」から、二人のすれ違いはますます謎めいていく。

私は当初、うるう日を利用したトリックにするつもりだったのだが、横谷さんから「僕、見抜いちゃいました」とドヤ顔で言われたので変更することに。まあここであまり凝ったことをしても仕方ない。

 

さてBパート。

由乃らはよそ者の視点で昆布に着目する。実は富山は昆布の消費量全国一。富山湾で採れるわけでもないのに何故?北海道からの貿易船によってもたらされたのだとガイドブックを見ながらドヤ顔の丑松。

これは私自身がよそ者の視点で気付いたことだ。ホン作りの前にPAワークスが現地でシナハン(シナリオハンティング)をさせてくれて、居酒屋に昆布焼酎などがあって珍しいなあと。

ちなみに昔の実写業界だとシナハンと称して温泉旅館で豪遊したりしていたらしいが、私の世代でそんな話は聞いたことがない。このご時世にちゃんと取材をさせてくれるPAワークスは何て素晴らしい会社だろう。

 

しおりが昆布とそうめんを組み合わせようと発想する一方、由乃は何やら悪い顔。ここでのあやサマー(七瀬彩夏)のわっるい芝居はとてもいい。

続いて毒島製作所での由乃とドクの怪しげなシーン。ここは完全に狙いで作ったのだが、分かっていてもドキッとしてしまう。

 

新メニューがなかなか浮かばず、苦悩するしおり。それ以前に客が来なかったらどうしようと怯えている。

「私は陰で支えるのが向いている」というのはつまり「リスクを負いたくない」「責任は取りたくない」というネガティブな気持ちの裏返しでもあり、生まれて初めて感じるプレッシャーだろう。

 

大そうめん博当日。

思いのほか盛況でホッとするしおり。

観光客も地元民もバランス良く集まったこのイベントこそ、実は後の建国祭よりも成功したと言えるだろう。初期の『美味しんぼ』で山岡士郎が白米と味噌汁と丸干しだけで資産家の京極氏を感激させたエピソードがあるが、つまりそういうことである。

 

しおりが苦心の末考え出したのが「よろこぶそうめん」。昆布をふんだんに使ったそうめん版油そばのようなものである。実際に私が妻に作ってもらったので味は保証できる。

ちなみにその写真をTwitterにアップしたら評判になり、実際に南砺市の中華屋さんでも新メニューとして提供されることに。こういうリアルタイムの反応があるのもアニメならではである。

 

「これが未来の郷土料理へと繋がっていくといいね」という熊野のセリフこそ桜池ファミリア同様、我々が込めた祈りである。今ある郷土料理にしても初めからそうだったわけではない。長い歴史の洗礼を受けて残ったものなのだ。

よころぶそうめんは優勝は逃したものの、市民からのウケはいい。ウチでもやってみようかしら、なんて言う老婆もいる。ここで見せるしおりの満面の笑みは、彼女が本当に実現したかったこと(地元の人に受け入れられること)への手応えに他ならない。

 

エピローグ、喫茶アンジェリカで高見沢が「例のやつちょうだい」と言い、表の看板には「よころぶそうめん始めました」と書かれている。この光景が来年も十年後も見られますように。

 

さて、悪い顔をしていた由乃はどうなったかというと、なんと水着でステージに登場。

「流されそうめん5DX」のお披露目である。

初期プロットから存在していたこれ、実は東宝の山内P(めちゃ偉いひと)の発案なのだ。そうめんを使った料理について議論していたある日、久しぶりにお見えになったと思ったら「……流されそうめん」と呟いて去っていかれた。

あ、何か知らないけど無茶やっていいんだ、と私は理解した。

 

「食べ物を粗末にするな」とドリフのようなお叱りも受けたが、スタッフが美味しく頂いたということで。