運賃を投入しても、ウンともスンとも言わないバスの支払機。
パニックに陥った私は、ひとまず無人の運転席側に避けた。
後続の乗客が次々と紙幣を投入し、着席していく。
ああ、私が払った金額もうやむやに……。


乗客らは相変わらず私にやいのやいの言ってくる。
それを聞いたサングラスの白人が、笑いながら通り過ぎていった。


「たった2ドルでダウンタウンへ行こうだって?ハッハー」


こういうニュアンスだけは伝わるものなのである。
だから結局、いくらなんだよ!


そこへようやく運転手が雑談を終えて乗り込んできた。
私は依然として立ち尽くしたまま。
さっきの「それでいいのよ」の黒人女性が、彼に何やら説明してくれているようだ。
すると運転手、ぶっきらぼうにこう言った。


「Get in.」(乗りな)


……はい?
いや、私、2ドルしか払ってないんですけど。


運転手は私を手で追い払うように「いいから乗りな」と繰り返した。
言われるまま、私は席に着いた。


走り出すバス。


釈然としない。看板には確かに直行便$15.00と書いてあった。
タクシーなら$40.00はかかるのだ、相場的にも妥当だろう。
なのに2ドル。
おまけしてくれたのか、面倒だからあしらわれたのか、さっぱり分からない。



今一つ座り心地が悪いのは、路面の荒さのせいだけではなかった。